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鉄
Iron

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[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版最終アクセス確認日:2024年12月
このファクトシートは医療関係者向けです。一般的な概要については、 一般向けファクトシート [英語サイト]をご覧ください。
はじめに
多くの食品に天然に含まれるミネラルで、他の食品に添加されたり、ダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)として利用することができる鉄は、赤血球のタンパク質であるヘモグロビンの必須成分であり、肺から組織へ酸素を運搬する役割を担っている [1]。鉄は、酸素を供給するもう一つのタンパク質であるミオグロビンの成分として筋肉の代謝と健康な結合組織をサポートしている [2]。鉄はまた、身体の成長、神経の発達、細胞機能、およびいくつかのホルモンの合成にも必要である [2,3]。
食品由来の鉄には、主にヘム鉄と非ヘム鉄の2種類がある [1]。植物や鉄強化食品には非ヘム鉄のみが含まれ、食肉(哺乳動物の肉)、魚介類、鶏肉にはヘム鉄と非ヘム鉄の両方が含まれている [2]。鉄がプロトポルフィリンIXと結合してできるヘム鉄は、欧米の人口の総鉄分摂取量の約10%から15%を占めている[3-5]。
成人の3〜4gの元素鉄のほとんどはヘモグロビンに含まれている [2]。残りの鉄の多くは、肝臓、脾臓、骨髄にフェリチンまたはヘモジデリン(フェリチンの分解産物)の形態で貯蔵されているか、筋肉組織のミオグロビンに存在している [1,5]。トランスフェリンは、鉄と結合して全身に運搬する血液中の主要なタンパク質である。人間は一般的に、尿、便、消化管、皮膚からわずかな鉄を失う。月経のある女性では、血液が失われるため、損失はより大きくなる。循環ペプチドホルモンであるヘプシジンは、鉄の吸収と血漿を含む全身への鉄の分布の両方を制御する重要な因子である [1,2,6]。
鉄の状態の評価は、ほぼ完全に血液学的指標に依存している [7]。しかし、これらの指標は、鉄の状態の全領域を適切に評するのに十分な感度や特異性を持っておらず、鉄欠乏の診断を複雑なものにする可能性がある。補完療法として、食事やダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)からの鉄の摂取量が推奨摂取量と比較してどうであるかを検証することがある。
鉄欠乏は、鉄貯蔵量の枯渇(軽度の鉄欠乏)から、鉄欠乏性赤血球形成(赤血球産生)、そして最終的には鉄欠乏性貧血(iron deficiency anemia:IDA)へと進行する [8,9]。欠乏性赤血球形成(限界鉄欠乏症ともいう)では、貯蔵鉄が枯渇し、トランスフェリン飽和度が低下するが、ヘモグロビン値は通常正常範囲内である。鉄欠乏性貧血は、ヘモグロビン濃度の低下、ヘマトクリット(血液中の赤血球の体積割合)および平均赤血球容積(赤血球の大きさの指標)の減少を特徴とする [2,10]。
体内の鉄貯蔵量の指標である血清フェリチン濃度は、現在、鉄欠乏症の診断に最も効率的で費用対効果の高い検査である [11-13]。血清フェリチンは鉄枯渇の第一段階で減少するため、鉄欠乏性貧血の発症前に低鉄状態を特定することが可能である [7,9,14]。血清フェリチン濃度が30μg/Lより低いと鉄欠乏を、10μg/Lより低いと鉄欠乏性貧血を示唆する[15]。しかし、血清フェリチンは(感染症などによる)炎症の影響を受けやすく、血清フェリチン濃度は上昇する [16]。
ヘモグロビンおよびヘマトクリット検査は、感度も特異性もないにもかかわらず、鉄欠乏症の患者をスクリーニングするための最も一般的な測定法である [5,7,17]。しばしば、ヘモグロビン濃度は、鉄欠乏性貧血を特定するために血清フェリチン測定と組み合わされる [7]。10歳未満の小児でヘモグロビン濃度が11g/dL未満、または10歳以上の個人で12g/dL未満であれば、鉄欠乏性貧血を示唆する [8]。ヘマトクリットの正常値は、男性で約41%~50%、女性で36%~44%である [18]。
推奨摂取量
鉄およびその他の栄養素の所要量は、米国医学研究会(Institute of Medicine:IOM)の食品栄養委員会(Food and Nutrition Board:FNB)が作成した食事摂取基準(Dietary Reference Intakes:DRI)に記載されている[5]。DRIは、健康な人の栄養摂取の計画と評価に関する一連の基準値に対する総称である。この値は、年齢、性別、下記条件により異なる:
- 推奨所要量(推奨量、Recommended Dietary Allowance、RDA):ほぼすべて(97%~98%)の健康な人の栄養所要量を満たすのに十分な1日あたりの平均摂取量であり、個人の栄養的に適切な食事を計画する際によく用いられる。
- 適正摂取量(目安量、Adequate Intake:AI):このレベルの摂取は、栄養の適切性を確保するために想定されており、RDAを策定するためのエビデンス(科学的根拠)が不十分な場合に設定される。
- 推定平均必要量(Estimated Average Requirement:EAR):健康な人の50%の必要量を満たすと推定される1日の平均摂取量。通常、集団の栄養摂取量を評価し、栄養的に適切な食事を計画するために使用される。また、個人の栄養摂取量の評価にも使用可能である。
- 許容上限摂取量(上限量、Tolerable Upper Intake Level:UL):健康への悪影響はないと思われる1日の最大摂取量
表1は、非ベジタリアンのための現在の鉄のRDAを示している。ベジタリアンのRDAは、食肉(哺乳動物の肉)を摂取する人の1.8倍である。これは、肉のヘム鉄は植物性食品の非ヘム鉄よりもバイオアベイラビリティー(生物学的利用能)が高く、肉、鶏肉、魚介類は非ヘム鉄の吸収を高めるからでる [5]。
0~6カ月の乳幼児については、健康な母乳栄養児における平均摂取量に相当する鉄のAI値をFNBが定めている。
年齢 | 男性 | 女性 | 妊娠 | 乳婦 |
---|---|---|---|---|
生後0〜6カ月 | 0.27 mg* | 0.27 mg* | ||
生後7~12カ月 | 11 mg | 11 mg | ||
1~3歳 | 7 mg | 7 mg | ||
4~8歳 | 10 mg | 10 mg | ||
9~13歳 | 8 mg | 8 mg | ||
14~18歳 | 11 mg | 15 mg | 27 mg | 10 mg |
19~50歳 | 8 mg | 18 mg | 27 mg | 9 mg |
51歳以上 | 8 mg | 8 mg |
*適正摂取量(AI)
鉄の供給源
食品
食事に含まれるヘム鉄の最も豊富な供給源は、赤肉と魚介類である [19]。食品由来の非ヘム鉄としては、ナッツ類、豆類、野菜、栄養強化穀物製品がある。米国では、食事で摂る鉄の約半分がパン、シリアル、その他の穀物製品から摂取されている [2,3,5]。母乳にはバイオアベイラビリティー(生物学的利用能)の高い鉄が含まれているが、その量は4~6カ月以上の乳児の必要量を満たすのには不十分である [2,20]。
米国、カナダ、その他多くの国では、小麦粉やその他の小麦粉に鉄分を強化している [21,22]。乳児用ミルクは1リットル当たり12mgの鉄を含むように強化されている [20]。
ヘム鉄は非ヘム鉄よりもバイオアベイラビリティが高く、他の食事成分は非ヘム鉄よりもヘム鉄のバイオアベイラビリティに影響を及ぼしにくい [3,4]。鉄のバイオアベイラビリティは、相当量の食肉、魚介類、ビタミンC(非ヘム鉄のバイオアベイラビリティ率を高めるアスコルビン酸)を含む混合食から約14~18%、ベジタリアン食から5~12%である [2,4]。アスコルビン酸に加えて、食肉、鶏肉、魚介類は非ヘム鉄の吸収を促進するが、フィチン酸(穀物や豆類に含まれる)および一部の非動物性食品(穀類や豆類など)に含まれるポリフェノールは反対の効果を持つ [4]。他の鉄吸収阻害物質とは異なり、カルシウムは非ヘム鉄とヘム鉄の両方のバイオアベイラビリティを低下させる可能性がある。しかし、鉄吸収促進剤や阻害剤の効果は、典型的な西洋の混合食によって減衰するので、ほとんどの人の鉄の状態にはほとんど影響を及ぼさない。
鉄の供給源となる食品を表2に示す。ほうれん草など、鉄の供給源として優れた植物性食品の中には、ポリフェノールなどの鉄吸収阻害物質を含んでいるため、鉄のバイオアベイラビリティが低いものがある [23,24]。
食品(1オンスは約28g、1カップは240ml) | 1回当たりの摂取量(mg) | %DV* |
---|---|---|
朝食用シリアル類、鉄の1日摂取量100%添加、1食分 | 18 | 100 |
西洋牡蠣、蒸し、3オンス(約85 g) | 8 | 44 |
白豆、缶詰、1カップ(240ml) | 8 | 44 |
牛レバー、焼いたもの、3オンス(約85g) | 5 | 28 |
レンズ豆、茹でて湯切り、1/2カップ(120ml) | 3 | 17 |
ホウレンソウ、茹でて湯切り、1/2カップ(120ml) | 3 | 17 |
木綿豆腐、1/2カップ(120ml) | 3 | 17 |
チョコレート、ダーク、カカオ固形分が45%~69%、1オンス(約28g) | 2 | 11 |
赤インゲン豆、缶詰、1/2カップ(120ml) | 2 | 11 |
イワシ、大西洋産、缶入りオイル漬けのもの、油切りした身と骨、3オンス(約85g) | 2 | 11 |
ひよこ豆、茹でて湯切り、1/2カップ(120ml) | 2 | 11 |
トマト、缶詰、煮込み、1/2カップ(120ml) | 2 | 11 |
牛肉、外モモ肉の蒸し煮、1/8インチに脂肪を切り取ったもの、3オンス(約85g) | 2 | 11 |
じゃがいも、焼いたもの、皮付きのじゃがいも、中くらいのもの1個 | 2 | 11 |
カシューナッツ、油で炒ったもの、1オンス(約28g、18個) | 2 | 11 |
グリーンピース、茹で、1/2カップ(120ml) | 1 | 6 |
鶏肉、焼き、身と皮付き、3オンス(約85g) | 1 | 6 |
白米、長粒種、強化米、湯通し、湯切り、1/2カップ(120ml) | 1 | 6 |
パン、全粒粉、1切れ | 1 | 6 |
パン、精白、1切れ | 1 | 6 |
種なし干しぶどう、1/4カップ | 1 | 6 |
スパゲッティ、全粒粉、加熱調理、1カップ(240ml) | 1 | 6 |
ツナ(マグロ)、水煮缶入り、3オンス(約85g) | 1 | 6 |
七面鳥、焼き、むね肉と皮、3オンス(約85g) | 1 | 6 |
ナッツ類、ピスタチオ、ドライロースト、1オンス(約28g、ナッツ49個) | 1 | 6 |
ブロッコリー、茹でて湯切り、1/2カップ(120ml) | 1 | 6 |
卵、固ゆで、Lサイズ1個 | 1 | 6 |
玄米、長粒種または中粒種、加熱調理、1カップ(240ml) | 1 | 6 |
チーズ、チェダー、1.5オンス(約42g) | 0 | 0 |
カンタロープメロン、さいの目切り、1/2カップ(120ml) | 0 | 0 |
マッシュルーム、白、薄切り、炒めたもの、1/2カップ(120ml) | 0 | 0 |
カッテージチーズ、乳脂肪2%、1/2カップ(120ml) | 0 | 0 |
牛乳、1カップ(240ml) | 0 | 0 |
*DV=1日摂取量(Daily Value):米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)は、消費者が総合的な食生活の中で、食品やダイエタリーサプリメントの栄養素の含有量を比較するためにDVを設定した。鉄に対するDVは、成人と4歳以上の小児で18mgである[26]。FDAは食品ラベルに鉄の含有量を記載することを義務付けている。DVの20%以上を含む食品は、その栄養素を多く含む供給源と考えられるが、DVの低い割合の食品も健康的な食生活に寄与している。
米国農務省(The U.S. Department of Agriculture:USDA)FoodData Central[英語サイト][25] では、多くの食品の栄養素含有量をリスト化し、栄養素含有量別および食品別に整理された、鉄を含む食品の総合リストを提供している。
ダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)
鉄は、多くのダイエタリーサプリメントに含まれている。鉄分を含むマルチビタミン/ミネラルのサプリメント、特に女性向けのものは、一般的に18mgの鉄分(DVの100%)を含んでいる。男性や高齢者向けのマルチビタミン/ミネラルのサプリメントは、鉄分の含有量が少ないか、全く含まれていないことが多い。鉄分のみのサプリメントは、通常DV値より多く、65mgの鉄分(DV値の360%)を含むものが多くある。
サプリメントでよく使われる鉄の形態には、硫酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、クエン酸第二鉄、硫酸第二鉄などの第一鉄塩や第二鉄塩がある [3,27]。溶解度が高いため、ダイエタリーサプリメントに含まれる第一鉄は第二鉄よりもバイオアベイラビリティが高い[3]。高用量の鉄分サプリメント(45mg/日以上)は、悪心や便秘などの胃腸の副作用を引き起こす可能性がある [5]。ヘム鉄ポリペプチド、カルボニル鉄、鉄アミノ酸キレート、多糖類-鉄複合体など、他の形態の補給用鉄は、第一鉄塩や第二鉄塩よりも胃腸の副作用が少ない可能性がある [27]。
サプリメントに含まれるさまざまな形態の鉄は、さまざまな量の元素状鉄を含んでいる。例えば、フマル酸第一鉄は重量比で33%の元素鉄であるのに対し、硫酸第一鉄は20%、グルコン酸第一鉄は12%の元素鉄である [27]。幸いなことに、元素鉄はサプリメントの成分表示パネルに記載されているため、消費者はさまざまな形態の鉄分サプリメントから供給される鉄の量を計算する必要はない。
米国人の約14~18%が鉄分を含むサプリメントを利用している [28,29]。鉄を含むサプリメントの使用率は年齢と性別によって異なり、12~19歳の小児の6%から、授乳中の女性の60%、妊婦の72%までとなっている [28,30]。
カルシウムは鉄の吸収を妨げる可能性があるが、この効果については明確に立証されていない [4,31]。このため、カルシウムと鉄分サプリメントをそれぞれ別の時間に摂取することを勧める専門家もいる [32]。
鉄の摂取状況
米国では通常、食事から十分な量の鉄を摂取しているが、乳児、幼児、10代の女児、妊婦、閉経前の女性は摂取量が不足する危険性がある [28,33-35]。食品からの1日の平均鉄摂取量は、2~11歳の小児で11.5~13.7mg/日、12~19歳の小児と10代で15.1mg/日、男性で16.3~18.2mg/日、19歳以上の女性で12.6~13.5mg/日となっている [28]。食品とサプリメントからの1日の平均鉄摂取量は、2~11歳の小児で13.7~15.1mg/日、12~19歳の小児と10代で16.3mg/日、男性で19.3~20.5mg/日、19歳以上の女性で17.0~18.9mg/日である。妊婦の食事性鉄分摂取量の中央値は14.7mg/日である[5]。
鉄欠乏の割合は、人種や他の社会人口学的要因によって異なる。米国では1~3歳の白人および黒人の幼児の6%が鉄欠乏であり(トランスフェリン飽和度、遊離赤血球プロトポルフィリン、血清フェリチンの検査でその小児の年齢および性別に対して少なくとも2つの異常値があると定義)、ヒスパニックの幼児の12%と比較して、鉄欠乏は、その小児の年齢および性別に対して少なくとも2つの異常値がある。 [36]。鉄の欠乏(鉄欠乏性貧血を含む)は、食糧不安のない家庭よりも食糧不安のある家庭の小児や青年の間で一般的である [36,37]。妊婦では、鉄貯蔵量の枯渇に基づく欠乏は、非ヒスパニック系白人女性(13.9%)よりもメキシコ系アメリカ人(23.6%)および非ヒスパニック系黒人女性(29.6%)で一般的である[38]。
一部の集団では、鉄を過剰に摂取する危険性がある。食事から過剰に鉄を吸収しやすい遺伝性ヘモクロマトーシスの人は、鉄過剰になるリスク(危険)が高い[39]。ある研究では、高齢者は鉄欠乏症よりも慢性的な鉄の正のバランスと総体鉄の上昇を起こしやすいことが示唆されている。Framingham Heart Studyに参加した67~96歳の白人高齢者1,106例のうち、13%が高い鉄貯蔵量(血清フェリチン値が男性で300μg/L以上、女性で200μg/L以上)であり、そのうち慢性疾患によるものは1%に過ぎなかった [40]。著者らは遺伝子型を評価していないため、これらの結果がヘモクロマトーシスによるものかどうかは判断できなかった [40]。
鉄欠乏症
米国では、特に幼児、生殖年齢の女性、妊婦の間で鉄の欠乏が珍しくない。鉄欠乏は、貧しい食生活、吸収不良、出血と関連しているため、鉄欠乏の人はたいてい他の栄養素の欠乏も抱えている [2]。世界保健機関(World Health Organization:WHO)は、世界の貧血症例16億2000万件の約半分が鉄欠乏によるものと推定している [41]。発展途上国では、鉄欠乏は腸炎や消化管寄生虫に伴う失血に起因することが多い [2]。
鉄の枯渇と欠乏はいくつかの段階を経て進行する [8-10]。
- 軽度の鉄欠乏または貯蔵鉄の枯渇。血清フェリチン濃度および骨髄中の鉄分濃度が低下する。
- 欠乏前状態、軽度の機能欠乏、または鉄欠乏性赤血球形成(赤血球産生):貯蔵鉄が枯渇し、赤血球生成細胞への鉄供給とトランスフェリン飽和度が低下するが、ヘモグロビン値は通常正常範囲内である。
- 鉄欠乏性貧血:貯蔵鉄が枯渇し、ヘマトクリット値やヘモグロビン値が低下し、赤血球が小さくヘモグロビン値が低い小球性低色素性貧血を特徴とする。
2002年、WHOは鉄欠乏性貧血を世界の疾病の10大危険因子の一つとして特徴付けた [42]。鉄欠乏は貧血の最も一般的な原因であるが、他の微量栄養素(葉酸 [eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け]やビタミンB12 [eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け]など)の欠乏や他の要因(慢性感染や炎症など)は、異なる形態の貧血を引き起こしたり、その重症化に寄与したりすることがある。
鉄欠乏性貧血に関連する機能障害には、胃腸障害、脱力感、倦怠感、集中力の低下、認知機能障害、免疫機能障害、運動または仕事のパフォーマンス低下、および体温調節障害がある [15,43]。乳児および小児では、鉄欠乏性貧血は精神運動および認知の異常を引き起こし、治療しなければ学習障害につながる可能性がある [2,43]。生後早期の欠乏の影響が成人期まで持続することを示すエビデンスもある[2]。鉄欠乏はしばしば他の栄養素の欠乏を伴うため、鉄欠乏の徴候および症状を切り分けることは困難である [2]。
鉄不足のリスク群
以下のグループは、鉄の摂取量が不十分である可能性が最も高いグループである。
妊婦
妊娠中は、母体の赤血球産生が劇的に増加するため、血漿量と赤血球量が拡大する [2]。この増加の結果として、また胎児と胎盤のニーズを満たすために、女性が必要とする鉄の量は妊娠中に増加する。妊娠中の鉄欠乏は、母体および乳児の死亡率、早産、低出生体重児のリスク(危険)を増加させる [44]。
乳幼児
乳幼児、特に早産や低出生体重で生まれたり、母親が鉄欠乏の場合、成長が早いため鉄の必要量が多く、鉄欠乏のリスク(危険)がある [34,45]。正期産児は通常、十分な鉄貯蔵量を有しており、生後4~6カ月までは外部からの鉄をほとんど必要としない [2]。しかし、正期産児は、バイオアベイラビリティの高い鉄を多く含む固形食または鉄強化ミルクを十分量摂取しない限り、6~9カ月で鉄欠乏になる危険性がある。
月経の出血量が多い女性
月経時の出血量が異常に多い生殖年齢の女性は、鉄欠乏症のリスク(危険)が高くなる。月経のある女性の少なくとも10%が月経過多であると考えられているが、その割合は使用する診断基準によって大きく異なる [46-48]。月経過多の女性は、正常な月経出血の女性よりも平均して月経周期ごとに著しく多くの鉄を失う [49]。限定的なエビデンスでは、生殖年齢の女性における鉄欠乏性貧血の症例の約33%~41%が月経過多である可能性を示唆している [50,51]。
頻繁な献血者
頻繁に献血する人は、鉄欠乏のリスク(危険)が高くなる [5]。米国では、成人は8週間ごとに献血することがあり、鉄の貯蔵量を消耗する可能性がある。定期的な献血者の約25%~35%が鉄欠乏を発症する [52]。2,425例の献血者の研究では、前年に少なくとも3回の全血献血を行った男性と少なくとも2回の全血献血を行った女性は、初めての献血者に比べて5倍以上、鉄貯蔵量が枯渇する可能性が高かった [53]。鉄分補給の臨床試験によると、過去3~8日以内に献血を行った成人215例のうち、鉄分補給剤(グルコン酸第一鉄から37.5mg/日の元素鉄)を24週間摂取するよう無作為に割り付けられた人は、補給剤を与えなかった人の半分以下の時間で失ったヘモグロビンと鉄分を回復した [52]。鉄分補給をしなかった場合、献血者の3分の2は、24週間後でも失った鉄分を回復していなかった。
がん患者
大腸がん患者の60%に診断時に鉄欠乏が見られるが、これは慢性的な出血が原因である可能性が高い [54]。他の種類のがん患者における鉄欠乏の有病率は 29%~46%である。がん患者における鉄欠乏の主な原因は、慢性疾患による貧血(以下の「鉄と健康」の項で説明)と化学療法による貧血である。しかし、慢性的な出血や他の栄養素の欠乏(例えば、がんによる食欲不振が原因)は、この集団における鉄欠乏を悪化させる可能性がある。
胃腸障害がある人や消化管手術の既往がある人
特定の消化器疾患(セリアック病、潰瘍性大腸炎、クローン病など)または特定の消化器外科手術(胃切除、腸切除など)を受けた人は、その疾患または手術によって食事制限が必要になったり、消化管での鉄の吸収不良や出血が起こるため、鉄欠乏のリスク(危険)が高まる [55-57]。低い鉄摂取量と高い鉄損失が組み合わさると、負の鉄バランス、ヘモグロビンの産生低下、または小球性低色素性貧血を引き起こす可能性がある [58]。
心不全の既往がある人
慢性心不全患者の約60%が鉄欠乏、17%が鉄欠乏性貧血であり、この集団における死亡リスク(危険)の上昇と関連している可能性がある [59,60]。心不全患者における鉄欠乏の潜在的原因には、栄養不良、吸収不良、貯蔵鉄の動員不良、心臓悪液質、および消化管で一部の血液が失われる可能性のあるアスピリンおよび経口抗凝固剤の使用が含まれる [61]。
鉄と健康
ここでは、妊婦、乳児、幼児における鉄欠乏性貧血における鉄の役割、および慢性疾患による貧血に焦点を当てる。
妊婦の鉄欠乏性貧血
妊娠中の鉄の摂取不足は、女性の鉄欠乏性貧血のリスク(危険)を増加させる [62-65]。摂取量が少ないと、乳児の低出生体重児、早産、鉄貯蔵量の低下、認知・行動発達の障害などのリスク(危険)も増加する。
米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)の1999~2006年のデータの解析では、米国の妊婦の18%が鉄の欠乏であることが明らかとなった [38]。鉄欠乏の割合は、第1期の女性で6.9%、第2期で14.3%、第3期で29.7%であった。
ランダム化比較試験により、鉄の補給は、妊婦の鉄欠乏性貧血およびその乳児に関連する有害な結果を予防できることが示されている [66,67]。コクランレビューでは、9~90mgの鉄を毎日補給することで、妊娠後期の女性の貧血のリスク(危険)が70%減少し、妊娠後期の鉄欠乏症のリスク(危険)が57%減少することが示された [64]。同じレビューで、毎日の鉄分補給の使用は、補給なしの10.2%と比較して、低出生体重の新生児を出産するリスク(危険)8.4%と関連していた。さらに、母親が妊娠中に毎日の鉄分を補給した乳児は、鉄分を摂取しなかった母親の乳児と比較して、平均出生体重が31g高かった。
妊娠中の鉄分補給に関するガイドラインはさまざまである:
- 米国産科・婦人科学会(American College of Obstetricians and Gynecologists:ACOG)は、鉄分補給が出産時の母親の貧血の有病率を減少させることを示す十分かつ一貫したエビデンスがあると述べている [68]。しかしながら、妊娠中の鉄欠乏性貧血が低体重児、早産、または周産期死亡の高いリスク(危険)と関連することを示すエビデンスは限定的あるいは一貫性がないことを認めている。ACOGは、すべての妊婦の貧血をスクリーニングし、鉄欠乏性貧血(第1期および第3期ではヘマトクリット値が33%未満、第2期では32%未満と定義)のある妊婦には、妊婦用ビタミンに加え、補助的な鉄を投与することを推奨している [68]。
- 一方、米国予防医療専門委員会(U.S. Preventive Services Task Force:USPSTF)は、妊婦の鉄欠乏性貧血のスクリーニングと、母体の健康と出産の有害な結果を防ぐための鉄の定期的な補給の両方について、推奨または反対するには現在のエビデンスが不十分であると結論付けている[69]。ただし、栄養不良、鉄欠乏性貧血の症状、特殊な血液学的状態または栄養ニーズがあり鉄の必要量が増加している妊婦には、その推奨は適用されないことに留意している。
IOMは、妊婦の食事による鉄分摂取量の中央値がEARを大幅に下回っているため、鉄分補給が必要であると指摘している [5]。「Dietary Guidelines for Americans(米国の食事指針)」では、妊婦は、産科医または他の医療従事者によって推奨された場合、鉄分サプリメントを摂ることを推奨している [19]。また、鉄の摂取量が少ないことは、妊婦にとって公衆衛生上の懸念であると付け加えている。
乳幼児の鉄欠乏性貧血
米国では生後6~11カ月の幼児の約12%が鉄分摂取不足であり、幼児の8%で鉄が欠乏している [36,70]。米国の12~35カ月の幼児における鉄欠乏性貧血の有病率は、人種または民族および社会経済的状況によって0.9~4.4%と幅がある [20]。正期産児は通常、最初の約4~6カ月間は十分な鉄貯蔵量を有しているが、低出生体重児および早産児は鉄貯蔵量が少ないため、鉄欠乏のリスク(危険)は出生時から生じている。
乳児期の鉄欠乏性貧血は、注意力の遅れや社会的引きこもりなど、認知的および心理的に有害な影響をもたらす可能性があり、これらの影響の一部は不可逆的な場合もある [2,20]。さらに、鉄欠乏性貧血は血中鉛濃度の上昇と関連しており(この原因は完全には解明されていない)、神経毒性のリスク(危険)を増大させる可能性がある [20]。
早産児・低出生体重児2,726例を対象とした26件の研究を対象としたコクランレビューでは、経腸的鉄補給(少なくとも1mg/kg/日)は鉄欠乏のリスク(危険)を低減させるが、神経発達の成果や成長に対する補給の長期効果は明らかではない [71]。低所得国の2歳未満の小児3,748例を対象とした8件の臨床試験を対象とした別のコクランレビューでは、フマル酸第一鉄として12.5mg~30mgの元素状鉄および4~14種類の他の微量栄養素を含む微量栄養素粉末を家庭で2~12カ月間強化することにより、介入なしまたはプラセボと比較して貧血率を31%、鉄欠乏症を51%低減したが、成長の測定には効果がなかったことが示されている [72]。
乳幼児における十分な鉄分の状態を確保し、貧血を予防または治療するための食事からの鉄分摂取と可能な補給については、さまざまなガイドラインが存在する。
- 米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は、母乳のみで育てていない生後12カ月未満の乳児には、鉄強化粉ミルクを飲ませることを推奨している [17]。早産または低出生体重で生まれた母乳育児児は、生後1〜12ヶ月から2〜4mg/kg/日(最大15mg/日)の鉄剤を滴下する必要がある。生後6カ月までに補助食品から十分な鉄分(1mg/kg/日未満)を摂取していない母乳栄養児には、1mg/kg/日の鉄剤を投与する必要がある。CDCはまた、鉄欠乏性貧血のリスク(危険)が高い乳児および就学前の小児(低所得家庭や移民など)に対して、生後9~12カ月の間とその6カ月後、および2~5歳までは毎年スクリーニングを受けることを推奨している。鉄欠乏性貧血の治療は、3mg/kg/日の鉄剤を食間に投与することから始まる。(CDCの助言の詳細は参考文献17を参照のこと)
- 米国小児科学会(The American Academy of Pediatrics)は、生後4カ月から鉄強化シリアルなどの鉄含有補完食品を食べ始めるまで、母乳のみまたは主に母乳で育てられた正期産児に1日1mg/kgの鉄補給を推奨している [20]。10〜12mg/Lの鉄を含む標準的な乳児用ミルクは、生後1年間の乳児の鉄の必要量を満たすことができる。同学会は、母乳を与えている1~12カ月の早産児に、2mg/kg/日の鉄分補給を推奨している。
- WHOは、食事に鉄強化食品が含まれていない、または貧血の有病率が40%より高い地域(発展途上国など)に住んでいる6~23カ月の小児には、2mg/kg/日の鉄を普遍的に補給するよう推奨している [44]。
- 2015年に公表された勧告声明において、USPSTFは、米国に居住し、鉄欠乏性貧血の無症状である生後6~24カ月の小児における鉄欠乏性貧血のルーチン・スクリーニングを推奨または反対するには、利用可能なエビデンスが不十分であると結論付けた [73]。この勧告は、重度の栄養不良の小児や早産や低出生体重で生まれた小児には適用されないと付け加えている。それ以前の2006年にUSPSTFは、鉄欠乏性貧血の平均的なリスク(危険)のある無症状の乳児にルーチンの鉄分補給を推奨するにはエビデンスが不十分であるとしながらも、鉄欠乏性貧血のリスク(危険)が高まっている6~12カ月の小児(例えば、未熟児や低出生体重児)には、ルーチンの鉄分補給を推奨すると述べた [74]。USPSTFの2015年の声明では、米国では鉄強化食品(乳児用ミルクやシリアルを含む)が広く使用されているため、医師が処方する鉄分補給の影響が限定されると考えられることから、現在の推奨はスクリーニングに限定されている指摘している [73]。
マラリアが流行している地域に住む幼児に鉄分を補給すると、マラリアのリスク(危険)が高まる可能性があることを示唆する研究もある [75,76]。しかし、13,114例の小児を対象とした33件の試験のコクランレビューでは、断続的な補給はこのような効果をもたらさないようであることが示されている [77]したがって、WHOは、6カ月間の補給サイクルを次のように推奨している:24〜59カ月の小児は25mgの鉄を、5〜12歳の小児は45mgを3カ月間毎週補給し、その後3カ月間は補給しない [75]。WHOは、マラリア流行地域において、マラリアの予防、診断、治療のための措置と合わせて、これらのサプリメントを提供することを推奨している。
慢性疾患性貧血
特定の炎症性、感染性、腫瘍性疾患(関節リウマチ、炎症性腸疾患、血液学的悪性腫瘍など)は、炎症の貧血としても知られる慢性疾患性貧血を引き起こす可能性がある [2,78]。慢性疾患性貧血は、鉄欠乏性貧血に次いで2番目に多いタイプの貧血である [79]。慢性疾患性貧血の患者では、炎症性サイトカインがヘプシジンというホルモンが亢進する。その結果、鉄のホメオスタシス(恒常性)が乱れ、鉄が循環から貯蔵部位に迂回され、赤血球生成に利用できる鉄の量が制限される。
慢性疾患性貧血は通常軽度から中等度(ヘモグロビン値8~9.5g/dL)で、赤血球数の低下と赤血球造血の減少を伴う [78]。血清フェリチン値の低さは鉄欠乏を示すが、感染症や炎症のある患者ではこの値が高くなる傾向があるため、この疾患の診断は困難である [80]。
慢性疾患患者における鉄欠乏の臨床的意義は明らかではない。慢性疾患による軽度な貧血であっても、高齢者では入院と死亡のリスク(危険)上昇と関連している [81]。2つの前向き観察研究では、客観的に測定された心不全患者の鉄欠乏は、心臓移植と死亡のリスク(危険)上昇と関連しており、この関連は貧血を含む他の確立された予後因子とは無関係であった [82,83]。しかし、自己申告による心不全の成人574例に関するNHANESデータの解析では、鉄欠乏と全死因死亡率または心血管系死亡率との間に関連は認められなかった [60]。
慢性疾患性貧血の主な治療法は、基礎疾患の治療である [79]。しかし、そのような治療が不可能な場合、鉄の補給および/または赤血球造血刺激因子(erythropoiesis-stimulating agent:ESA)が使用されることがある。このような状況での鉄剤の使用は、経口、静脈内、非経口のいずれであっても、感染症や心血管系イベントのリスク(危険)を高め、組織障害を引き起こす可能性があるため、論議を呼んでいる [79]。
慢性疾患性貧血を治療するための経口鉄補給単独またはESAsとの併用の有益性を評価した小規模の研究はわずかである。例えば、透析やESAを行っていない貧血の慢性腎臓病患者132例を対象とした前向き観察研究では、経口サプリメント(130mg/日の硫酸第一鉄からの元素鉄を1日2回)を1年間投与した結果、ヘモグロビンの減少がプラセボ群の0.46g/dLに対して、わずか0.13g/dLであった [76,84]。がん性貧血の患者100例を対象に、週1回ESAとともに鉄剤(200mg/日の元素鉄に相当、鉄の形態は特定せず)を経口投与したランダム化試験では、24週間後のヘモグロビンの平均値が、鉄剤のみの経口投与と比較して2.4g/dL増加した [85]。慢性疾患性貧血患者において、非経口の鉄投与は、経口鉄補給と比較してヘモグロビン値を大幅に上昇させ、副作用も少ない [86]。
鉄過剰摂取による健康上のリスク
腸の機能が正常な成人であれば、食事から摂取する鉄分による過負荷のリスク(危険)はほとんどない [2]。しかし、鉄分を25mg以上含むサプリメントは、亜鉛(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)の吸収と血漿亜鉛濃度を低下させる可能性がある[3,87,88]。高用量の鉄分サプリメントは、胃の不調、便秘、悪心、腹痛、嘔吐、下痢などの胃腸障害を引き起こす可能性もある[5,89]。鉄分サプリメントを食事と一緒に摂取することで、これらの副作用を最小限に抑えることが可能である。症例報告の中には、130mgの鉄分を摂取した例もあり、一部の人々では胃炎や胃病変(一部の症例では胃粘膜に鉄分が沈着)などのさらに重篤な胃腸障害が現れる可能性があることが示唆されている[90-93]。
サプリメントや医薬品から20mg/kgを超える鉄分(体重150ポンド(約68kg)の人の場合、鉄分約1,365mg)を急性摂取すると、腸の腐食性壊死を引き起こし、体液や血液の損失、ショック、組織損傷、臓器不全につながる可能性がある。特に、鉄分摂取と同時に食物を摂取していない場合、その可能性は高い[89]。重篤な症例(例えば、体重150ポンド(約68kg)の人が60mg/kgの鉄分、つまり約4,090mgを一度に摂取した場合)では、鉄分の過剰摂取により多臓器不全、昏睡、痙攣、さらには死に至る可能性がある[27,94]。
1983~2000年の間に、高用量の鉄(36-443mg鉄/kg体重)を含むサプリメントの摂取により、少なくとも43人の米国の小児が死亡した [27]。1983年から1991年の間に米国で報告された小児の中毒死の約3分の1は、鉄分サプリメントの誤飲によるものだった。
1997年、FDAは1回の摂取量あたり30mg以上の元素鉄を含む経口サプリメントに対し、1回分ずつの包装と強い警告表示を義務付ける規制を開始した。同時に、多くの製造業者が自主的に鉄剤の糖衣をフィルムコーティングに変更した。1998~2002年の間に、鉄含有錠剤の摂取による小児の死亡は1件しか報告されていない [27]。裁判所の判決の結果、FDAは2003年に鉄分サプリメントの単回投与包装要件を撤廃した[95]。FDAは現在、固形で販売される鉄含有ダイエタリーサプリメント(例えば、錠剤またはカプセルだが、粉末ではない)には、以下のラベル文を記載することを義務づけている。「警告:鉄含有製品の偶発的な過剰摂取は、6歳未満の子供の致命的な中毒の主な原因です。本製品は子供の手の届かないところに保管してください。誤って過剰摂取した場合は、直ちに医師または毒物管理センターに連絡してください。」 [96]さらに、1978年以来、米国の消費者製品安全委員会(Consumer Product Safety Commission)は、偶発的な中毒を防ぐために、容器あたり250mg以上の元素鉄を含むダイエタリーサプリメントを、小児用の耐性のあるボトルや包装に入れることを製造業者に要求している [97,98]。
血色素症は、血色素症(HFE)遺伝子の変異によって引き起こされる疾患で、体内に鉄が過剰に蓄積されることに関連している [3,39,99]。白人の約10人に1人が最も一般的なHFE突然変異(C282Y)を持っているが、この突然変異がホモ接合でヘモクロマトーシスになる白人は1,000人あたり4.4人しかいない [100]。他の民族では、この症状はずっと少ない。定期的なキレーションや瀉血による治療を行わないと、遺伝性ヘモクロマトーシスの患者は一般的に30代までに鉄中毒の徴候を示すようになる [3]。これらの影響には、肝硬変、肝細胞がん、心疾患、膵臓機能低下などがある。米国肝臓病学会(American Association for the Study of Liver Diseases)は、ヘモクロマトーシスの治療には、鉄分とビタミンCのサプリメントを避けることを推奨している [39]。
FNBは、鉄塩の補助摂取による胃腸への影響に関連する鉄分の量に基づいて、食品およびサプリメントからの鉄分のULを設定している(表3参照)。ULは、健康な乳児、小児、成人に適用される。鉄欠乏性貧血の患者が鉄貯蔵量を補給するために高用量を必要とする場合など、医師はULより高い摂取量を処方することがある[5]。
年齢 | 男性 | 女性 | 妊娠 | 乳婦 |
---|---|---|---|---|
生後0〜6カ月 | 40 mg | 40 mg | ||
生後7~12カ月 | 40 mg | 40 mg | ||
1~3歳 | 40 mg | 40 mg | ||
4~8歳 | 40 mg | 40 mg | ||
9~13歳 | 40 mg | 40 mg | ||
14~18歳 | 45 mg | 45 mg | 45 mg | 45 mg |
19歳以上 | 45 mg | 45 mg | 45 mg | 45 mg |
医薬品との相互作用
鉄は特定の医薬品と相互作用することがあり、医薬品の中には鉄の濃度に悪影響を及ぼすものがある。以下に例を記載する。これらの医薬品やその他の薬を常用している人は、鉄分の状態について今かかっている医療機関※に相談する必要がある。
レボドバ(Levodopa)
健康な人の場合、鉄剤はパーキンソン病やむずむず脚症候群の治療に使われるレボドパ(SinemetおよびStalevoに含まれる)の吸収を、おそらくキレート作用によって低下させることを示す一部のエビデンスがある [101-103]。米国では、レボドパのラベルに、鉄分を含むダイエタリーサプリメントは体内で利用できるレボドパの量を減らし、その結果、臨床効果を減少させる可能性があると警告されている [104,105]。
レボチロキシン(Levothyroxine)
レボサイロキシン(レボトロイド、レボキシル、シントロイド、チロシント、ユニトロイド)は、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺がんの治療に使用される。鉄分とレボチロキシンを同時に使用すると、患者によってはレボチロキシンの効果が臨床的に著しく低下する可能性がある [106]。これら一部の製品の[107,108]のラベルは、鉄分サプリメントがレボチロキシン錠剤の吸収を低下させることがあると警告し、鉄分サプリメントの摂取後4時間以内にレボチロキシンを投与しないよう忠告している。
プロトンポンプ阻害剤
食事からの非ヘム鉄の吸収には、胃酸が重要な役割を果たす。ランソプラゾール(Prevacid)やオメプラゾール(Prilosec)などのプロトンポンプ阻害剤は、胃内容物の酸性度を下げるため、鉄分の吸収を低下させる可能性がある [3]。プロトンポンプ阻害薬による治療を10年まで継続しても、鉄貯蔵量が正常な人では鉄欠乏や貧血とは関連しないが [109] 、プロトンポンプ阻害薬を服用している鉄欠乏症の患者では、鉄補給に対する反応が不十分となる可能性がある [110]。
鉄と健康的な食生活
連邦政府の「2020–2025 Dietary Guidelines for Americans(2020-2025年版 米国の食事指針)」では、「食品は健康に役立つさまざまな栄養素やその他の成分を提供するため、栄養ニーズは主に食品を通して満たす必要がある。…場合によって、強化食品やダイエタリーサプリメントは、他の方法では1つまたは複数の栄養素の必要量を満たすことができない場合(例えば、妊娠などの特定のライフステージ)に有用である。」と記載されている。
健康的な食生活の構築についての詳細は、「Dietary Guidelines for Americans(米国の食事指針)」 [英語サイト]と米国農務省の「MyPlate(私の食事)」 [英語サイト]をご覧ください。
「Dietary Guidelines for Americans(米国の食事指針)」では、健康的な食生活を以下のように説明している。
- さまざまな野菜、果物、穀物(少なくとも半分が全粒粉)、無脂肪および低脂肪の牛乳、ヨーグルト、チーズ、油脂を含む。
- インスタント朝食シリアルには鉄が強化されたものがあり、一部の果物や野菜も鉄を含むものがある。
- 赤肉、鶏肉、卵、魚介類、豆・エンドウ・レンズ豆、ナッツ・種子、大豆製品など、さまざまなタンパク質食品を含む。
- 牡蠣および牛レバーには多くの鉄が含まれている。牛肉、カシューナッツ、ひよこ豆、イワシは鉄供給源として良い食物である。鶏肉、マグロ、卵には鉄が含まれている。
- 糖分、飽和脂肪、ナトリウムを多く含む食品や飲料を制限する。
- アルコール飲料を制限する。
- 1日に必要なカロリーの範囲内に収まっている。
(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)
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更新日:2025年6月19日
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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