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海外の情報

パーキンソン病
Parkinson’s Disease

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

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英語版最終アクセス確認日:2024年12月

パーキンソン病は、米国で少なくとも50万人が罹患しているといわれる運動障害です。パーキンソン病は、運動、意欲、感情、快感などの感覚をコントロールするのに役立つ化学物質であるドーパミンを脳細胞が十分に生成できない場合に発症します。パーキンソン病の症状は徐々に始まり、時間の経過とともに悪化していきます。震えやこわばり、バランス感覚や協調運動の低下などがあります。パーキンソン病が進行すると、歩く、話す、噛むなどの日常的な作業が困難になるかもしれません。抑うつや睡眠の問題も多くみられます。なぜパーキンソン病に罹患するのかは不明ですが、遺伝子の関連や環境中の化学物質への曝露も考えられるかもしれません。

パーキンソン病に関するさらなる情報については、 国立神経疾患・脳卒中研究所 (NINDS; National Institute of Neurological Disorders and Stroke)のパーキンソン病の情報ページ[英語サイト]をご覧ください。

科学的見解

研究者らは、パーキンソン病に対する以下のような補完療法を研究しています。

心理的・身体的なアプローチ

  • 太極拳:太極拳がパーキンソン病の一部の人のバランスを改善するのに役立つかもしれないという限定的なエビデンス(科学的根拠)がありますが、研究結果はまちまちです。2012年に報告された、軽度から中等度のパーキンソン病患者を対象とした研究では、週2回24週間太極拳を行うよう割り当てられたグループは、筋力トレーニングやストレッチを行ったグループと比較して、バランス、安定性、歩行速度がより改善されました。また、太極拳を行ったグループは、24週間後も運動を続けていた傾向が高いことが、追跡調査で明らかになりました。しかし、2013年に報告された、16週間にわたる週2~3回の太極拳の実践を検証した米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)が資金提供した小規模研究では、歩行の改善と関連しなかったことが示されました。
  • マッサージ鍼治療:パーキンソン病患者に対するマッサージや鍼治療の研究は限定的です。どちらも症状の軽減に役立つという強力なエビデンスはありません。
  • ダンス:他の運動と比較して、ダンスレッスン、特にアルゼンチンタンゴを習うことは、少なくとも短期的にはパーキンソン病のいくつかの症状に役立つようであることが、複数の小規模研究で示されました。全般的に、参加者のバランス、可動性、生活の質(Quality of Life:QOL)が改善されました。これらの研究には、進行したパーキンソン病の参加者は含まれていません。

反復経頭蓋磁気刺激(Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation:rTMS)

rTMSは、磁気パルスで脳の標的部位を刺激します。rTMSは、特定のタイプのうつ病に対して承認されており、(すべてではありませんが)いくつかの研究では、パーキンソン病の症状の一部を改善するかもしれないことが示されています。rTMSは非侵襲的であり、パーキンソン病のいくつかの身体障害症状の治療に用いられる外科的処置である脳深部刺激法とは異なるものです。

介護者:自分の健康とウェルビーイング(well-being)を守るために、サポートグループへの参加、自分のための日課作り、運動の実施、必要に応じて今かかっている医療機関※の受診を検討してください。成人デイケアやレスパイトケアなどの情報源については、Eldercare listings[英語サイト]をご覧いただくか、ここに掲載されている団体にお問い合わせください。

ダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け

  • いかなるダイエタリーサプリメントもパーキンソン病の症状を軽減することは明らかになっていません。パーキンソン病に対するダイエタリーサプリメントのクレアチンおよびコエンザイムQ10に関する大規模な個別の研究では、一部の研究参加者が受けたプラセボと比べてサプリメントが明らかに有効ではなかったため、早期に中止されました。
  • パーキンソン病に対するオメガ3脂肪酸と、脳に存在する抗酸化物質であるグルタチオンの一種を対象とした研究が行われています。
  • 研究者らは、パーキンソン病に対するさまざまな補完療法の研究に加え、パーキンソン病の症状がプラセボ効果にどれだけ影響されやすいかについても研究しています。例えば、プラセボ錠は、パーキンソン病の標準治療薬と同様に脳活動の変化を引き起こすことが、NCCIHが資金を提供した小規模な研究で明らかになっています。

安全性

  • 太極拳、鍼治療、マッサージ、ダンスは、ほとんどのパーキンソン病患者にとって安全であると思われますが、新しい運動プログラムや補完療法を始める前に、今かかっている医療機関※に確認してください。
  • rTMSは一般的にパーキンソン病患者にとって安全だと思われますが、ペースメーカーを使用していたり、特定のタイプの発作を経験していたりする場合は、リスク(危険)が生じるかもしれません。
  • ダイエタリーサプリメントは、副作用を引き起こしたり、薬と相互作用したりするかもしれません。例えば、抑うつなどに使われるセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)は、多くの薬が体内で分解される速度を速め、薬の効果を低下させる可能性があります。サプリメントの中には、品質が悪く、薬物、化学物質、金属などが混入している製品があるかもしれません。一部のサプリメントでは、ラベルの記載内容と容器の内容物が著しく異なることが研究で判明しています。

(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)

医療関係者向け

研究結果

関連するファクトシート

さらなる情報

■ NCCIH 情報センター

米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)の情報センターは、NCCIHに関する情報、ならびに連邦政府が管理運営する科学・医学論文データベースから関連する文献や検索・調査などを含む補完・統合医療に関する情報を提供しています。情報センターでは、医学的なアドバイス、治療の推奨、施術者の紹介はおこなっていません。

米国内の無料通話:1-888-644-6226
テレコム・リレー・サービス(Telecommunications relay service:TRS)7-1-1
ウェブサイト:https://www.nccih.nih.gov[英語サイト]
E-mail:info@nccih.nih.gov(メール送信用リンク)

■ 科学を知ろう

NCCIHと米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)は、科学研究の基礎と用語を理解し、自分の健康について十分な情報を得た上で意思決定できるようにするためのツールを提供しています。科学を知ろうは、インタラクティブなモジュール、クイズ、ビデオなどのさまざまな教材や、消費者が健康情報を理解できるように設計された連邦政府のリソースから有益なコンテンツへのリンクを提供しています。

Explaining How Research Works(研究のしくみを知る)[英語サイト] (NIH)
科学を知ろう:科学雑誌の論文を理解する方法
Understanding Clinical Studies(臨床試験を理解する) [英語サイト] (NIH)

■ PubMed®

米国国立医学図書館(National Library of Medicine, PubMed®:NLM)のサービスであるPubMed®には、科学・医学雑誌に掲載された論文の情報(掲載号、出版年月日など)および(ほとんどの場合)その論文の要約が掲載されています。NCCIHによるPubMed使用のガイダンスは、「補完・統合医療に関する情報をPubMed® で検索する方法」をご覧ください。

ウェブサイト:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/ [英語サイト]

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米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)は、個人の参考情報として、この資料を提供しています。この資料は、あなたが今かかっている医療機関の医療従事者の医学専門知識やアドバイスに代わるものではありません。NCCIHは、治療やケアについてあらゆる意思決定をする際、今かかっている医療機関に相談することをお勧めします。この資料に記載されている特定の製品、サービス、治療法のいずれも、NCCIHが推奨するものではありません。

監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2025年6月19日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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