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海外の情報

マルチビタミン/ミネラル(MVM)サプリメント
Multivitamin/mineral Supplements

[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版最終アクセス確認日:2024年12月

これは一般的な概要です。さらなる情報については、医療従事者向けファクトシートをご覧ください。

マルチビタミン/ミネラルサプリメント(MVM) とは?

マルチビタミン/ミネラル(Multivitamin/mineral:MVM) サプリメントは、ビタミンおよびミネラルを配合したサプリメントであり、時に他の成分を含むこともあります。これらは、マルチ、マルチプル、あるいは単にビタミンなどとさまざまな名称で呼ばれています。MVMサプリメントに含まれるビタミンとミネラルは体内で特有の役割を果たしています。それぞれの役割については個々の「ビタミン/ミネラルファクトシート」をご覧ください。

MVMサプリメントは、健康的な食生活に重要な、さまざまな食品を食べるということの代わりにはなりません。食品はビタミンやミネラル以上のものを提供します。また、 食物繊維 や健康に役立つその他の成分も含まれています。

MVMサプリメントにはどのようなものがありますか?

多くの種類のMVMが店舗やオンラインで販売されています。どのビタミンやミネラルをどれだけ製品に含めるかは、各社が選択しています。標準的なMVMや標準的な成分リストはありません。

最も一般的なMVMは、1日1回の基本的な製品で、推奨量に近い量のビタミンとミネラルをすべて、またはほとんど含んでいます。

MVMの中には、ビタミンやミネラルを推奨量より多く含むものもあります。これらの製品は、毎日飲むために2錠以上のパックになっている場合があります。

製造各社は、運動能力やエネルギーの向上、体重管理、免疫力の向上、目の健康など、特定の目的でMVMをプロモーション(宣伝・販売促進)しています。これらの製品には、ビタミンやミネラルに加えて、 ハーブ やその他の成分(緑茶コエンザイムQ10プロバイオティクスグルコサミンなど)が含まれていることがよくあります。

栄養素の推奨量は年齢や性別によって異なり、推奨所要量(推奨量、Recommended Dietary Allowance、RDA)や適正摂取量(目安量、Adequate Intake:AI)として知られています。サプリメントのラベルには、各栄養素について「1日当たりの摂取推奨量(Daily Value, DV)」が記載されていますが、これは必ずしも栄養素の推奨摂取量(RDA)や適正摂取量(AI)と一致するわけではありません。ラベルには%DVが記載されており、1食分がDVに達するためにどの程度(何%)寄与しているかが示されています。

MVMが健康に及ぼす影響にはどのようなものがありますか?

栄養素の摂取量を増やし、健康を増進し、病気の リスク(危険) を軽減するためにMVMを摂取することについて、研究が示している例をいくつか挙げてみましょう。

栄養素の摂取量増加

MVMを摂取すると、毎日摂取できる栄養素の量が増えます。食事だけでは十分な量のビタミンやミネラルを摂取できない、あるいは摂取できない場合に、推奨量のビタミンやミネラルを摂取するのに役立ちます。しかし、MVMを摂取することで、 、 ビタミンA(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け)、 亜鉛(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け)、 ナイアシン、 葉酸(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け)など、一部の栄養素を過剰に摂取する可能性も高まります。推奨量については、各ビタミン・ミネラルの ファクトシートをご覧ください。

食事や栄養の「保険」と してMVMサプリメントを摂取する人もいます。しかし、MVMを摂取している人は、そうでない人に比べて、食品や飲料から多くのビタミンやミネラルを摂取していることが多いようです。

健康増進と慢性疾患予防

MVMが健康に役立つかどうかを判断するのは難しいことです。なぜなら、研究ではしばしば異なる製品を使用しており、結果を比較するのが難しいからです。また、多くのMVMが販売されており、製造各社はその組成を自由に変えることができるため、研究者が特定のビタミンやミネラルの組み合わせが健康に影響を与えるかどうかを研究するのは難しいと考えられています。また、より健康的な食生活とライフスタイルを持つ人は、よりMVMサプリメントを摂取する傾向にあり、そのことがMVMサプリメントの有益性(ベネフィット)を特定することを困難にしています。

科学者らは、MVMの摂取が、がん、心疾患、骨粗鬆症、肺疾患、精神疾患などの健康問題や病気のリスク、死亡リスクに影響するかどうかを研究してきました。ほとんどの研究では、MVMの摂取はこれらのアウトカムにほとんど影響しないか、全く影響しないことが判明しています。

がん

全体として、MVMの摂取が、がんのリスクに影響するかどうかは不明です。

ある大規模研究では、50歳以上の男性医師が約11年間基本的MVMを摂取した場合、プラセボを摂取した場合と比較して、がんの発症リスクはわずかに低下しましたが、がんで死亡するリスクは低下しませんでした。60~65歳以上の男女を対象とした別の大規模研究では、基本的なMVMを約3.6年間摂取した人は、肺がんを除いてがんの発症リスクが低下しませんでした。他の研究では、相反するエビデンスが見つかっています。例えば、さまざまな研究が、MVMは女性の乳がんリスクを増加させるかもしれない、減少させるかもしれない、あるいは影響を与えないかもしれないということを示しています。男性の場合、MVMは結腸がんのリスクを低下させるが、前立腺がん、肺がん、白血病のリスクを上昇させるという研究もあります。

心血管疾患(Cardiovascular disease:CVD)

全体として、MVMはCVDのリスクにほとんど影響を与えないようです。

男女を対象にMVMとプラセボを比較した研究のほとんどは、MVMは心臓発作や脳卒中を含むCVDのリスクやその結果としての死亡を減少させないことを明らかにしています。MVMを単独で摂取している人を対象とした他のほとんどの研究でも、これらの製品はCVDを予防しないことが判明しています。

白内障 と 加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)

ビタミンとミネラルの特定の組み合わせは、中心視力をぼやけさせる目の病気であるAMDによる視力低下を遅らせることができます。

加齢関連眼疾患研究(Age-Related Eye Disease Study:AREDS)では、AMDおよび/または白内障の人が、高用量のビタミンC(500mg)(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け)、ビタミンE(400IU)(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け)、β-カロテン(15mg)、亜鉛(80mg)、銅(2mg)のサプリメントを毎日約6年間摂取した場合、進行したAMDになる確率が低いことが示されました。また、視力低下もサプリメントを摂取しなかった人より少ないことが示されました。しかし、サプリメントはAMDになるリスクや白内障のリスクを減少させることはありませんでした。後の研究で、β-カロテンを含まないサプリメントでも同等の有用性があることが示されました。

妊娠と出産の結果

出産前のMVMサプリメントは、妊娠中の人が十分な栄養素、特に葉酸や鉄などの主要栄養素を摂取するのに役立ちます。栄養不良のリスクがある妊娠中の人は、妊娠中にMVMを摂取すれば、早産や低出生体重児、小柄な赤ちゃんを産む可能性が低くなるかもしれません。しかし、すでにすべての栄養素を十分に摂取している妊娠中の人にとっては、MVMに違いはないかもしれません。

その他のアウトカム

一部の研究では、MVMの使用と骨粗鬆症、肺疾患、精神疾患、さらには死亡リスクなどの症状との関連性が検討されています。ほとんどの場合、MVMはこれらの健康アウトカムに影響を与えないことが示されています。しかし、いくつかの研究では、MVMを1~3年間摂取した高齢者は、認知機能、記憶、および関連するメンタルスキルが改善したことがわかりました。

MVMを摂取したほうが良いですか?

食事だけでは十分なビタミンやミネラルを摂取できない人、低カロリー食を摂っている人、食欲がない人、特定の食品を避けている人(厳格な ベジタリアン や ビーガンなど)は、MVMの摂取を検討するとよいでしょう。また、医療提供者は、特定の医学的問題を抱える患者にMVMを勧めるかもしれません。

MVMやMVMに含まれる特定の栄養素を摂取することで、恩恵を受ける人もいるでしょう。例えば、

  • 妊娠の可能性がある場合、強化食品やダイエタリーサプリメントから400μg/日の葉酸を摂取すると、赤ちゃんの脳や脊椎の先天異常のリスクが低下します。
  • 妊娠している場合、妊娠前用MVMを毎日摂取することにより、葉酸、鉄分、ヨウ素、ビタミンD(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け)を妊娠中に十分に摂取することが可能になります。また、出生前のMVMでは不足しがちであったり、量が少なすぎたりするヨウ素やコリンのサプリメントも、医師から別途勧められるかもしれません。
  • 妊娠中でベジタリアンやビーガンの食事をしている場合は、ビタミンB12(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け)やオメガ3脂肪酸のEPAやDHAなど、他の栄養素を医師から勧められるかもしれません。
  • 母乳で育てられた赤ちゃんも、授乳中の親がビタミンB12をあまり摂取していなかったり、菜食主義者であったりすると、ビタミンB12のサプリメントが必要になるかもしれません。
  • 母乳栄養の乳児はおよび部分母乳栄養の、10μg(400IU)/日のビタミンDサプリメントを摂取する必要があり、ビタミンD強化粉ミルクまたはミルクを1日1クォート(約 0.946リットル)未満しか飲まない非母乳栄養の乳児および幼児も同様です。
  • 50歳以上の人は、食品に含まれるビタミンB12を十分に吸収できないかもしれないため、強化食品やダイエタリーサプリメントから推奨量のビタミンB12を摂取する必要があります。
  • 60歳以上の人は、MVMを摂取することで、認知機能、記憶力、関連するメンタルスキルの維持や向上に役立つかもしれません。

MVMサプリメントが害を及ぼす可能性はないのですか?

基本的なMVMの摂取が健康を害することはまずありません。ただし、栄養強化食品や飲料(ビタミンやミネラルを添加したシリアルや飲料など)を摂取している場合や、その他のダイエタリーサプリメントを摂取している場合は、摂取するMVMによってビタミンやミネラルの摂取量が上限値を超えないように注意しましょう。(上限値の詳細については、個々のビタミンおよびミネラルの ファクトシートをご覧ください)。

喫煙者、またおそらく過去に喫煙者だった人は、肺がんのリスクを高めるかもしれないため、大量のビタミンAおよびβ-カロテンを含むMVMサプリメントを避ける必要があります。

妊娠中にビタミンAを摂りすぎると、赤ちゃんが先天異常になるリスクが高まるかもしれません。このリスクは、β-カロテン(ニンジンなどの植物性食品や一部のダイエタリーサプリメントに含まれるビタミンAの一種)には当てはまりません。

MVMサプリメントは、医薬品あるいは他のダイエタリーサプリメントと相互作用しますか?

基本的なMVMは通常、薬との相互作用はありませんが、重要な例外が一つあります。ワルファリン(クマディンやヤントベン)のような血液凝固を抑える薬を服用している場合は、ビタミンKを含むMVMやダイエタリーサプリメントを摂取する前に、今かかっている医療機関※に相談してください。ビタミンKは薬の効果を減弱させるため、医師は、あなたが普段食品やサプリメントから摂取しているビタミンKの量に基づいて、薬の服用量を決めています。

どのような種類のMVMサプリメントを選べばよいですか?

MVMサプリメントを摂取すべきかどうか、また摂取する場合にはどのようなものが最適かについては、今かかっている医療機関※に相談してください。基本的なMVMには、推奨量に近い多くのビタミンとミネラルが含まれています。しかし、これらのMVMに含まれるカルシウムとマグネシウムの量は通常少ないようです。

また、自分の年齢、性別、その他の要因(妊娠など)に合わせて設計されたMVMを選ぶことも検討するとよいでしょう。これらのMVMは、あなたのニーズにより適したビタミンとミネラルの組み合わせを含んでいるかもしれません。例えば、妊産婦用MVMは、ビタミンAをβ-カロテンとして提供していることが多いと考えられます。ほとんどの子供用MVMは、子供に合った栄養素を少量ずつ含んでいます。高齢者向けMVC(シニア向けまたは50歳以上向け製品と呼ばれることもある)は、通常、若い成人向けMVCよりもカルシウムやビタミンD、ビタミンB12を多く含み、鉄分は少なめです。

MVMサプリメントと健康的な食生活

米国連邦政府の「Dietary Guidelines for Americans(米国の食事指針)によれば、「栄養の多くを食品や飲料から摂取するべきである」と指摘されています。食品には、健康によいとされるビタミン、ミネラル、食物繊維やその他の成分が含まれています。場合によって、栄養強化食品やダイエタリーサプリメントは、他の方法では1つまたは複数の栄養素の必要量を満たすことができない場合(例えば、妊娠などの特定のライフステージ)に有用です。健康的な食生活の構築についての詳細は、「Dietary Guidelines for Americans(米国の食事指針)」[英語サイト」と米国農務省の「MyPlate(私の食事)」[英語サイト]をご覧ください。

MVMサプリメントに関する詳しい情報を得たい時は?

(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)

米国国立衛生研究所(National Institutes of Health :NIH)のダイエタリーサプリメント室(Office of Dietary Supplements :ODS)が作成したこのファクトシートは、情報を提供するものであり、医師のアドバイスの代わりになるものではありません。ダイエタリーサプリメントに関する興味・関心、疑問、利用法、何があなたの健康全般のために最善となり得るかについて知りたい場合は、今かかっている医療機関※(医師、管理栄養士、薬剤師などの医療従事者)に相談することをお勧めします。この文書内で特定の製品やサービス、または機関や専門家団体からの推奨について言及した場合でも、その製品、サービス、専門家のアドバイスに対しダイエタリーサプリメント室(ODS)が支持を表明するものではありません。
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更新日:2025年6月19日

監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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