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海外の情報

更年期の症状
Menopausal Symptoms

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

更年期の症状の詳細
最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2017年5月

要点は?

更年期の症状に対する補完療法の有効性についてわかっていることは?

  • 植物エストロゲン、ハーブなどの天然物が、更年期の症状を緩和するとは明確には示されていません。
  • 催眠療法マインドフルネス瞑想の研究はまだ初期段階ですが、有望な結果が出ている研究もあります。
  • ホットフラッシュ(ほてり)の緩和に対し、鍼治療が擬似的鍼治療よりも効果的であるかどうかは明らかにされていません。
  • ヨガはホットフラッシュを緩和すると明らかにされていませんが、更年期障害に関連した一部の症状には有用である可能性があります。
  • カスタム混合された(調合された)バイオアイデンティカルホルモン(生体内にあるホルモンと化学的に同一な構造のホルモン)は通常のホルモン療法よりも有効であるという科学的根拠(エビデンス)に裏付けられたものではありません。

更年期の症状に対する補完療法の安全性についてわかっていることは?

  • 天然物は副作用や医薬品との相互作用がある可能性があり、長期的な安全性についてはほとんどわかっていません。
  • 鍼治療、催眠療法、瞑想、ヨガなどの心身療法は、一般的に安全性に優れています。
  • カスタム混合されたバイオアイデンティカルホルモンは、他の形態のホルモン療法よりも安全性については明らかにされておらず、その内容はバッチごとに異なる場合があります。

更年期障害についての基礎知識

更年期障害とは、女性の月経が永久に止まる時期のことです。通常、平均年齢51歳で自然に起こりますが、手術や特定の医薬品の使用により、それより早く起こることもあります。更年期(閉経周辺期または閉経移行期と呼ばれる時期)になると、ホットフラッシュや寝汗、眠れないなどの症状が出てくる人もいます。

更年期の症状に対する従来の治療法

  • エストロゲン単独、またはエストロゲンと黄体ホルモンを使用するホルモン療法は、更年期のホットフラッシュに最も効果的な治療法です。しかし、ホルモン療法を行うことで、乳がんや血栓などの重篤な医学的問題のリスクが高まる可能性があります。したがって、もし使用するのであれば、症状を抑えることができる最小限の量と最短の期間で使用すべきです。特定の病状(乳がん、肝臓病、血栓の既往歴など)がある女性は、ホルモン療法を使用すべきではありません。
  • 更年期の症状には、ホルモン剤以外の薬剤を使用することもあります。2013年、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)は、ホットフラッシュに対する非ホルモン治療薬と更年期に伴う膣症状に対する治療薬を承認しました。

さらなる情報は、米国国立加齢研究所のウェブサイトの更年期に関するページ(英語サイト)をご覧ください。

科学的観点からみた更年期の症状に対する補完療法

天然物

更年期の症状には多くの天然物が研究されてきました。しかし、いずれも明確に有用性は認められていません。天然物の長期的な安全性についての情報はほとんどなく、中には有害な副作用や、薬物との相互作用があるものもあります。以下のセクションでは、更年期の症状のために研究されている複数の天然物について詳しく説明しています。

植物エストロゲン

  • 植物エストロゲンは、女性ホルモンであるエストロゲンと似た化学構造を持つ植物由来の物質です。大豆レッドクローバーに含まれるイソフラボンは、植物エストロゲンの一例です。亜麻仁は、別の植物エストロゲン源です。
  • 大豆やレッドクローバーのイソフラボンに更年期の症状を緩和する効果があるかどうかを検証した研究では、一貫性のない結果が得られました。亜麻仁製品の研究では、ホットフラッシュを抑える効果はプラセボ(不活性物質)よりも低いことがわかりました。
  • 植物エストロゲンは短期的には安全なようですが、長期的な安全性は確立されていません。植物性エストロゲンのサプリメントは、ホルモンであるエストロゲンと同じような効果を持つ可能性があるため、エストロゲンを摂取すべきではない女性には安全でない可能性があります。

大豆(英語サイト)レッド クローバー(英語サイト)および亜麻仁(英語サイト)についてのさらなる情報は、NCCIH のウェブサイトを参照してください。[eJIMサイト内日本語訳:大豆レッドクローバー亜麻仁]

ブラックコホシュ

  • ブラックコホシュは北アメリカ原産のハーブです。植物の根や根茎(地下茎)はサプリメントに利用されています。
  • 更年期の症状に対するブラックコホシュの効果を検証した研究では、一貫性のない結果が得られました。2012年の研究レビューでは、更年期の症状への使用を支持する十分なエビデンスがないと結論づけられています。
  • ブラックコホシュは一般的に、副作用があるとしても軽度のものしかありません。しかし、市販のブラックコホシュ製品を摂取している人では、まれに肝障害を起こしたケースが報告されており、その中には非常に重篤なものもあります。ブラックコホシュが肝障害の原因になったかどうかは明らかにされていません。とはいえ、肝臓に障害がある人は、ブラックコホシュ製品を摂取する前に医療スタッフに相談してください。ブラックコホシュを摂取中に腹痛、尿の色が濃い、黄疸などの肝障害の症状が出た人は、使用を中止し、医療スタッフに相談してください。

ブラックコホシュ(英語サイト)についてのさらなる情報は、NCCIHのウェブサイトを参照してください。[eJIMサイト内日本語訳]

DHEA

  • デヒドロエピアンドロステロン(Dehydroepiandrosterone:DHEA)は、体内で自然に作られる物質で、テストステロンとエストロゲンというホルモンに変換されます。DHEAの産生量は年齢を重ねるごとに減少していきますが、加齢や更年期の症状に影響するかどうかなど、その意義ははっきりしていません。
  • DHEAが更年期の症状の治療に有用であるかどうかは明らかにされていません。
  • DHEAのサプリメントを摂取した場合の長期的な安全性は不明です。一部のエビデンスでは、これらのサプリメントを短期的に使用しても、肝障害などの有害な影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。

ドンクアイ

  • 中国伝統医学において、中薬(中医学の薬草療法)のドンクアイは、更年期を含む女性の健康問題にしばしば使われています。しかし、更年期の症状に対するドンクアイの研究はほとんど行われていないため、その効果についての結論は得られていません。
  • ドンクアイは、抗凝固剤(血液希釈剤)のワルファリン(Coumadin)と相互作用する可能性があります。

ビタミンE

  • 少数の研究で、ビタミンEのサプリメントが更年期の症状に有用である可能性が示唆されています。しかし、研究報告数はごくわずかで、効果も小さいものです。例えば、ある研究では、ビタミンEを摂取している女性は、ホットフラッシュが平均で1日につき1回減少したという結果が出ています。
  • サプリメントに含まれる高用量のビタミンEは、出血(脳内出血による脳卒中などを含む)のリスクを高め、ワルファリン(Coumadin)などの抗凝固薬(血液希釈剤)と相互作用する可能性があります。

その他の天然物

  • 他にも、更年期の症状のため研究されている天然物としては、月見草油高麗人参カバ、メラトニン、ワイルドヤムなどがあります。しかし、更年期の症状に対する研究はほとんど行われていないため、効果についての結論は得られていません。カバのサプリメントは、重度の肝疾患のリスクとの関連性が指摘されています。

各種ハーブ製品についてのさらなる情報(英語サイト)は、NCCIHのウェブサイトを参照してください。

心身療法

更年期の症状に対するほとんどの心身療法については、ごくわずかな研究しか行われていません。しかし、現時点で入手できる限定的なエビデンスから、これらの療法の中には、症状を緩和したり、不快感を軽減したりするのに有用である可能性が示唆されています。

鍼治療

  • 鍼治療とは、施術者が身体の特定部位を刺激する治療で、多くの場合、皮膚に細い鍼を刺入することにより行います。
  • 鍼治療と無治療を比較した研究では、鍼治療はホットフラッシュの頻度や重症度を低下させましたしかし、2016年にオーストラリアで行われた研究を含む、鍼治療と擬似的鍼治療を比較した研究では、2つの治療の効果に違いは見られませんでした。鍼治療は、ホルモン療法よりもホットフラッシュの頻度を減らす効果が低いようです。
  • 鍼治療は、経験豊富な施術者が滅菌した鍼を使用して行う場合は、一般的に安全と考えられています。鍼治療が不適切に行われると、潜在的に重篤な副作用を引き起こす可能性があります。

鍼治療についての詳しい情報(英語サイト)は、NCCIHのファクトシートをご覧ください。[eJIMサイト内日本語訳]

催眠療法

  • 催眠療法とは、健康関連の目的で催眠術を使用することです。催眠術では、人の注意が一点に集まり、集中している状態になります。この催眠状態では、人は口頭でのメッセージ(提案)に対する反応性が高まります。
  • 国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)が助成した研究では、催眠療法により、ホットフラッシュが頻繁に出る更年期女性でのホットフラッシュの頻度が減少しました。この研究に参加した女性たちは、ホットフラッシュが生活に支障をきたさず、よく眠れたとも言っています。
  • 催眠術は、訓練を受けたライセンスを持った医療スタッフによって行われた場合、一般的に安全です。副作用はまれですが、催眠術はある種の心理的問題を悪化させる可能性があります。

催眠療法についてのさらなる情報(英語サイト)は、NCCIHのウェブサイトを参照してください。[eJIMサイト内日本語訳]

マインドフルネス瞑想

  • マインドフルネス瞑想とは、その瞬間その瞬間での体験に完全に集中する瞑想の一種です。
  • NCCIHが助成している研究では、マインドフルネス瞑想トレーニングにより、更年期女性のホットフラッシュの煩わしさが減少し、不安、知覚されたストレス、自己報告された睡眠の質、生活の質が改善につながりました。しかし、ホットフラッシュの強さは変わりませんでした。
  • 瞑想は健康的な人には一般的に安全であるとされています。ただし、ある慢性の身体的または精神的な健康問題のある人の症状を悪化させる可能性があるという報告があります。もし、あなたに進行中の健康問題がある場合、黙想を始める前にかかりつけの医療スタッフと話してください。

瞑想についてのさらなる情報(英語サイト)は、 NCCIH のウェブサイトを参照してください。[eJIMサイト内日本語訳]

ヨガ

  • ヨガは古代インド哲学に歴史的起源を持つ心身療法です。ヨガのさまざまなスタイルは、一般的に身体的なポーズや動き、呼吸法、瞑想やリラクゼーションを組み合わせたものです。
  • 5件の研究の評価では、ヨガは更年期に関連した症状の短期的な軽減をもたらことはできるが、ホットフラッシュは減少しないと結論付けています。
  • 全体的に、ヨガを実践している人は副作用が少ないと言われています。しかし、怪我(その中には深刻なものもあります)が報告されています。健康状態が悪い人は、ヨガのポーズを変更したり、避けたりする必要があるかもしれません。

ヨガについてのさらなる情報(英語サイト)は、NCCIHのウェブサイトを参照してください。[eJIMサイト内日本語訳]

他の補完療法

バイオアイデンティカルホルモン(生体同一性ホルモン)

  • バイオアイデンティカルホルモンとは、植物由来のホルモンで、人間の体内で作られるホルモンと化学的に類似・同一のホルモンです。更年期の症状の治療には、2種類のバイオアイデンティカルホルモン製剤が使用されています。(1)他のタイプのホルモン療法と同じFDAの承認プロセスを経ているもの、および(2)調剤薬局が患者のために個別に調合するカスタム混合製剤です。このファクトシートでは、カスタム混合製剤のみを説明しています。
  • カスタム混合されたバイオアイデンティカルホルモン製剤は、従来のホルモン療法よりも効果的で安全だと主張されていますが、この考えを支持するエビデンスは不足しています。カスタムミックスされたバイオアイデンティカルホルモン製剤はその安全性についてあまり知られていないため、実際には通常の治療よりもリスクが高い可能性があります。また、規制機関が調製を監視していないため、その中身はバッチごとに異なる場合があります。

更年期の症状を治療するための臨床実践ガイドライン

複数の専門機関が、医療スタッフ向けに、更年期の症状を治療する方法に関するガイドラインを公表しています。ガイドラインでは、特定の補完療法について述べられています。

  • 北米更年期学会の2015年の意見書では、催眠療法を勧告していますが、それを支持するエビデンスは限定的なことを認め、条件付きでマインドフルネスに基づく療法を推奨し、ホットフラッシュを管理するための鍼治療、ヨガ、いかなる天然物も勧告していません。
  • 米国産科・婦人科学会(American College of Obstetricians and Gynecologists)のガイドラインによると、通常のホルモン療法は、カスタム混合された生体同一性ホルモンよりも好ましいとされており、植物エストロゲンやハーブサプリメントがホットフラッシュの治療に対する有用性は認められていません。
  • 米国臨床内分泌学会のガイドラインでは、カスタム混合されたバイオアイデンティカルホルモンの使用に反対し、副作用や薬物との相互作用の可能性があるため、サプリメントの使用には注意が必要であると勧告しています。また、ガイドラインでは、植物エストロゲンの効果には一貫性がなく、血栓、心血管系疾患、乳がん、子宮がん、卵巣がんなどの個人的または強い家族歴のある女性は、大豆ベースの治療薬を使用しないよう注意を促しています。
  • 複数の専門学会による調査特別委員会が公表したガイドラインでは、DHEAの日常的な使用に反対しています。

NCCIHによる研究助成

NCCIHが助成している研究者は、以下のような更年期に関連したさまざまなトピックを研究しています。

  • ホットフラッシュに対する鍼治療の効果
  • 更年期の症状のある女性の睡眠改善に催眠療法が有効かどうか
  • 植物エストロゲンの分子および細胞レベルでの作用

さらに考慮しなければならないこと

  • 多くのサプリメントは天然のものを使用していますが、「天然」とは必ずしも「安全」という意味ではないことを覚えておいてください。また、メーカーが「標準化された」(または「検証された」、「認証された」)という言葉を使用しているからといって、必ずしも製品の品質や一貫性を保証するものではありません。さらなる情報は、NCCIHのサプリメントに関するリソース(英語サイト)を参照してください。
  • あなたが行っている補完・統合医療についてかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。健康管理のためにあなたがどんなことをしているのか、すべて話しましょう。それによって連携のとれた安全な治療が受けられるでしょう。

消費者向け情報

医療関係者向け情報

関連するファクトシート

さらなる情報

■ NCCIH 情報センター

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完・統合医療に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。

米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレタイプライター(TTY、聴覚障害者や難聴の方用):1-866-464-3615
ウェブサイト:https://nccih.nih.gov/(英語サイト)
E-mail:info@nccih.nih.gov

■ PubMed®

米国国立医学図書館(National Library of Medicine, PubMed®:NLM)のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、How To Find Information About Complementary Health Approaches on PubMed(英語サイト)をご覧ください。

ウェブサイト:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/(英語サイト)

■ MedlinePlus

健康に関する質問に答えるのに役立つリソースを提供するために、MedlinePlus(米国国立医学図書館のサービス)では、国立衛生研究所をはじめ、他の政府機関や健康関連組織からの信頼できる情報をまとめています。

ウェブサイト:https://www.medlineplus.gov/(英語サイト)

■ 国立老化研究所(National Institute on Aging:NIA)

NIAはNIHの研究所で、老化のプロセス、加齢に伴う疾患、高齢者の特別な問題やニーズに関する質の高い研究を支援し、実施することに重点を置いています。NIAの出版物には、米国国立老化研究所のホルモンと更年期障害に関するヒントが含まれています。

ウェブサイト:https://www.nia.nih.gov/(英語サイト)

■ 国立女性の健康情報センター(National Women's Health Information Center :NWHIC)

NWHICは、米国保健社会福祉省(Health and Human Services:HHS)の女性の健康局のサービスであり、女性の健康に関する研究、サービス、および公的および医療専門家の教育を促進するための情報を提供します。NWHICは、すべてのHHS機関と 女性の健康に関わるオフィス。

ウェブサイト:https://www.womenshealth.gov(英語サイト)

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謝辞

NCCIHは、この出版物の2016年の更新に貢献した次の人に感謝します:Lanay Mudd, Ph.D., and David Shurtleff, Ph.D., NCCIH

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたが今かかっている医療機関の医療従事者の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについてあらゆる意思決定をする際、今かかっている医療機関に相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。

更新日:2025年3月10日

監訳:大野智(島根大学)

更年期の症状に対する補完療法:概要
最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版最終アクセス確認日:2025年10月

更年期の症状に対する補完療法に関する研究やシステマティックレビューが数多く報告されています。更年期の症状に対する心身療法の有益性に関するエビデンス(科学的根拠)は限られていますが、有望なものもいくつかあります。研究者らは、中薬ハーブやその他のダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け)などの天然製品が役立つというエビデンスをほとんど見つけていません。大豆レッドクローバー亜麻仁などの植物性エストロゲンの長期的な安全性は確立されていません。

本号ダイジェストでは、植物性エストロゲン、ブラックコホシュ催眠療法鍼治療、およびヨガなど、更年期の症状によく用いられる補完療法に関する現時点の研究結果を紹介しています。

科学的見解:

各種補完療法と現時点での研究の要約

大豆

大豆イソフラボンのサプリメントまたは大豆プロテインは、更年期のホットフラッシュ(ほてり)の頻度と重症度を軽減するのに役立つかもしれませんが、その有用性は小さいかもしれません。
更年期の症状に対する大豆の研究についての詳細はこちら

ブラックコホシュ(Black Cohosh)

研究によると、特定のブラックコホシュ抽出物(エキス)や、ブラックコホシュを含む一部の複合製品が、更年期の症状をいくらか軽減するかもしれないことが示唆されています。ほとんどの研究は、レミフェミン(Remifemin)という単一の抽出物(エキス)について行われています。他のブラックコホシュ製品に関する研究結果は一貫していません。2015年に公表されたガイドラインでは、ブラックコホシュが更年期の症状にベネフィット(有益性)をもたらすという一貫したエビデンスは不足していると示されています。しかし、2017年に報告された研究レビューでは、ヨーロッパで治療薬として承認されているブラックコホシュ抽出物(エキス)は、更年期の症状を軽減するようだと示唆されています。
更年期の症状に対するブラックコホシュの研究についての詳細はこちら

レッドクローバー

レッドクローバーが、ホットフラッシュ(ほてり)などの更年期の症状や、血中のコレステロールおよびその他の脂質レベルに与える影響に関する研究は、一貫性のない結果となっています。
更年期の症状に対するレッドクローバーの研究についての詳細はこちら

亜麻仁(Flaxseed)

亜麻仁が更年期の症状に役立つかどうかについては、相反する研究結果があります。
更年期の症状に対する亜麻仁の研究についての詳細はこちら

ヨガ

ヨガが更年期の症状を軽減するかもしれないとするエビデンスはありますが、その有用性は他の運動による介入と同程度です。
更年期の症状に対するヨガの研究についての詳細はこちら

催眠療法

催眠療法が、ホットフラッシュ(ほてり)など特定の更年期の症状の改善に役立つかもしれないことを示唆するエビデンスがあります。北米閉経学会(North American Menopause Society)による2015年のポジションペーパー(公式見解書)は、ホットフラッシュ(ほてり)の管理に催眠療法を推奨しましたが、好ましいエビデンスが限られていることも認めました。
更年期の症状に対する催眠療法の研究についての詳細はこちら

鍼治療

鍼治療が更年期症状に有益かどうかについては、研究結果に一貫性がありません。
更年期の症状に対する鍼治療の研究についての詳細はこちら

診療ガイドライン

科学文献

患者のための情報

NCCIH Clinical Digestは、米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)、米国保健福祉省(Department of Health and Human Services:DHHS)によるサービスです。毎月発行される電子ニュースレターであるNCCIH Clinical Digestは、科学文献の検索、NCCIHが資金提供した研究の要約、患者向けファクトシートなどを含め、補完療法に関するエビデンスに基づいた情報を提供しています。

NCCIHは、厳格なエビデンスに基づき、補完療法の製品やその実践の探求、補完療法研究者らの育成、そして一般の人々や専門家への信頼できる情報の発信に専念しています。追加情報については、NCCIH 情報センター(NCCIH’s Clearinghouse)にフリーダイヤル(米国電話:1-888-644-6226)でお電話いただくか、NCCIHのウェブサイト(nccih.nih.gov)をご覧ください。NCCIHは、米国の医学研究の中心的な拠点であるNIHに属する27の研究所およびセンターのうちの一つです。

著作権

本コンテンツはパブリックドメインにあり、著作権マーク(©)が付されている場合を除き、転載が可能です。米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health)を明記してください。すべての著作権のある資料は、それぞれの所有者に帰属し、許可なく転載することはできません。

更新日:2026年1月28日

監訳:時信亜希子(京都大学)、大野茜(国立国府台医療センター)、大野智(島根大学)

更年期の症状に対する補完療法:科学的根拠
最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版最終アクセス確認日:2025年10月
診療ガイドライン、科学文献、患者のための情報:

大豆(Soy)

大豆イソフラボンのサプリメントまたは大豆プロテインは、更年期のホットフラッシュ(ほてり)の頻度と重症度を軽減するのに役立つかもしれませんが、その有用性は小さいかもしれません。

研究でわかったことは?
  • 2016年に報告された、女性6,653例が参加した62件の研究を対象とするシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは、大豆イソフラボンなど特定の植物エストロゲン(phytoestrogen)のサプリメント摂取が、ホットフラッシュ(ほてり)と膣乾燥の頻度のわずかな減少と関連しているものの、寝汗の有意な減少は見られないことが分かりました。しかし、レビューに含まれた研究の多くは質が低いものでした。
  • 2018年に報告されたシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは、大豆は更年期の女性の性機能に有意な影響を与えないことが分かりました。
安全性
  • 副作用に関する情報は限られていますが、大豆抽出物(エキス)は短期間の摂取であれば概ね安全であると考えられています。しかしながら、(フィトエストロゲンを含む)大豆抽出物(エキス)を長期的に使用すると、子宮内膜が厚くなることと関連づけられています。
  • 現在のエビデンス(科学的根拠)は、乳がんを経験した、または乳がんのリスク(危険)がある女性が、大豆食品を食べることは安全であることを示しています。しかし、大豆イソフラボンのサプリメントがこれらの女性にとって安全かどうかは不明です。

ブラックコホシュ(Black Cohosh)

研究によると、特定のブラックコホシュ抽出物(エキス)や、ブラックコホシュを含む一部の複合製品が、更年期の症状をいくらか軽減するかもしれないことが示唆されています。ほとんどの研究は、レミフェミン(Remifemin)という単一の抽出物(エキス)について行われています。他のブラックコホシュ製品に関する研究結果は一貫していません。2015年に公表されたガイドラインでは、ブラックコホシュが更年期の症状にベネフィット(有益性)をもたらすという一貫したエビデンスは不足していると示されています。しかし、2017年に報告された研究レビューでは、ヨーロッパで治療薬として承認されているブラックコホシュ抽出物(エキス)は、更年期の症状を軽減する可能性があることが示唆されています。

研究でわかったことは?
  • 2016年に報告されたレビューによると、ブラックコホシュがプラセボよりも更年期症状の患者にベネフィット(有益性)があるという、質の高い一貫したエビデンスはありません。
  • 2017年に報告された、更年期の症状を持つ合計8,326例の女性が参加した47件のランダム化比較試験を対象とするシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは、ブラックコホシュは血管運動神経症状の軽減においてプラセボよりも有用でしたが、経皮エストラジオールとプロゲストーゲンよりは有意に優れているわけではないことが示されました。
安全性
  • 臨床試験では、ブラックコホシュを12カ月間摂取しても、深刻な有害作用はありませんでした。
  • ブラックコホシュは、胃のむかつき、けいれん、頭痛、発疹、重い感じ、膣点状出血や膣出血、体重増加などの軽度の副作用を引き起こす可能性があります。
  • 一部の市販されているブラックコホシュ製品には、誤ったハーブが含まれていたり、ラベルに記載されていない他のハーブとの混合物が含まれていることが判明しています。
  • また、市販のブラックコホシュ製品を摂取した人に、肝障害の事例(中には極めて重篤なものも含む)が報告されています。これらの問題はまれであり、ブラックコホシュが原因であるかどうかは不明確です。
  • ブラックコホシュと薬との間の相互作用のリスク(危険)は小さいと考えられています。しかし、米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)が一部支援した予備的研究では、ブラックコホシュが血中コレステロールレベルを下げるために使用されるスタチン系薬剤に影響を与えるかもしれないことが示唆されています。
  • がんのようなホルモン感受性の症状・疾患がある女性にとって、ブラックコホシュが安全かどうかは明らかになっていません。

レッドクローバー

レッドクローバーが、ホットフラッシュ(ほてり)などの更年期の症状や、血中のコレステロールおよびその他の脂質レベルに与える影響に関する研究は、一貫性のない結果となっています。

研究でわかったことは?
  • 2016年に報告されたシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは、レッドクローバーが膣の乾燥および膣萎縮を有意に改善することが分かりました。しかし、心理状態、性的な問題、睡眠障害に対する治療的な有効性は小さいという結果が示されました。このレビューでは、レッドクローバーの摂取は、特に(1日5回以上の)ひどいホットフラッシュ(ほてり)の女性において、ホットフラッシュ(ほてり)の頻度を減少させるかもしれないと結論づけました。
  • 2017年に実施された、並行群間、二重盲検、ランダム化比較試験では、40歳~65歳の閉経移行期の女性62例を対象とし、1日に5回以上のホットフラッシュ(ほてり)と卵胞刺激ホルモン値が35 IU/L以上という条件で、レッドクローバー抽出物(エキス)とプロバイオティクスを組み合わせたものが、プラセボと比較して血管運動神経症状(すなわち、ホットフラッシュ[ほてり]や寝汗)に及ぼす影響が検証されました。この研究の結果は、中程度の用量のレッドクローバー抽出物(エキス)が、生理学的および自己報告による血管運動神経症状の軽減において、プラセボよりも有用で優れていることを示唆しています。
  • 2018年に報告されたシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは、レッドクローバーは更年期女性の性機能に有意な影響を与えないことが判明しました。
安全性
  • レッドクローバー抽出物(エキス)は、臨床研究において最長3年間使用されており、明らかな安全性が示されています。
  • しかし、同じく植物エストロゲンを含むレッドクローバーが、ホルモン感受性組織に有害作用を及ぼすのではないかという懸念が一部にあります。

亜麻仁

亜麻仁が更年期の症状に役立つかどうかについては、相反する研究結果があります。

研究でわかったことは?
  • 2018年に報告されたシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは、亜麻仁は更年期女性の性機能に有意な影響を示しませんでした。
  • 2012年に報告された閉経後の女性90例を対象に行われたランダム化比較試験では、6カ月間の治療後、対応のあるt検定を用いて治療の開始時と終了時を比較した場合、亜麻仁が更年期症状の軽減に有用であることが判明しました。しかし、分散分析を行い、亜麻仁による治療をプラセボ(偽薬)と比較したところ、有意な差は見られませんでした。
  • 2012年に報告された閉経後の女性188例を対象に行われたランダム化比較試験では、亜麻仁またはプラセボによる6週間の治療後、報告された(ほてり)の軽減に関して両グループ間に有意な差は見られませんでした。
安全性
  • 生または未熟な亜麻仁は、潜在的な毒性物質を含むかもしれないため、摂取しないでください。
  • 亜麻仁および亜麻仁油のサプリメントは、限定された量であれば概ね忍容性が高い(安全に使用できる)ようです。報告されている副作用はわずかです。
  • 亜麻仁は、他の食物繊維サプリメントと同様に、便秘を悪化させたり、まれに腸閉塞を引き起こしたりする可能性があるため、十分な水と一緒に摂取する必要があります。亜麻仁と亜麻仁油の両方とも、下痢を引き起こす可能性があります。

ヨガ

ヨガが更年期の症状を軽減するかもしれないとするエビデンスはありますが、その有用性は他の運動による介入と同程度です。

研究でわかったことは?
  • 2018年に報告された、参加者1,306例を含む13件のランダム化比較試験のメタアナリシスおよびシステマティックレビューでは、無治療と比較した場合、ヨガは心理的、身体的、血管運動神経系、および泌尿生殖器系の症状を含む更年期の症状全体を軽減することが分かりました。しかし、運動対照群と比較した場合は、血管運動神経症状に対する有用性のみが認められました。
  • 2010年に報告された21件の論文を対象としたレビューでは、更年期の症状に対する心身療法が評価されました。研究者らは、ヨガ、太極拳、および瞑想に基づいたプログラムが、ホットフラッシュ(ほてり)の頻度や強度、睡眠や気分の乱れ、ストレス、筋肉や関節の痛みといった一般的な更年期の症状の軽減に役立つかもしれないことを明らかにしました。
安全性
  • 全体として、臨床試験のデータは、熟練した指導者の指導の下、これらの研究で教えられ実践されたヨガは、軽度の副作用の発生率が低いことを示唆しています。ほとんどの身体活動プログラムと同様に、実践者が軽度の、一時的な不快感を覚えることは珍しくありません。
  • しかし、ヨガによる怪我は、中には深刻なものもあり、一般紙でも報道されています。
  • 健康上の問題を持つ人は、副作用を防ぐために、特定のヨガのポーズを修正したり避けたりできるよう、経験豊富な指導者のもとで行う必要があります。

催眠療法

催眠が、ホットフラッシュ(ほてり)など特定の更年期の症状の改善に役立つかもしれないことを示唆するエビデンスがあります。北米閉経学会(North American Menopause Society)による2015年のポジションペーパー(公式見解書)は、ホットフラッシュ(ほてり)の管理に催眠療法を推奨しましたが、好ましいエビデンスが限られていることも認めました。

研究でわかったことは?
  • 2013年に報告された、閉経後の女性187例を対象に行われたランダム化比較試験では、臨床催眠療法が、自己報告および生理学的に測定されたホットフラッシュ(ほてり)を有意に軽減することが判明しました。臨床催眠療法が作用する仕組みは不明であるものの、この同じ研究で催眠療法を実践した女性たちは、対照群よりも有意に高いレベルの満足度を示しました。また、2008年に報告されたランダム化比較試験では、催眠療法が乳がん経験者の自覚的なホットフラッシュ(ほてり)を軽減するようで、気分の改善や睡眠の質の向上といった追加的なベネフィット(有益性)をもたらすかもしれないことが示されました。
安全性
  • 催眠療法の訓練を受けた医療専門家が行う場合、催眠は安全であると見なされています。自己催眠もほとんどの人にとって安全であるようです。自己催眠が原因で負傷したという報告はありません。
  • 瞑想は、健康な人にとっては安全であると考えられています。特定の精神的な問題を抱える人において、瞑想が症状を引き起こしたり悪化させたりする可能性があるというまれな報告がありますが、この問題は十分に研究されていません。

鍼治療

鍼治療が更年期の症状に有益かどうかについては、研究結果に一貫性がありません。

研究でわかったことは?
  • 2017年に報告された、乳がん患者844例を含む13件のランダム化比較試験のメタアナリシスおよびシステマティックレビューでは、鍼治療が更年期の症状を有意に軽減しましたが、ホットフラッシュ(ほてり)に対しては作用が認められなかったことが分かりました。
  • 2016年に報告された45歳~60歳の閉経移行期および閉経後の女性209例を対象に実施された、実用的(pragmatic)ランダム化比較試験では、一連の鍼治療が、鍼治療を行わなかった場合と比較して、血管運動神経症状といくつかのネガティブな生活の質の指標が軽減したことが判明しました。さらに、その臨床的有用性は介入終了後少なくとも6カ月間持続しました。統計学的に有意な臨床的改善は鍼治療を3回行った後に観察され、最大の臨床的有用性は治療回数が中央値で8回に達した後に出現しました。
  • 2018年に報告された更年期関連の症状を持つ合計360例の女性を対象に行われたランダム化比較試験では、8週間の電気鍼治療を行っても更年期の症状は軽減されないようでしたが、参加者の生活の質は改善したようでした。
  • 2013年に報告された、合計1,155例の女性が参加した16件のランダム化比較試験のコクラン・システマティックレビューでは、偽鍼治療と比較した場合、ホットフラッシュ(ほてり)に対する有用性に違いがあるというエビデンスは得られませんでした。鍼治療を無治療と比較した場合には、鍼治療にベネフィット(有益性)があるように見えましたが、ホルモン療法と比較すると、鍼治療は有用性が低いようでした。
安全性
  • 毎年何百万もの人々が治療を受け、非常に多くの鍼が使用されていることを鑑みると、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)に報告された鍼治療の使用による合併症は比較的少ないと考えられます。それでもなお、鍼の不十分な滅菌や不適切な治療の実施に起因する合併症が発生した事例があります。
  • 鍼治療が適切に行われなかった場合、感染症や臓器穿孔など、深刻な有害作用を引き起こす可能性があります。

参考文献

  • Avis NE, Coeytaux RR, Isom S, et al. Acupuncture in Menopause (AIM) study: a pragmatic, randomized controlled trial. Menopause. 2016;23(6):626-637.
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  • Dodin S, Blanchet C, Marc I, et al. Acupuncture for menopausal hot flushes. Cochrane Database Syst Rev. 2013;(7):CD007410.
  • Elkins G, Marcus J, Stearns V, et al. Randomized trial of a hypnosis intervention for treatment of hot flashes among breast cancer survivors. J Clin Oncol. 2008;26(31):5022-5026.
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  • Ghazanfarpour M, Sadeghi R, Latifnejad Roudsari R, et al. Red clover for treatment of hot flashes and menopausal symptoms: a systematic review and meta-analysis. J Obstet Gynaecol. 2016;36(3):301-311.
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  • Stuenkel CA, Davis SR, Gompel A, et al. Treatment of symptoms of the menopause: an Endocrine Society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2015;100(11):3975-4011
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  • The North American Menopause Society. Nonhormonal management of menopause-associated vasomotor symptoms: 2015 position statement of The North American Menopause Society. Menopause. 2015;22(11):1155-1172.

NCCIH Clinical Digestは、米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)、米国保健福祉省(Department of Health and Human Services:DHHS)によるサービスです。毎月発行される電子ニュースレターであるNCCIH Clinical Digestは、科学文献の検索、NCCIHが資金提供した研究の要約、患者向けファクトシートなどを含め、補完療法に関するエビデンスに基づいた情報を提供しています。

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著作権

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更新日:2026年1月28日

監訳:時信亜希子(京都大学)、大野茜(国立国府台医療センター)、大野智(島根大学)

高齢者に対する心身療法:概要
最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2019年8月

多くの高齢者は、「ウェルビーイング(well-being)」のための健康的な自己啓発アプローチの反映として、多くの場合、補完・統合医療に目を向けます。サプリメントとして販売されることが多い天然物は、安全上の懸念やその使用を裏付ける科学的根拠(エビデンス)がないにもかかわらず、さまざまな理由で多くの高齢者に頻繁に使用されています。サプリメントに含まれる植物性由来の物質や従来からある物質は安全と見なすことができるという認識が一般に広まっていますが、これらの製品には薬理学的に活性のある化合物が含まれていることがあり、それに関連する危険性があります。

ヨガ太極拳、気功などのリラクゼーション法や瞑想的なエクササイズを含む心身療法は、フィットネスやリラクゼーションのために、また健康上のベネフィット(有益性)として認識されているために、高齢のアメリカ人に広く利用されています。多くのシステマティックレビューは、症状管理、特に痛みに対する心身療法の潜在的な利点を指摘しています。

高齢者の数は世界中で増加しています。高齢者のボランティアによる研究が増えており、一部の現存するデータが利用可能です。しかし、エビデンスの基盤を増やすために、さまざまな症状と長期のフォローアップを伴う臨床試験が必要です。

患者のための情報

監訳:大野智、富塚啓貴(島根大学)

高齢者に対する心身療法:科学的根拠
最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版改訂年月(翻訳時):2019年8月

変形性関節症

2012年の米国リウマチ学会が手・股・膝関節の変形性関節症(Osteoarthritis:OA)に対する薬物療法および非薬物療法の勧告を公表しました。

そのガイドラインでは、変形性膝関節症の管理に手技療法および温熱療法、自己管理プログラム、歩行補助器具などの非薬物的方法と一緒におこなうことで太極拳を条件付きで勧告しています。

鍼治療は、中等度~重度の慢性膝痛の患者で人工膝関節全置換治療の対象であるが、その治療を受けようとしない、または受けることができない患者にも条件付きで勧告しています。

研究でわかったことは?

  • 症状のある膝関節症の204人を対象とした2016年のランダム化比較試験(英語サイト)では、太極拳は、標準的な理学療法を受けた参加者と同等の利益的な効果が認められました。2016年のシステマティックレビューおよびメタアナリシス(英語サイト)では、計1,260人を対象とした18件のランダム化比較試験を評価し、太極拳が変形性関節症の慢性疼痛の緩和に肯定的なエビデンスを示していることが明らかになりました。2013年のメタアナリシス(英語サイト)では、348人を対象とした7件のランダム化比較試験を評価し、12週間の太極拳は関節炎の症状改善および身体機能改善に利益があることが得られました。
  • 米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)が助成した2009年のメタアナリシスおよびシステマティックレビュー(英語サイト)では、慢性腰痛、OA、頭痛に対する鍼治療を評価し、OAの人の鍼治療が標準ケア群または待機リスト対照群よりも、概ね優れているようにみえましたが、助言を受け運動を行う群と比較しても追加的な利益はない可能性があることがわかりました。2010年のシステマティックレビュー(英語サイト)では、3,498人の患者を対象とした末梢のOAに対する鍼治療の効果を調査し、偽鍼(シャム鍼)治療と比較して、鍼治療は変形性関節症の痛みを短期間統計的有意に改善したことが認められたものの、利益はわずかで臨床的な意義はありませんでした。一方、鍼治療は、待機リスト対照と比較して、末梢関節のOA患者に対し、統計学的有意で臨床的に意義のある利益を示しました。

安全性

  • 太極拳は安全な実践法と考えられます。太極拳を始めた際に、筋骨格の痛みの合併症が起こる可能性がありますが、続けていくうちに改善することが分かっています。
  • 鍼治療に関連する合併症はほとんどありませんが、軽度のアザまたは出血などの有害作用が起こる可能性があり、滅菌されていない鍼、または経験のない施術者の未熟な手技により感染症が起こる可能性があります。

睡眠障害

現在の米国睡眠医学会の診療ガイドラインでは、慢性原発性および二次性不眠症の高齢者を含む年齢を問わない成人に、刺激制御法またはリラクゼーション法、または不眠症に対する認知行動療法(cognitive behavioral therapy for insomnia:CBT-I)などの心理的および行動的介入を勧告しています。

研究でわかったことは?

  • 米国睡眠医学会が公表した2008年の診療ガイドライン(英語サイト)では、慢性原発性および二次性不眠症に心理的および行動的介入を勧告しています。そのガイドラインでは、以下のように述べています。「治療初期の対処法として、刺激制御療法またはリラクゼーション法など少なくとも1つの行動的介入、または認知療法、刺激制御法、またはリラクゼーション法の有無を問わない睡眠制限療法の併用、もしくは不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)を含めるべきである。」
  • 慢性不眠症の75歳以上の成人60人を対象とした2015年のランダム化比較試験(英語サイト)の結果では、マインドフルネス・ストレス軽減法が慢性不眠症の有効な治療法であることが示唆されています。
  • 2014年のランダム化比較試験(英語サイト)では、慢性不眠症および原発性不眠症の成人123人を対象とし、認知行動療法、太極拳、睡眠セミナー教育対照との有効性を比較されました。その研究では、臨床的不眠症の寛解において認知行動療法が、太極拳および睡眠セミナー教育よりも優れていることが認められ、太極拳群および睡眠セミナー教育群よりも睡眠の質、睡眠パラメータ、倦怠感、抑うつ症状をより改善したことが示されました。睡眠セミナー教育対照群と比較して、太極拳は睡眠の質、疲労、うつ症状を改善と関連していましたが、不眠症の寛解とは関連していませんでした。
  • 2011年のシステマティックレビュー(英語サイト)では、不眠症に対する8つの補完療法を対象とした20件の研究を評価し、慢性不眠症に対して太極拳がエビデンスによる支持されていることが明らかになりました。

安全性

  • 不眠症に対するリラクゼーション法および認知行動療法は、安全だと考えられます。

更年期の症状

総じて、研究ではヨガ、太極拳、瞑想をベースとしたプログラムなどの心身療法の中には、更年期によくみられる症状に対して何らかの効果がある可能性が示唆されています。

研究でわかったことは?

  • 2019年のシステマティックレビューおよびメタアナリシス(英語サイト)では、計1,016人の女性を対象とした12件のランダム化比較試験を評価し、認知行動療法、マインドフルネスに基づく療法、行動療法などの心理的介入は、ホットフラッシュ(ほてり)を短期~中期間軽減し、他の更年期の症状を短期間軽減したことが明らかになりました。
  • 21件の論文を評価した2010年のレビュー(英語サイト)では、更年期の症状に対する心身療法を評価しています。研究者らは、ヨガ、太極拳、瞑想に基づくプログラムは、更年期の症状によくみられるホットフラッシュ、睡眠障害、気分障害、ストレス、筋肉痛や関節痛の頻度および程度を軽減するのに役立つ可能性があることを明らかにしました。
  • 2013年のコクランレビュー(英語サイト)では、計1155人の女性を対象とした16件のランダム化比較試験を評価し、鍼治療は偽鍼(シャム鍼)治療と比較して、ホットフラッシュに対する効果に差異があるエビデンスは認められませんでした。しかしながら、鍼治療は、無治療と比較した場合、効果があると考えられました。鍼治療は、ホルモン療法よりも低い効果でした。一部の研究は、質の低いエビデンスで、偽鍼治療対照群が欠落しているため、レビューアらは鍼治療が更年期の血管運動症状の管理に効果があるかどうかを判断するエビデンスは不十分であると結論付けました。

安全性

  • 瞑想は、健康な人にとって安全だと言えます。瞑想が特定の精神的な問題がある人の間では、症状を引き起こしたり悪化させたりする可能性の報告がまれにありますが、この問題についての研究はあまりなされていません。身体に制限がある人は、動きを伴う特定の瞑想に参加できない可能性があります。精神的または身体的な症状のある人は、瞑想を実践する前に医療スタッフと話し合いを行い、瞑想指導者に自分の症状について知らせておくべきです。
  • 全般に臨床試験データは、このような研究の中で行われているヨガが、熟練の講師の指導下で実践されており、軽度の副作用の割合が低いことを示唆しています。しかし、大衆紙でヨガによる傷害(重篤な場合もある)が報道されています。健康に問題がある人は、副作用を予防するために、ヨガのポーズを修正(変更)または回避する助言ができる経験のある講師と一緒に行うとよいでしょう。
  • 太極拳は安全な実践法と考えられます。太極拳を始めた際に、筋骨格の痛みの合併症が起こる可能性がありますが、続けていくうちに改善することが分かっています。
  • 鍼治療に関連する合併症はほとんどありませんが、軽度のアザまたは出血などの有害作用が起こる可能性があり、滅菌されていない鍼、または経験のない施術者の未熟な手技により感染症が起こる可能性があります。

帯状疱疹

ワクチン接種後の水痘帯状疱疹ウイルスに対する細胞性免疫において太極拳の効果を調査した研究は数件しかありませんが、それらの研究結果では有益性を示しているものもあります。神経痛および帯状疱疹後神経痛の期間に対し、鍼治療、吸い玉(カッピング)、神経療法、ビタミンC(アスコルビン酸)静脈注射などの他の介入の有効性を調査する研究がなされていますが、どの研究も小規模です。

研究でわかったことは?

  • 2007年のランダム化比較試験(英語サイト)では、100人を超える健康な高齢者を対象とし、16週間の太極拳プログラムが、同じワクチンを接種し太極拳の代わりに健康教育プログラムを受けた参加者と比較して、ワクチン接種後の水痘帯状疱疹ウイルスに対する細胞媒性免疫が向上したことが示されました。
  • 2017年のシステマティックレビューおよびメタアナリシス(英語サイト)の知見では、計945人を対象とした9件のランダム化比較試験を評価し、帯状疱疹に対する鍼灸治療が帯状疱疹の痛みの程度を緩和する利益の可能性を示唆しましたが、全体的に質の高い研究による十分なエビデンスはありませんでした。

安全性

  • 太極拳は安全な実践法と考えられます。太極拳を始めた際に、筋骨格の痛みの合併症が起こる可能性がありますが、続けていくうちに改善することが分かっています。
  • 鍼治療に関連する合併症はほとんどありませんが、軽度のアザまたは出血などの有害作用が起こる可能性があり、滅菌されていない鍼、または経験のない施術者の未熟な手技により感染症が起こる可能性があります。

バランス不良・転倒のリスク

太極拳が高齢者の転倒リスクを軽減する可能性を示したエビデンスがあります。太極拳が、特に問題のない高齢者および軽度~中等度のパーキンソン病または脳卒中の人のバランスおよび安定性を改善する可能性についても、いくつかのエビデンスがあります。

研究でわかったことは?

  • 2019年のコクランレビュー(英語サイト)では、60歳以上の地域在住高齢者23,407人を対象とした108件のランダム化比較試験では、運動プログラムが地域在住高齢者における転倒率および転倒経験者数を減少したことが認められました。レビューはまた太極拳が転倒率を19%減少する可能性があり(確実性の低いエビデンス)、転倒経験者数を20%減少する可能性(確実性の高いエビデンス)があることを示しました。
  • 10件の研究を評価した2017年のメタアナリシス(英語サイト)では、太極拳がリスクのある成人および高齢者の短期間(12か月未満)の転倒率および負傷に至る転倒を、それぞれおよそ43%、50%減少することが認められました。
  • 2014年のコクランレビュー(英語サイト)では、2,878人の高齢者を対象とした、地域在住高齢者の転倒への恐怖を軽減するための太極拳を含む運動介入の効果を評価した30件の研究を評価しました。レビューアらは、運動介入が介入直後の転倒への恐怖を軽減させるという質の低いエビデンスがあり、またこれらの介入が介入後も転倒への恐怖を減少するかどうかを決定するエビデンスは十分ではない、と結論付けました。そのレビューではまた、副次的アウトカムとして運動介入が参加者の転倒数を減少したかどうかを調査しましたが、本解析が対象とした研究ではこの副次的アウトカムについてほんの一部しか評価していなかったため、不十分と考えられます。

安全性

  • 太極拳は安全な実践法と考えられます。太極拳を始めた際に、筋骨格の痛みの合併症が起こる可能性がありますが、続けていくうちに改善することが分かっています。

認知機能低下

太極拳、ヨガなどの心身療法は、認知機能低下のない高齢者の認知機能の軽微な強化を示す可能性を示唆したエビデンスがいくつかあります。

研究でわかったことは?

  • 2018年のシステマティックレビューおよびメタアナリシス(英語サイト)では、計2,539人の高齢者を対象とした19件のランダム化比較試験を評価し、対照群と比較して、心身療法(太極拳、ヨガなど)は認知能力、全般の認知機能、実行機能、学習および記憶力、言語に有意な効果を示したことが明らかとなりました。これらの療法すべては、心身運動(例えばストレッチおよび腹式呼吸)に関連する動作と呼吸法が使われています。しかし、決定的な結論を導くには、より多くの質の高い研究が必要です。
  • しかし、別の2018年のシステマティックレビュー(英語サイト)では、16件のランダム化比較試験を評価し、認知機能改善に対する太極拳の有効性に関して結論を導くにはエビデンスが不十分であることが示されました。

安全性

  • 太極拳は安全な実践法と考えられます。太極拳を始めた際に、筋骨格の痛みの合併症が起こる可能性がありますが、続けていくうちに改善することが分かっています。

参考文献

NCCIHクリニカルダイジェストは、国立補完統合衛生センター、NIH、DHHSのサービスです。NCCIHクリニカルダイジェストは、月刊の電子ニュースレターで、科学文献検索、NCCIHが出資する試験の要約、患者のためのファクトシートなど、補完療法に関するエビデンスに基づいた情報を提供します。

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監訳:大野智、富塚啓貴(島根大学)

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翻訳公開日:2021年3月12日
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