海外の情報
目の症状・疾患
Eye Conditions
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版最終アクセス確認日:2024年12月
多くの米国人が視力に問題を抱えています。40歳以上の340万人以上が失明または視覚障害者です。しかし、いくつかの推計によれば、2100万人もの米国人が視力に問題を抱え、8000万人が潜在的に失明を引き起こす恐れのある眼疾患を患っているとされています。加齢黄斑変性症、白内障、糖尿病性網膜症、緑内障は、米国の高齢者における視覚障害や失明の主な原因です。目の症状・疾患に対しては、手術などの従来の治療法もありますが、予防や進行を遅らせるためにダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)に頼る人もいます。
科学的見解
加齢黄斑変性
加齢黄斑変性症(Age-Related Macular Degeneration :AMD)は、50歳以上の人の視力低下(失明)の主な原因となっています。この病気は、目の前の物体をはっきりと見るために必要な、鮮明な中心視力を提供する眼球の一部である黄斑が破壊されます。早期のAMDには治療法が存在しませんが、進行したAMDには従来の治療法があり、視力低下の進行を食い止めるのに役立つかもしれません。米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)が支援した、成人約4,800例を対象に、AMDの進行に対するダイエタリーサプリメント(の有用性を検証した「加齢性眼疾患研究(Age-Related Eye Disease Study:AREDS)」という大規模研究(2001年)と、このダイエタリーサプリメントの変更を検証した「Age-Related Eye Disease Study 2(AREDS2)」(2013年)が行われています。AREDS2では、50〜85歳の参加者4,000例以上を対象としました。
- AREDSでは、ビタミンC(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)、E(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)、β-カロテン、亜鉛(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)、銅を高用量に含むダイエタリーサプリメントが、AMDの進行を遅らせるのに役立つことが示されました。しかし、この研究が行われた時期に、他の研究によって、β-カロテンのサプリメントを摂取すると、タバコを吸う人の肺がんリスク(危険)が高くなることが示されました。
- AREDS2では、AMDが進行する恐れのある人を対象に、当初のAREDSのサプリメントの処方にいくつかの改良を加え、検証を行っています。参加者は、当初の処方およびさまざまな改良版を処方されるグループに無作為に割り当てられました。改良版は、β-カロテンの除外、亜鉛の減量、オメガ3脂肪酸(魚油)の追加、ルテインとゼアキサンチン(目に含まれるカロテノイドの2種)の追加などを含みます。現時点で喫煙している人は、肺がんのリスク(危険)が知られているため、β-カロテンを投与するグループには割り当てられませんでした、一部の非喫煙者と元喫煙者にはβ-カロテンが投与されました。
- オメガ3脂肪酸(魚油)を加えても、サプリメントの組み合わせによる有用性の改善は見られませんでした。
- サプリメントの組み合わせから亜鉛の量を減らしても、その有用性は低下しませんでした。
- β-カロテンを摂取した人は、摂取していない人と比較して肺がんを発症する可能性が高くなりました。肺がんの症例は、ほとんどが元喫煙者でした。ルテインとゼアキサンチンは、肺がんリスク(危険)を増加させませんでした。
- 10年間のフォローアップの結果、ルテインとゼアキサンチンは進行性AMDへの進行リスクを減少させるうえで、β-カロテンよりも有用であることが証明されました。
- 2015に報告された、参加者2,343を含む2件のランダム化比較試験のシステマティックレビューでは、AMDの人が最長5年間オメガ3脂肪酸を補給しても、進行期(重度)のAMDへの進行や中程度から重度の視力低下を進行させるリスク(危険)は減少しないことが明らかになりました。
- 米国、欧州、オーストラリアで実施した複数の研究では、食事パターンとAMDの関連が示されています。一般的に、地中海食や野菜・果物を多く含み、赤身の肉が少ない食事は、進行期(重度)のAMDの発症率の低下と関連があるとされています。食事パターンと早期AMDとの関連性は一貫していません。
白内障
白内障は、目の水晶体が濁り、視界がぼやけたり、変色したりする疾患です。白内障による視力低下が重篤になり、通常の生活に支障をきたすようになった場合、レンズを取り除き、人工レンズに置き換える手術が役立つ場合が多くあります。
- 2015年に報告された、男性11,267例を含む「セレニウム(セレン)とビタミンEによるがん予防効果試験(Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial:SELECT) における目のエンドポイント研究」のランダム化比較試験の結果、セレニウム(セレン)(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)および/またはビタミンEを長期的に毎日摂取することは、加齢性白内障に有益な効果をもたらさないことが示唆されました。
- 2014年にスウェーデンで報告された、女性30,600例を対象とした疫学研究では、抗酸化物質の摂取と白内障形成の潜在的な関連性を検証しました。この研究では、食事を通じて抗酸化物質を摂取することで、白内障形成のリスク(危険)を低下することができるかもしれないと結論付けています。
- しかし、2012年に報告された、約117,300例を対象とした9件の臨床試験のレビューでは、ビタミンC、E、β-カロテンといった抗酸化物質を摂取しても、白内障の予防や進行の抑制にはつながらないことが明らかになりました。
- AREDS2の結果では、ルテインとゼアキサンチンの摂取量が少ない参加者のサブグループには、ある程度の保護効果が見られたものの、いずれの改良型製剤も白内障手術への進展リスク(危険)を低下させることはできませんでした。
糖尿病性網膜症
糖尿病網膜症は、糖尿病の合併症として起こる目の疾患であり、網膜の血管が傷つきます。そのため、視界の歪みや視力の低下の原因となる可能性があります。
- 2011年に報告された文献レビューでは、糖尿病性網膜症に役立つとされるダイエタリーサプリメントはないとされています。
緑内障
緑内障は視神経を損傷するため、周辺視野(側方視野)から視力が低下(視野欠損)する可能性があります。緑内障は早期発見・早期治療が重要です。緑内障に対して、メガビタミン、特別な食事療法、鍼治療、リラクゼーション法、セラピューティック・タッチ(手当て療法の一種)などを用いることを支持するエビデンス(科学的根拠)はほとんどありません。
副作用とリスク(危険)
- 目の症状・疾患の治療には、眼科医の指示に従うことが大切です。証明されていないアプローチを従来の医療の代わりに使用しないでください。
- 特定の抗酸化物質と亜鉛を含むサプリメントは、AMDの一部の人にのみ推奨されています。例えば、早期のAMDの方にはお勧めできません。AMDに罹患している場合は、サプリメントを摂取することが望ましいかどうか、眼科専門医に相談してください。
- β-カロテン(AREDSには含まれるがAREDS2には含まれない)は、現在および過去の喫煙者、アスベストにさらされたことのある人の肺がんリスク(危険)を高めるかもしれません。
- ダイエタリーサプリメントは、正しく使用しなかったり、大量に使用したりすると健康上の問題を引き起こす可能性があり、中には服用中の薬と相互作用するかもしれないことを覚えておいてください。
目の健康に関するさらなる情報については、米国国立眼科研究所(National Eye Institute:NEI)ウェブサイト[英語サイト]をご覧ください。
消費者向け
医療関係者向け
さらなる情報
■ NCCIH 情報センター
米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完・統合医療に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。
米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレコム・リレー・サービス(Telecommunications relay service:TRS)7-1-1
ウェブサイト https://www.nccih.nih.gov [英語サイト]
E-mail:info@nccih.nih.gov(メール送信用リンク)
■ 科学を知ろう
NCCIHと米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)は、科学研究の基礎と用語を理解し、自分の健康について十分な情報を得た上で意思決定できるようにするためのツールを提供しています。科学を知ろうは、インタラクティブなモジュール、クイズ、ビデオなどのさまざまな教材や、消費者が健康情報を理解できるように設計された連邦政府のリソースから有益なコンテンツへのリンクを提供しています。
Explaining How Research Works(研究のしくみを知る)[英語サイト](NIH)
科学を知ろう:科学雑誌の論文を理解する方法
Understanding Clinical Studies(臨床試験を理解する) [英語サイト](NIH)
■ PubMed®
米国国立医学図書館(National Library of Medicine, PubMed®:NLM)のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、「補完・統合医療に関する情報をPubMed® で検索する方法」をご覧ください。
Yoga for Health—Systematic Reviews/Reviews/Meta-analyses(健康のためのヨガ-システマティックレビュー/レビュー/メタアナリシス)[英語サイト]
Yoga for Health—Randomized Controlled Trials(健康のためのヨガ-ランダム化比較試験)[英語サイト]
このサイトの情報は著作権で保護されておらず公開されています。複製も奨励されています。
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2025年6月19日
当該事業では、最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。