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ビタミンE
Vitamin E

- 写真に掲載している食材の成分表一覧
[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版最終アクセス確認日:2024年12月
ここではビタミンEの概要を読者にわかりやすく解説しています。詳細については、「医療関係者向け:ビタミンE」をご覧ください。
ビタミンEとは?その働きは?
ビタミンEは多くの食品に含まれる脂溶性の栄養素です。ビタミンEには酸化防止作用があり、体内でフリーラジカルによるダメージから細胞を守るのを助けます。フリーラジカルとは、摂取した食物が体内でエネルギーに変わる時に形成される化合物です。また、タバコの煙や大気汚染、太陽からの紫外線など、人は環境中でもフリーラジカルにさらされています。
免疫機能を高め、体内に侵入してくる細菌やウイルスを撃退するためにも、ビタミンEは必要です。また、血管を広げ、血管内で血液が凝固しないようにする働きもあります。さらに、細胞はビタミンEを利用して互いに作用し合い、多くの重要な機能を果たしています。
ビタミンEの必要摂取量は?
ビタミンEの必要摂取量は、年齢によって異なります。下表に1日の平均推奨摂取量を、ミリグラム(mg)で示します。
ライフステージ | 推奨摂取量 |
---|---|
生後0〜6カ月 | 4 mg |
7~12カ月の幼児 | 5 mg |
1~3歳の小児 | 6 mg |
4~8歳の小児 | 7 mg |
9~13歳の小児 | 11 mg |
14〜18歳の青年 | 15 mg |
成人 | 15 mg |
妊婦(10代も含む) | 15 mg |
授乳婦(10代も含む) | 19 mg |
ビタミンEはどんな食品から摂取できますか?
ビタミンEは、多くの食物品に自然に含まれ、また、一部の食物に添加されることもあります。以下のようなさまざまな食品を摂取することによって、ビタミンEの推奨量を摂取することができます:
- 小麦胚芽油、ひまわり油、紅花油などの植物油は、ビタミンEを最も多く含む油の一つです。コーン油や大豆油もビタミンEをあり程度含んでいます。
- ナッツ類(ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、そして特にアーモンド)や種子類(ひまわりの種など)も最良のビタミンE供給源です。
- ほうれん草やブロッコリーといった緑色野菜には、ある程度のビタミンEが含まれています。
- 食品会社は、一部の朝食用シリアル、フルーツジュース、マーガリン、スプレッドなどの食品にビタミンEを添加しています。ビタミンEが食品に添加されているか確認するには、その製品のラベル表示を確認してください。

市販されているビタミンEのダイエタリーサプリメントには、どのようなものがありますか?
ビタミンEのサプリメントには、さまざまな量と形態があります。ビタミンEのサプリメントを選ぶ際には主に次の2点を考慮しましょう:
- ビタミンEの含有量:1日1回飲むマルチビタミン・ミネラル(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)のサプリメントには、ビタミンEが約13.5mg含まれていますが、ビタミンEだけのサプリメントには、67mg以上含まれているのが一般的です。ビタミンEだけのサプリメントに含まれる量は、推奨される量よりはるかに多くなっています。一部の人は、多く摂るほど健康維持や病気になるリスク(危険)を減らす効果があると信じたり期待したりして大量摂取しています。
- ビタミンEの形態:ビタミンEという名称は、単一物質のように思われますが、実際には、α‐トコフェロールなど、食品に含まれる8つの関連化合物の名前です。それぞれの形態によって、体内で活性を示す程度が異なります。
天然由来のビタミンEは「d-α-トコフェロール」と食品やサプリメントの製品ラベル表示に記載されます。合成の(人工の)ビタミンEは「dl-α-トコフェロール」と記載されます。天然型の方がより強力で、ビタミンE 1mg=d-α-トコフェロール1mg(天然ビタミンE)=dl-α-トコフェロール2mg(合成ビタミンE)となります。
一部の食品やダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)のラベル表示には、ビタミンEがmgではなく国際単位(International Units:IU)で表示されたままになっています。天然型ビタミンEの1IUは、0.67mgに相当します。合成ビタミンEは1IUで0.45mgに相当します。
一部のビタミンEサプリメントは、γ‐トコフェロール、トコトリエノール、混合トコフェロールなど、α‐トコフェロール以外の形態のビタミンEが含まれているサプリメントもあります。研究者らは、ビタミンEをサプリメントとして供給する場合に、これらの型のほうがα‐トコフェロールよりも優れているかどうかについてはわかっていません。
ビタミンEは足りていますか?
多くの米国人の食生活では、ビタミンEは推奨量を満たしていません。しかし、健康体の場合、ビタミンEを十分に摂取していなくても、それをはっきりと示す徴候が現れることは稀です(ビタミンE欠乏症の徴候については次項をご覧ください)。
ビタミンEが不足するとどうなりますか?
健康な人にビタミンE欠乏症が発生することは非常にまれです。ビタミンE欠乏症の発症は、ほぼ例外なく、脂肪が適切に消化もしくは吸収されない疾患に関連しています。こうした疾患には、クローン病や嚢胞性線維症、あるいは無βリポタンパク血症やビタミンE欠損を伴う失調症(ataxia with vitamin E deficiency:AVED)といった稀な遺伝的疾患が挙げられます。消化器官によるビタミンE吸収には脂肪が必要です。
ビタミンE欠乏症は神経や筋肉に損傷を与える可能性があります。そうした損傷は、腕や脚の感覚喪失、身体運動制御の喪失、筋力低下、視覚障害を引き起こします。免疫機能の低下もビタミンE欠乏症の徴候のひとつです。

ビタミンEが健康に及ぼす影響にはどのようなものがありますか?
ビタミンEが健康にどのような影響を与えるのかを解明するための研究が行われています。ここでは、研究結果の例をいくつか紹介しています。
心疾患
一部の研究では、サプリメントによるビタミンEの摂取量が多いほど、冠動脈性心疾患の発症の可能性が低くなるとされています。しかし、信頼性の高い研究では、そうしたベネフィット(有益性)はないことが明らかになっています。これら研究では、対象者はビタミンE群もしくはプラセボ(ビタミンEやその他いかなる活性成分を含まない偽薬)群に無作為に割付けられ、どちらの投与を受けているのか知らされません。ビタミンEのサプリメントは、心疾患を予防したり、その重症度を下げたり、この疾患による死亡のリスクに影響を与えることはないようです。心疾患のリスク(危険)が高くない若い健康な人が、ビタミンEを大量に摂取することで心臓を保護できるかどうかは、研究者らにもわかっていません。
がん
ほとんどの研究では、ビタミンEが、がんの予防に関与せず、場合によっては有害になるかもしれないことを示唆する結果が出ています。たとえば、ビタミンEの高用量投与が大腸がんや乳がんリスクを低下させることは一貫してありませんでした。ある大規模な研究では、ビタミンEのサプリメント(180 mg/日[400 IU])を数年間摂取すると、男性における前立腺がんの発症リスク(危険)が高まることが明らかになりました。中年期の男女を7年以上にわたり追跡調査した2件の研究では、ビタミンE(平均201~268/日[300~400 IU])の補充給により予防されたがんは、種類を問わずありませんでした。しかし、ある1件の研究では、10年以上にわたるビタミンEのサプリメント摂取と膀胱がんによる死亡リスク(危険)の低下に関連性があるという結果を得ました。
ビタミンEのサプリメントおよびその他の抗酸化剤は、化学療法や放射線療法と相互作用するかもしれません。こうした療法を受けている人は、ビタミンEやその他の抗酸化剤サプリメントを摂取する前に(特に高用量で摂取する場合は)担当医またはがん専門医に相談しましょう。
目の疾患
高齢者の中心視野が欠損する加齢黄斑変性(Age-related macular degeneration:AMD)や白内障は、高齢者における視力低下の原因として最も一般的なものの一つです。ビタミンEがこれらの症状の予防に役立つ可能性については、研究結果に一貫性がありません。進行したAMDを発症するリスク(危険)が高いAMD患者において、高用量のビタミンEと他の抗酸化剤と亜鉛および銅を混合したサプリメントが、視力低下速度を遅らせる有望な有益性を示しました。
精神機能
複数の研究では、ビタミンEのサプリメントが、高齢者の精神的な注意力や活動性を維持し、精神機能の低下やアルツハイマー病の予防や進行を遅らせるかもしれないと検証されています。これまでのところ、ビタミンEのサプリメントの摂取が、健康な人や軽度の精神機能に問題のある人の脳の健康維持に役立つ可能性があるというエビデンス(科学的根拠)はほとんどありません。
ビタミンEが害を及ぼす可能性はないのですか?
食品や飲料に自然に含まれているビタミンEは有害ではないので、制限する必要はありません。
サプリメントの形態でビタミンEを高用量摂取することは、出血(切り傷や怪我を負った際、血液凝固能が低下するため)や、脳内の重篤な出血(出血性脳卒中と呼ばれる)のリスク(危険)を増大させるかもしれません。このようなリスク(危険)から、大人の場合、天然または合成のビタミンEのサプリメントの上限は1,000mg/日としています。これは、天然ビタミンEのサプリメントでは1,500IU/日、合成ビタミンEのサプリメントでは1,100IU/日に相当します。子供の上限値は大人よりも低く設定されています。これらの上限値を下回るビタミンEサプリメントを摂取していても、有害となるかもしれないことを示唆する研究もあります。例えば、ある研究では、400 IU(180mg)の合成ビタミンEを数年にわたって毎日摂取した男性で前立腺がんのリスク(危険)が増加しました。
ビタミンEは、医薬品あるいは他のダイエタリーサプリメントと相互作用しますか?
ビタミンEのダイエタリーサプリメントは、服用している薬と相互作用したり、その働きを阻害したりする可能性があります。ここでは、いくつかの例をご紹介します。
あなたが使用しているすべてのダイエタリーサプリメントおよび医薬品について、今かかっている医療機関※、医師、薬剤師、その他の医療関係者に話してください。利用しているダイエタリーサプリメントが、処方薬または市販薬と相互作用あるいは阻害を起こす可能性はないのか、あるいはそれらの医薬品が、体内での栄養素の吸収、利用、分解の過程において阻害する可能性がないのかについて教えてくれるでしょう。
ビタミンEと健康的な食生活
米国連邦政府の「米国の食事指針(Dietary Guidelines for Americans)」によれば、「栄養の多くを食品や飲料から摂取するべきである」と指摘されています。食品には、健康によいとされるビタミン、ミネラル、食物繊維やその他の成分が含まれています。場合によって、栄養強化食品やダイエタリーサプリメントは、他の方法では1つまたは複数の栄養素の必要量を満たすことができない場合(例えば、妊娠などの特定のライフステージ)に有用です。健康的な食生活の構築についての詳細は、「米国の食事指針(Dietary Guidelines for Americans)」[英語サイト]と米国農務省の「私の食事(MyPlate)」[英語サイト]をご覧ください。
ビタミンEに関する詳しい情報を得たい時は?
- ビタミンEに関する一般的な情報:
- 医療関係者向け:ビタミンE
- Vitamin E(ビタミンE)[英語サイト](MedlinePlus®)
- ビタミンE含有食品についての詳細な情報:
- 米国農務省(The U.S. Department of Agriculture:USDA)のFoodData Central[英語サイト]
- Nutrient List for vitamin E (listed by food or by vitamin E content)(特定の食品のビタミンE含有量(食品別[英語サイト]/ビタミンE含有量順[英語サイト]))(USDA)
- ダイエタリーサプリメント選択に関するアドバイス:
- 健康的な食事パターンに関する情報:
(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)
更新日:2025年6月19日
監訳:大野智、的場千佳(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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