海外の情報
紅麹
Red Yeast Rice
[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版最終アクセス確認日:2024年12月
紅麹(Red Yeast Rice)とは?
紅麹は、米に酵母を付着させて発酵させることで製造されます。酵母は通常、 ベニコウジカビ(Monascus purpureus)です。
使用する麹菌や発酵条件によっては、麹菌がモナコリンK(monacolin K)を含むモナコリンと呼ばれる物質を米に豊富に含ませることができます。モナコリンKは、医薬品のロバスタチンと構造的に同じです。
ロバスタチンは、他のスタチン系薬剤と同様に、体内でのコレステロールの生成を遅らせ、動脈壁に蓄積して心臓や脳、その他の部位への血流を阻害するコレステロールの量を減少させるのに有用です。スタチン系薬剤は、食事療法、減量、運動療法と併用して、心臓発作や脳卒中のリスク(危険)を低減するために使用されます。
紅麹は、食品、中国の伝統医学、ダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)やその他の製品などで提供されています。
モナコリンKは紅麹にどのくらい含まれていますか?
伝統的な紅麹に含まれているモナコリンK(ロバスタチン)は微量かもしれません。
市販の紅麹製品には、微量のモナコリンKが含まれるもの、もしくはモナコリンKがほとんど検出されないものもありますが、大量のモナコリンKが検出される製品もあります。一部の研究者らは、市販のロバスタチンが一部の紅麴製品に違法に添加されていると報告しています。
紅麴製品に含まれるモナコリンKの量を消費者が知ることは不可能です。モナコリンKとロバスタチンの含有レベルは、通常、製品ラベルに記載されていません。2017年に報告されたレビューでは、米国の主流小売業者の紅麴製品28ブランドを解析したところ、どの製品もモナコリンKの量をラベルに記載していませんでした。モナコリンKは2ブランドで検出されず、モナコリンKを含む26ブランドでは、紅麴1,200mgあたり0.09~5.48mgと60倍以上の幅で検出されました。
米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)は、紅麴製品をどのように規制していますか?
FDAによると、モナコリンKと構造的に同一のロバスタチンの働きを強化し、添加した紅麴製品は、米国でダイエタリーサプリメントとして販売することはできません。この規制は、ロバスタチンが食品やダイエタリーサプリメントとして販売される前に、FDAが新薬として承認したことに基づいています。
FDAは幾度にわたって、ロバスタチンの働きを強化し添加した紅麴製品を販売する企業に対して警告書を送り、違反行為を是正するよう指示してきました。
紅麴製品は効力がありますか?
モナコリンKを多量に含む紅麴製品は、血中コレステロール値、血糖値、血圧を効果的に低下させるかもしれません。また、メタボリックシンドロームの人の心臓病や死亡のリスク(危険)を低減するかもしれません。(メタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性症候群とも呼ばれ、心疾患、糖尿病、脳卒中のリスク(危険)を高める疾患群です)。しかし、モナコリンKの含有量が多いため、これらの製品はFDAによって未承認新薬とみなされ、米国では合法的に販売されていません。
他の紅麴製品にはモナコリンKがほとんど含まれていないかもしれません。そしてこれらの製品がコレステロール値の低下や他の健康分野の改善に有効であるかどうかは明らかにされていません。一部の製品では、臨床試験でコレステロールを低下させることが知られているレベル以下のモナコリンKを使用しています。
紅麴製品は安全ですか?
2019年の臨床試験のシステマティックレビューでは、様々な数値のモナコリンKを含む紅麴製品は安全であると示唆されています。しかし、それは2018年に欧州食品安全機関(European Food Safety Authority:EFSA)が、紅麴製品に含まれるモナコリンKへの曝露が重篤な副作用を引き起こす可能性があると結論づけたことに反しています。EFSAの識者は、紅麴製品に含まれるモナコリンの食事に含まれても安全な数値を特定することができませんでした。
紅麴製品で考えられる副作用は何ですか?
モナコリンKを大量に含む紅麴製品は、筋肉、腎臓、肝臓へのダメージなど、スタチン系薬剤と同様の潜在的副作用があるかもしれない。また、消化器系の問題(下痢、悪心、胃痛など)やその他の報告された副作用を引き起こすかもしれない。
紅麴製品はスタチン系薬剤と同様の薬物相互作用があるため、特定の薬剤に干渉したり、副作用が現れる可能性を高めたりする可能性があります。
紅麴製品には、他に安全性に関する懸念はありますか?
はい。紅麴製品の中には、シトリニンという毒性があり、腎臓にダメージを与える可能性のある汚染物質が含まれているものがあります。
2021年に37の紅麴製品を解析したところ、シトリニン値が現在EU(欧州連合、European Union)で設定されている最大値を下回ったのは1つだけでした。また、シトリニンが混入していた4製品に"シトリニンフリー"と表示されていました。
紅麴製品は妊娠中でも安全ですか?
妊娠中や授乳中の紅麴製品の安全性については、研究されていません。紅麴製品は、妊娠中や授乳中の方にはお勧めできません。
関連するファクトシート
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参考文献
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謝辞
NCCIHは、この出版物の2022年版からの更新における貢献に対して次の人に感謝します。D. Craig Hopp, Ph.D., and David Shurtleff, Ph.D., NCCIH
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監訳:大野智、的場千佳(島根大学) 翻訳公開日:2025年6月19日
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