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セレニウム(セレン)
Selenium

- 写真に掲載している食材の成分表一覧
[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版最終アクセス確認日:2024年12月
ここではセレニウムの概要を読者にわかりやすく解説しています。詳細については、「医療者向けファクトシート:セレニウム(セレン、Selenium)」をご覧ください。
セレニウムとは?その働きは?
セレニウムとは、体を健康に保つために必要な栄養素です。セレニウムは生殖、甲状腺機能、DNA生成に重要であり、また、フリーラジカルが原因の損傷や感染から体を守るためにも重要です。
セレニウムの必要摂取量は?
セレニウムの必要摂取量は、年齢によって異なります。下表に1日の平均推奨摂取量を、マイクログラム(μg)で示します。
ライフステージ | 推奨摂取量 |
---|---|
生後0〜6カ月 | 15 μg |
7~12カ月の幼児 | 20 μg |
1~3歳の小児 | 20 μg |
4~8歳の小児 | 30 μg |
9~13歳の小児 | 40 μg |
14〜18歳の青年 | 55 μg |
19~50歳の成人 | 55 μg |
51~70歳の成人 | 55 μg |
71歳以上の成人 | 55 μg |
妊婦(10代も含む) | 60 μg |
授乳婦(10代も含む) | 70 μg |
セレニウムはどんな食品から摂取できますか?
セレニウムは、多くの食品中に自然に存在します。植物性食品に含まれるセレニウムの量は、その植物が栽培された土壌に含まれるセレニウムの量に依存します。動物性食品に含まれるセレニウムの量は、その動物が食べた食べ物に含まれるセレニウムの量に依存します。以下のようなさまざまな種類の食品を食べることで、セレニウムの推奨量を摂取することができます:
- 海産物
- 食肉(哺乳動物の肉)、鶏肉、卵、乳製品
- パン、シリアル、その他の穀物製品

市販されているセレニウムのダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)には、どのようなものがありますか?
セレニウムは、多くのマルチビタミン・ミネラルサプリメントやその他のダイエタリーサプリメント(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)に含まれています。また、セレニウムは、セレノメチオニンやセレン酸ナトリウムなどの複数の異なる形態でも存在している場合があります。
セレニウムは足りていますか?
ほとんどの米国人は、セレニウムを多く含む土壌を含むさまざまな地域で栽培または飼育された食品を食べているため、食事から十分なセレニウムを摂取しています。
特定の集団では、他と比べて十分にセレニウムを摂取できていない可能性があります:
- 腎臓透析を行っている人
- HIVに感染している人
- セレニウム含有量が低い土壌で育った地元の食品のみ食べている人
セレニウムが不足するとどうなりますか?
米国やカナダでは、セレニウム欠乏症は稀な疾患です。セレニウム欠乏症は、ケシャン病(克山病:心疾患の一種)や男性の不妊症を引き起こす可能性があります。また、カシン・ベック病という関節炎の一種で、関節に痛みや腫脹、関節可動域の低下をもたらす疾患を引き起こすかもしれません。
セレニウムが健康に及ぼす影響にはどのようなものがありますか?
セレニウムが健康にどのような影響を与えるのかを解明するための研究が行われています。ここでは、研究で明らかになったいくつかの例をご紹介します。
がん
研究では、セレニウムの摂取量が少ない人は、結腸・直腸、前立腺、肺、膀胱、皮膚、食道、胃のがん発症リスク(危険)が高まる可能性があることが示唆されています。しかし、セレニウムのサプリメントが、がんのリスクを低下させるかどうかは明らかではありません。食品およびダイエタリーサプリメントからのセレニウム摂取が、がんのリスクに影響するかどうかを理解するためには、さらなる研究が必要です。
心血管疾患
研究者たちは、セレニウムが心血管疾患のリスクを減らすのに役立つかどうかを研究しています。血中セレニウム濃度が低い人は心疾患のリスクが高いという研究結果もありますが、そうでない研究結果もあります。食品やダイエタリーサプリメントから得られるセレニウムが心臓の健康に与える影響をよりよく理解するためには、さらなる研究が必要です。
認知機能低下
セレニウム血中濃度は年齢と共に低下するため、セレニウム濃度の低下が高齢者の脳機能低下にどのように関わっているかという研究が行われています。一部の研究結果では、セレニウム血中濃度が低い人は、精神機能も低くなる可能性が示唆されています。しかし、米国の高齢者を対象にした研究では、セレニウム血中濃度と記憶力との間に関連はないことが明らかになりました。セレニウムのサプリメントが高齢者の認知機能低下のリスクを下げるのに役立つかもしれないことを明らかにするためには、さらなる研究が必要です。
甲状腺疾患
甲状腺は、甲状腺機能に重要な役割を果たすセレニウムを高用量保持しています。研究によれば、特に女性でセレニウム(およびヨウ素)の血中濃度が低い人は、甲状腺に異常をきたすかもしれないことが示唆されています。しかし、セレニウムのサプリメントが甲状腺疾患の治療やリスクの低下に役立つ可能性については明らかになっていません。セレニウムが、甲状腺疾患に与える有用性を理解するためには、さらなる研究が必要です。

セレニウムが害を及ぼす可能性はないのですか?
過剰に摂取した場合は、有害な場合があります。例えば、ブラジルナッツは非常に高用量のセレニウム(一粒当たり68~91 μg)を含有しており、食べ過ぎると安全とされる上限値を超えてしまう可能性があります。長期間、過剰なセレニウムを摂り続けると、次のような症状を引き起こす可能性があります:
- ニンニク臭い口臭
- 悪心
- 下痢
- 発疹
- 過敏性
- 金属味を感じる
- 毛髪や爪が脆くなる
- 毛髪や爪が脱落する
- 歯が変色する
- 神経系の問題
極端に高濃度のセレニウムを摂取すると、呼吸困難、振戦、腎不全、心臓発作や心不全などの重篤な問題を引き起こす可能性があります。
セレニウムの1日の上限値は、食品、飲料、サプリメントなど、すべての供給源からの摂取量を含み、以下の通りです。
年齢 | 上限値 |
---|---|
7~12カ月の幼児 | 60 μg |
1~3歳の小児 | 90 μg |
4~8歳の小児 | 150 μg |
9~13歳の小児 | 280 μg |
14〜18歳の青年 | 400 μg |
成人 | 400 μg |
セレニウムは、医薬品あるいは他のダイエタリーサプリメントと相互作用しますか?
セレニウムが服用している一部の医薬品と相互作用するかもしれません。例えば、がん治療の化学療法薬であるシスプラチンは、セレニウム濃度を低下させる可能性がありますが、これが体に与える影響は明らかではありません。
あなたが摂取・服用しているすべてのダイエタリーサプリメントおよび処方薬、市販薬について、今かかっている医療機関※、医師、薬剤師、その他の医療関係者に伝えてください。
摂取しているダイエタリーサプリメントが、処方薬や市販薬と相互作用あるいは阻害を起こすかもしれないのか、あるいはそれらの医薬品が、体内での栄養素の吸収、利用、分解の過程において阻害するかもしれないのかについて教えてくれるでしょう。
セレニウムと健康的な食生活
米国連邦政府の「米国の食事指針(Dietary Guidelines for Americans)」によれば、「栄養の多くを食品や飲料から摂取するべきである」と指摘されています。食品には、健康によいとされるビタミン、ミネラル、食物繊維やその他の成分が含まれています。場合によって、栄養強化食品やダイエタリーサプリメントは、他の方法では1つまたは複数の栄養素の必要量を満たすことができない場合(例えば、妊娠などの特定のライフステージ)に有用です。健康的な食生活の構築についての詳細は、「米国の食事指針(Dietary Guidelines for Americans)[英語サイト]」と米国農務省の「私の食事(MyPlate)[英語サイト]」をご覧ください。
セレニウムに関する詳しい情報を得たい時は?
- セレニウムに関する一般的な情報:
- 医療関係者向け:セレニウム
- Selenium in Diet(食事に含まれるセレニウム)[英語サイト] MedlinePlus®
- セレニウム含有食品についての詳細な情報:
- 米国農務省(The U.S. Department of Agriculture:USDA)のFoodData Central [英語サイト]
- Nutrient List for selenium (listed by food or by selenium content) (特定の食品のセレニウム含有量(食品別[英語サイト]/セレニウム含有量順[英語サイト]))(USDA)
- ダイエタリーサプリメント選択に関するアドバイス:
- 健康的な食事パターンに関する情報:
(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)
更新日:2025年6月19日
監訳:大野智、的場千佳(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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