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海外の情報

変形性関節症に対するグルコサミンとコンドロイチン
Glucosamine and Chondroitin for Osteoarthritis

[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版最終アクセス確認日:2024年12月

変形性関節症とは何か?

変形性関節症は、関節内の軟骨やその他の組織が破壊されたり、構造が変化したりする変性性関節疾患である。症状としては、疼痛、関節のこわばり、腫れ、関節の動かしにくさなどがある。変形性関節症に最も頻繁に侵される関節は、膝、腰、手などである。

変形性関節症が完治する治療法はないが、さまざまな治療法や自己管理戦略(体重を減らす、運動量を増やすなど)が症状の管理に有用である。

米国では3200万人以上の成人が変形性関節症である。リスク(危険)は年齢とともに増加する。関節の損傷、肥満、変形性関節症の家族の既往歴もリスク(危険)を高める。

グルコサミンとコンドロイチンとは?

グルコサミンとコンドロイチンは、関節を構成する軟骨の成分である。グルコサミンは、軟骨の構造の一部であるグリコサミノグリカンと呼ばれる分子の構成要素である。コンドロイチンは軟骨の成分であり、軟骨の圧縮に対する抵抗力を担っている。

グルコサミン(グルコサミン硫酸塩またはグルコサミン塩酸塩として)とコンドロイチン(コンドロイチン硫酸塩として)は、別々または一緒に、ダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け)として米国で販売されている。他のいくつかの国では、グルコサミンとコンドロイチンの特定の製剤が処方薬として販売されている。2017年の米国調査では、変形性関節症と診断された35歳以上の人々が最もよく使用しているサプリメントは、コンドロイチン(グルコサミンとの併用または非併用)であった。

グルコサミンとコンドロイチンは変形性膝関節症の症状に有効か?

変形性膝関節症患者の疼痛や関節機能に対するグルコサミンとコンドロイチンの使用については、単独または併用でかなりの量の研究がなされているが、研究の結果は一貫しておらず、専門家によるエビデンスの評価も相反する結論に達している。グルコサミンとコンドロイチンが変形性膝関節症の症状に有効かどうかは、まだはっきりしていない。

2018年に報告された変形性膝関節症の患者を対象とした29件の研究(総参加者数6,120例)の統合解析では、グルコサミンまたはコンドロイチンを単独で摂取した場合、全身の痛みは有意に軽減されたが、2つの併用では軽減されなかった。個々の研究結果には一貫性がなく、大きな効果を示すものもあれば、そうでないものもあった。

グルコサミン

2014年に解析された変形性膝関節症に対するグルコサミンの単独摂取に関する25件の研究(参加者3,458例)では、個々の研究結果にパターンがあることが示された。グルコサミン製剤を処方薬として使用した人は、そうでない人よりも一般的に良好な結果を示した。このパターンは、製品による効果の真の違いを反映している可能性もあるが、バイアスの結果である可能性もある。処方薬の製剤に関する研究のほとんどは、研究デザインに弱点があり、20年以上前に公表され、製薬会社から資金提供を受けていたため、バイアスのリスク(危険)が高かった。

米国やその他の国々の医療専門機関が公表している診療ガイドラインでは、グルコサミンに関する推奨事項が異なっている。2019年に公表された米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)と関節炎財団(Arthritis Foundation:AF)のガイドラインでは、変形性膝関節症に対するグルコサミンの単独使用またはコンドロイチンとの併用について、最良のデータでは重要なベネフィット(有益性)は示されないとして、使用しないことを強く推奨している。同様に、2019年に公表された変形性膝関節症学会(Osteoarthritis Research Society International:OARSI)のガイドラインでは、有効性がないという理由で、変形性膝関節症に対してグルコサミンを使用しないことを強く推奨している。

対照的に、2021年に公表された米国整形外科学会(American Academy of Orthopaedic Surgeons:AAOS)のガイドラインでは、軽度から中等度の変形性膝関節症患者の疼痛軽減と機能改善に役立つ可能性のあるダイエタリーサプリメントのリストにグルコサミンを含めているが、エビデンス(科学的根拠)には一貫性がないと注意を促している。2019年に公表された欧州骨粗鬆症・変形性関節症・筋骨格系疾患臨床経済学会(European Society for Clinical and Economic Aspects of Osteoporosis, Osteoarthritis and Musculoskeletal Diseases:ESCEO)の声明では、変形性膝関節症に対する結晶グルコサミン硫酸塩の処方を強く推奨しているが、他のグルコサミン製剤の使用は推奨していない。

コンドロイチン

2019年に解析された変形性関節症に対するコンドロイチンの単独摂取に関する18件の研究(参加者3,791例)のうち16件が変形性膝関節症に関するものであった。バイアスのリスク(危険)の低い研究のみを解析に含めたところ、コンドロイチンの銘柄によって有意差があり、特定の医薬品グレードの製剤がより大きな疼痛軽減を示した。

臨床診療ガイドラインでは、コンドロイチンに関する推奨事項が異なっている。2019年に公表されたACR/AFガイドラインでは、膝の変形性関節症に対してコンドロイチン単独またはグルコサミンとの併用で使用しないことを強く推奨している。また、2019年に公表されたOARSIガイドラインでは、エビデンスの質が低いことを根拠に、膝の変形性関節症に対してコンドロイチンは使用しないことを強く推奨している。しかし、2021年に公表されたAAOSガイドラインでは、軽度から中等度の変形性膝関節症患者の疼痛軽減と機能改善に有用と思われるダイエタリーサプリメントのリストにコンドロイチンを含めているが、そのエビデンスには一貫性がないと注意を促しており、2019年に公表されたESCEO声明では、変形性膝関節症に対するコンドロイチン硫酸の処方を強く推奨し、他のコンドロイチン製剤とは区別すべきであると述べている。

グルコサミンとコンドロイチンは変形性膝関節症の関節構造に影響を及ぼすか?

グルコサミンとコンドロイチンは軟骨の成分であるため、変形性関節症の関節構造に影響を与える可能性が示唆されており、関節裂隙の変化を見ることで評価することができる。グルコサミンとコンドロイチンが実際に関節構造に影響を及ぼすかどうかは不明である。研究結果は一貫していない。

変形性膝関節症に対するグルコサミンとコンドロイチンの2年間にわたる大規模な臨床試験が2件、オーストラリアと米国でそれぞれ実施されたが、関節裂隙への影響については相反する結果が出た。

  • 2015年に公表されたオーストラリアの研究では、グルコサミン硫酸塩、コンドロイチン、グルコサミンとコンドロイチンの両方、またはプラセボを2年間投与された参加者605例が含まれている。グルコサミンとコンドロイチンの両方を投与された群では、関節裂隙の狭小化が減少した。グルコサミン単独投与群とコンドロイチン単独投与群では、関節腔の狭小化は認められなかった。
  • 2008年に公表された米国での研究では、参加者572例がグルコサミン塩酸塩、コンドロイチン、グルコサミンとコンドロイチンの両方、医薬品のセレコキシブ、またはプラセボを2年間投与された。関節裂隙の幅の変化は、プラセボ群とその他の群との間に差はなかった。

コンドロイチン単独を対象とした、2件の2年間の追加研究(参加者はそれぞれ622例と300例)では、コンドロイチンを摂取している人はプラセボを摂取している人に比べて関節裂隙の改善が認められた。しかし、これらの知見は、前述のオーストラリアとアメリカの研究結果とは相反するものであり、どちらもコンドロイチン単独での有益な効果を認めていない。

グルコサミンとコンドロイチンは他の関節の変形性関節症にも有効か?

膝以外の関節の変形性関節症に対するグルコサミンやコンドロイチンのエビデンスはわずかである。これまで研究されてきた関節には、股関節、手、顎関節(あごと側頭部をつなぐ関節で、会話、咀嚼、あくびなどに関与する)がある。

変形性股関節症

2017年に米国整形外科学会(American Academy of Orthopaedic Surgeons)が公表した変形性股関節症の管理に関する診療ガイドラインでは、中程度の強さのエビデンスによって変形性股関節症に対するグルコサミン硫酸塩の使用を支持しないと結論づけた。この結論は、同定された1件の質の高い研究に基づいている。この研究は2008年に公表されたもので、参加者222例がグルコサミン硫酸塩またはプラセボによる2年間の治療を受けた。グルコサミンは、疼痛、関節機能、関節構造(関節裂隙の狭小化として評価)に対する有用性という点ではプラセボよりも優れていなかった。

手の変形性関節症

参加者162例を対象としたある研究では、変形性手関節症に対するコンドロイチンが評価されている。この6カ月間の試験では、コンドロイチン投与群の方がプラセボ投与群よりも手の痛みが減少し、手の機能が大きく改善した。

2019年に公表された米国リウマチ学会(American College of Rheumatology)と関節炎財団(Arthritis Foundation)による変形性関節症管理ガイドラインでは、手の変形性関節症患者にコンドロイチンを条件付きで推奨している。

顎関節変形性関節症

変形性顎関節症に対するグルコサミンに関する8件の研究(参加者538例)のレビューでは、グルコサミンサプリメントがこの疾患の症状に有用かどうかについて、明確な結論を出すことはできなかった。それぞれの研究のグルコサミンの種類や使用方法が異なっていたため、比較は困難であった。しかし、レビューアらは、グルコサミンを3カ月以上使用することで、疼痛が軽減され、最大開口率が改善したと結論付けている。

グルコサミンとコンドロイチンは安全か?

変形性関節症に対するグルコサミンとコンドロイチンの大規模な研究では、安全性に関する大きな問題は確認されていない。しかし、グルコサミンは人によっては血糖値の上昇を引き起こす可能性があり、また、グルコサミンとコンドロイチンは、抗凝固剤であるワルファリンを服用している人の出血リスク(危険)の上昇に関連している。妊娠中や授乳中のグルコサミンとコンドロイチンの安全性については、ほとんどわかっていない。

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参考文献

その他の参考文献
  • Chondroitin. Drugs and Lactation Database. (LactMed). National Institute of Child Health and Human Development. Updated May 2021. Accessed at ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK501855/ on June 20, 2023.
  • Glucosamine. Drugs and Lactation Database. (LactMed). National Institute of Child Health and Human Development. Updated May 2021. Accessed at ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK501868 on June 20, 2023.
  • Hatfield J, Saad S, Housewright C. Dietary supplements and bleeding. Proceedings (Baylor University, Medical Center). 2022;35(6):802-807.
  • Hochberg MC. Structure-modifying effects of chondroitin sulfate in knee osteoarthritis: an updated meta-analysis of randomized placebo-controlled trials of 2-year duration. Osteoarthritis and Cartilage. 2010;18:S28-S31.
  • MedlinePlus. Temporomandibular Joint Dysfunction. Accessed at medlineplus.gov/temporomandibularjointdysfunction.html on July 18, 2023.
  • Wandel S, Jüni P, Tendal B, et al. Effects of glucosamine, chondroitin, or placebo in patients with osteoarthritis of hip or knee: network meta-analysis. BMJ. 2010;341:c4675.

謝辞

NCCIHは、この出版物の2023年版からの更新における貢献に対して次の人に感謝します。D. Craig Hopp, Ph.D., and David Shurtleff, Ph.D., NCCIH

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更新日:2025年6月19日

監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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