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葉酸・葉酸塩
Folate/Folate acid

- 写真に掲載している食材の成分表一覧
[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版最終アクセス確認日:2024年12月
このファクトシートは医療関係者向けです。一般的な概要については、 一般向けファクトシートをご覧ください。
はじめに
葉酸塩は、水溶性のビタミンBで、食品には自然に含まれたり、人工的に添加されたりするほか、ダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)としても利用されている。「葉酸塩」は、以前は「フォラシン」、時には「ビタミンB9」とも呼ばれ、天然由来の食品葉酸塩と、ダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)や強化食品に含まれる葉酸塩の総称であり、葉酸も含む。食品中の葉酸塩はテトラヒドロ葉酸(tetrahydrofolate:THF)の形態で存在し、通常は複数のグルタミン酸残基を有してポリグルタミン酸を形成する。葉酸は、強化食品やほとんどのダイエタリーサプリメントに使用されているビタミンの完全酸化型モノグルタミン酸型である。一部のダイエタリーサプリメントの中には、モノグルタミル型の5-MTHF(L-5-MTHF、5-MTHF、L-メチルフォレート、メチルフォレートとも呼ばれる)の葉酸塩を含むものもある。
葉酸塩は、核酸(DNA、RNA)の合成やアミノ酸の代謝において、炭素1個の移動の補酵素または副基質として機能する[1-3]。葉酸塩に依存する最も重要な反応の一つは、重要なメチル基供与体であるS-アデノシルメチオニンの合成におけるホモシステインからメチオニンへの変換である。また、葉酸塩に依存する反応として、DNAを形成する際にデオキシウリジル酸をチミジル酸にメチル化することが、細胞分裂を正常に行うために必要であることが挙げられる。この反応に障害が生じると、葉酸塩欠乏の特徴の一つである巨赤芽球性貧血につながる可能性がある[4]。
食品由来の葉酸塩は、摂取すると腸内でモノグルタミン酸型に加水分解され、腸粘膜を通過する能動輸送によって吸収される[2]。また、薬理学的用量の葉酸が消費された場合にも受動的拡散が起こる。血流に入る前に、ジヒドロ葉酸還元酵素がモノグルタミン酸型をTHFに還元し、メチル型またはホルミル型に変換する[1]。血漿中の葉酸塩の主な形態は5-MTHFである。
ジヒドロ葉酸還元酵素の活性は個人差が大きい[3]。ジヒドロ葉酸還元酵素の能力を超えると、代謝されない葉酸が血中に存在することがある[1,5,6]。未代謝の葉酸に生物学的活性があるか、葉酸塩の状態のバイオマーカーとして利用できるかどうかは不明である[7]。葉酸塩は大腸内の微生物叢によっても合成され、大腸を通して吸収されることがある。ただし、大腸で生成される葉酸塩が体内の葉酸状態にどの程度寄与しているかは不明確である [8]。葉酸塩の体内総量は15~30mgと推定され、その約半分は肝臓に、残りは血液や体内組織に貯蔵される[1]。
血清中葉酸塩濃度は、葉酸塩の状態を評価するために一般的に使用され、3ng/mL以上の値は適切であることを示す [1,2,9]。しかし、この指標は直近に摂取した食事由来の葉酸塩摂取量に感応するため長期間の状態を反映していない可能性がある。赤血球中の葉酸塩濃度は、長期的な葉酸摂取量を測定する指標となる。140 ng/mL以上の濃度は、葉酸塩が十分に摂取されていることを示す[2,3,7,9]。
血清または赤血球の葉酸塩濃度と代謝機能の指標を組み合わせて、葉酸塩の状態を評価することも可能である。5-MTHFの欠乏により体がホモシステインをメチオニンに変換できなくなるとホモシステイン値が上昇するため、血漿ホモシステイン値は葉酸塩状態の機能指標としてよく使われる[9]。しかし、ホモシステイン値は、腎機能障害やビタミンB12などの微量栄養素の欠乏など、他の要因の影響を受けることがあるため、葉酸塩の状態を示す指標としての特異性は高くない[1,3,9,10]。ホモシステイン値上昇のカットオフ値として最もよく使われるのは16μmol/Lだが、それよりやや低い12~14μmol/Lも使われている[2]。ホモシステイン濃度のカットオフ値として10μmol/Lで、集団における葉酸塩の状態を評価することが提案されている[3]。
推奨摂取量
米国科学アカデミー医学研究所(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine)の食品栄養委員会(Food and Nutrition Board:FNB)が設定した食事摂取基準(Dietary Reference Intake:DRI)には、葉酸塩や他の栄養素の推奨摂取量が提示されている[2]。DRIは、健康な人の栄養摂取の計画と評価に関する一連の基準値に対する総称である。これらの基準値は年齢や性別によって異なり、次のような項目がある。
- 推奨所要量(推奨量、Recommended Dietary Allowance、RDA):ほぼすべて(97%~98%)の健康な人の栄養所要量を満たすのに十分な1日あたりの平均摂取量であり、個人の栄養的に適切な食事を計画する際によく用いられる。
- 適正摂取量(目安量、Adequate Intake:AI):このレベルの摂取は、栄養の適切性を確保するために想定されており、RDAを策定するためのエビデンス(科学的根拠)が不十分な場合に設定される。
- 推定平均必要量(Estimated Average Requirement:EAR):健康な人の50%の必要量を満たすと推定される1日の平均摂取量。通常、集団の栄養摂取量を評価し、栄養的に適切な食事を計画するために使用される。また、個人の栄養摂取量の評価にも使用可能である。
- 許容上限摂取量(上限量、Tolerable Upper Intake Level:UL):健康への悪影響はないと思われる1日の最大摂取量
表1は、最新の葉酸塩のRDAを食事性葉酸塩当量(dietary folate equivalent:DFE)マイクログラム(μg)で列挙している。FNBは、葉酸の方が食品由来の葉酸塩よりもバイオアベイラビリティー(生物学的利用能)が高いことを考慮してDFEを設定している。食品と一緒に摂取した場合、葉酸のバイオアベイラビリティー(生物学的利用能)は少なくとも85%と推定されるが、食品中に自然に存在する葉酸塩のうちバイオアベイラビリティは約50%に過ぎない[1,2,4]。これらの値に基づいてFNBはDFEを以下のように規定した。
- 1 μg DFE = 食事性葉酸塩1 μg
- 1 μg DFE = 食品と共に摂取された栄養強化食品やサプリメント由来の葉酸0.6 μg
- 1 μg DFE = 空腹時に摂取したサプリメント由来の葉酸0.5 μg
5-MTHFの形での補給葉酸塩のμg DFEをμgに換算する要因は、正式には確立されていない[11]。
FNBは、米国内の健康な母乳栄養児の平均葉酸塩摂取量に等しい値を、生後〜12カ月齢までの乳児に対する葉酸塩のAIに設定した。(表1参照)
年齢 | 男性 | 女性 | 妊娠 | 乳婦 |
---|---|---|---|---|
誕生0~6カ月* | 65 µg DFE* | 65 µg DFE* | ||
生後7~12カ月* | 80 µg DFE* | 80 µg DFE* | ||
1~3歳 | 150 µg DFE* | 150 µg DFE* | ||
4~8歳 | 200 µg DFE* | 200 µg DFE* | ||
9~13歳 | 300 µg DFE* | 300 µg DFE* | ||
14~18歳 | 400 µg DFE* | 400 µg DFE* | 600 µg DFE* | 500 µg DFE* |
19歳以上 | 400 µg DFE* | 400 µg DFE* | 600 µg DFE* | 500 µg DFE* |
* 適正摂取量(AI)
葉酸塩の供給源
食品
葉酸塩は野菜(特に濃緑色葉物野菜)、果実、果汁、ナッツ類、インゲン豆、エンドウ豆、魚介類、卵、乳製品、食肉(哺乳動物の肉)、鶏肉、および穀類(表2)などの多様な食品に含有されている(表2)[4,12]。ホウレン草、レバー、アスパラガスおよび芽キャベツは最も葉酸塩含有率が高い食品のうちの一つである。
1998年1月、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)は、神経管欠損症(neural tube defects:NTD)のリスク(危険)を低減させるため、強化パン、シリアル、小麦粉、コーンミール(トウモロコシ粉)、パスタ、米、その他の穀物製品に140 μgの葉酸/100 gを添加することを製造業者に義務付けるようになった。米国では穀類が広く消費されているため、これらの製品は米国の食生活における葉酸の重要なヨウ素供給源となっている。この強化プログラムにより、米国における葉酸の平均摂取量は約190μg/日増加しました[14]。FDAは、2016年4月には、トウモロコシ粉100 gあたり最大154 μgまで葉酸の自主的な添加を認めた[15]。
1998年11月1日以降、カナダ政府は、強化パスタ、コーンミール(トウモロコシ粉)、白小麦粉を含む多くの穀物に、100gあたり150μgの葉酸を添加することも義務づけた[6,16]。コスタリカ、チリ、南アフリカなど他の多くの国でも、葉酸の義務的な強化プログラムが制定されている [6,17]。
食品(1オンスは約28g、1カップは240ml) | 1回当たりの摂取量(mg) | %DV* |
---|---|---|
牛レバー、蒸し煮、3オンス(約85g) | 215 | 54 |
ほうれん草、茹でたもの、1/2カップ(120ml) | 131 | 33 |
ササゲ、茹でたもの、1/2カップ(120ml) | 105 | 26 |
朝食用シリアル類、1日摂取量の25%添加 ** | 100 | 25 |
白米、中粒、加熱調理、1/2カップ(120ml) ** | 90 | 22 |
アスパラガス、茹でたもの、4本 | 89 | 22 |
芽キャベツ、冷凍、茹でたもの、1/2カップ(120ml) | 78 | 20 |
スパゲティ、加熱調理、栄養強化、1/2カップ(120ml) ** | 74 | 19 |
レタス、ロメイン | 64 | 16 |
アボカド、生、薄切り、1/2カップ(120ml) | 59 | 15 |
ほうれん草、生、1カップ(240ml) | 58 | 15 |
ブロッコリ、刻み、冷凍、加熱調理、1/2カップ(120ml) | 52 | 13 |
からし菜、冷凍、刻み、茹でたもの、1/2カップ(120ml) | 52 | 13 |
パン、精白、1枚** | 50 | 13 |
グリーンピース、冷凍、茹で、1/2カップ(120ml) | 47 | 12 |
赤インゲン豆、缶詰、1/2カップ(120ml) | 46 | 12 |
小麦麦芽、大さじ2杯 | 40 | 10 |
トマトジュース、缶詰、3/4カップ(180ml) | 36 | 9 |
カニ、アメリカイチョウガニ、3オンス(約85g) | 36 | 9 |
オレンジジュース、3/4カップ(180ml) | 35 | 9 |
カブの葉、冷凍、茹でたもの、1/2カップ(120ml) | 32 | 8 |
ピーナッツ、乾煎り、1オンス(約28g) | 27 | 7 |
オレンジ、生、小1個 | 29 | 7 |
パパイヤ、生、さいの目切り、1/2カップ(120ml) | 27 | 7 |
バナナ、中1本 | 24 | 6 |
パン酵母、小さじ1/4 | 23 | 6 |
卵、全卵、固ゆで、大1個 | 22 | 6 |
カンタロープメロン、生、さいの目切り、1/2カップ(120ml) | 17 | 4 |
ベジタリアン用ベイクドビーンズ(インゲン豆を甘辛いソースで調理した料理)、缶詰、1/2カップ(120ml) | 15 | 4 |
魚、オヒョウ、加熱調理、3オンス(約85g) | 12 | 3 |
牛乳、乳脂肪1%、1カップ(240ml) | 12 | 3 |
牛ひき肉、85%赤身、加熱調理、3オンス(約85g) | 7 | 2 |
鶏むね肉、ロースト、3オンス(約85g) | 3 | 1 |
*DV=1日摂取量(Daily Value):米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)は、消費者が総合的な食生活の中で、食品やダイエタリーサプリメントの栄養素の含有量を比較するためにDVを設定した。葉酸塩に対するDVは成人とおよび4歳以上の小児で400μg DFEである[11]。(1μg DFE = 1μg天然由来葉酸塩 + (1.7 x μg葉酸)ラベルには、1食分あたりの葉酸塩含有量をμg DFEで記載し、葉酸が添加されている場合は、葉酸の量もμgで括弧内に記載しなければならない。FDAは、食品に葉酸が添加されていない限り、食品ラベルに葉酸塩含有量を記載することを義務付けていません。DVの20%以上を含む食品は、その栄養素を多く含む供給源と考えられるが、DVの低い割合の食品も健康的な食生活に寄与している。
**葉酸塩強化プログラムの一環として、葉酸を強化した。
米国農務省(The U.S. Department of Agriculture:USDA)のFoodData Central[12]では、多くの食物の栄養素含有量をリスト化し、栄養素含有量別および食物別に整理された、葉酸塩を含む食物の総合リストを提供している。
ダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)
葉酸は、マルチビタミン(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)や妊婦用ビタミンサプリメント、他のビタミンB群を含むサプリメント、葉酸のみを含むサプリメントで販売されている。一般的な摂取量は、成人用サプリメントで680~1,360 μgDFE(葉酸400~800μg)、小児用マルチビタミンサプリメントで340~680μg DFE(葉酸200~400 μg)である[18,19]。
食品と一緒に摂取された場合、サプリメント由来の葉酸の約85%が体内に吸収される[2,4]。食品と一緒に摂取しない場合、サプリメント由来の葉酸のほぼ100%が生物学的に利用可能である。
5-MTHFを含むダイエタリーサプリメントもある。一部の人々にとっては、5-MTHFの補給が葉酸よりも有益である可能性がある(下記「MTHFR多型を持つ人」を参照)[20,21]。サプリメントにおける5-MTHFのバイオアベイラビリティー(生物学的利用能)は、葉酸と同じかそれ以上である[22-27]。しかし、5-MTHFのμgとμg DFEの間の換算係数は正式に確立されていない。FDAは、葉酸と比較できるように1.7という換算係数、または1.7を超えない範囲で製造業者が独自に設定した換算係数を使用することを認めている[11]。

葉酸塩の摂取状況
2013~2014年の米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)のデータによると、米国ではほとんどの人が十分な量の葉酸塩を摂取している。食品からの葉酸塩の平均摂取量は、2~19歳の小児で1日当たり417~547μ DFEである[28]。食品由来の葉酸塩の1日平均摂取量は、20歳以上の男性で602μg DFE、女性で455μg DFEである。
ほとんどの人が十分な量の葉酸塩を摂取しているが、出産適齢期の女性や非ヒスパニック系黒人女性を含む特定のグループは、十分な葉酸塩が摂取できないリスクがある。ダイエタリーサプリメントからの摂取を含めても、14~18歳の青年期女性の19%、19~30歳の女性の17%がEARを満たしていない[29]。同様に、非ヒスパニック系黒人女性の23%が総摂取量が不十分であるのに対し、非ヒスパニック系白人女性では13%であった。
米国では成人の約35%、1~13歳の小児の約28%が葉酸を含むサプリメントを使用している[29,30]。51歳から70歳の成人は、他の年齢層よりも葉酸を含むサプリメントを摂取する傾向があります。また、非ヒスパニック系白人の使用率は、非ヒスパニック系黒人やメキシコ系米国人より高くなっている。葉酸を含むサプリメントを摂取している2歳以上の人は、そのサプリメントから平均712μgのDFEを摂取している[28]。
赤血球葉酸濃度の測定値からも、米国ではほとんどの人が適切な葉酸塩摂取状況にあることが示唆される。NHANES 2003~2006年のデータの解析によると、1~18歳の小児の0.5%未満は赤血球葉酸塩濃度が不足している[18]。この年齢層の平均濃度は、年齢、食習慣、サプリメントの使用によって、211~294ng/mLになります。成人では、赤血球葉酸塩濃度の平均値は216~398ng/mLであり、これも十分な葉酸塩の状態を示している[31]。
一部の人口集団は、葉酸を過剰に摂取する危険性がある。51~70歳の男女および71歳以上の男性の約5%は、主にダイエタリーサプリメントから葉酸を摂取しているため、葉酸の摂取量がULの1日1,000μgを超えている[29]。さらに、葉酸含有サプリメントを摂取している1~13歳の小児の30~66%が強化食品とダイエタリーサプリメントの両方からの葉酸摂取量が、1日あたり300~600μgのULを超えている[30]。ダイエタリーサプリメントから200μg/日以上の葉酸を摂取している1~8歳の小児のほぼ全員が、ULを超える総摂取量である[18]。小児における葉酸の大量摂取の長期的な影響については、ほとんど知られていない[7]。
葉酸塩の欠乏
葉酸塩の単独欠乏はまれで、葉酸塩欠乏は通常、乏しい食事、アルコール中毒、吸収不良の症状と強く関連しているため、他の栄養欠乏と併発する[4]。大型の異型核を有する有核赤血球の出現を特徴とする巨赤芽球性貧血は、葉酸塩またはビタミンB12(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)欠乏の主な臨床徴候である[1,4]。その症状は、脱力感、倦怠感、集中力低下、過敏性、頭痛、動悸、息切れなどである[2]。
葉酸塩の欠乏は、舌や口腔粘膜の痛みと浅い潰瘍、皮膚、髪、爪の色素の変化、胃腸の症状、ホモシステインの血中濃度の上昇をもたらすこともある[1,2,4,32]。
葉酸塩の摂取が不十分な女性は、神経管閉鎖障害(Neural tube defect:NTD)を持つ乳児を出産するリスクが高い[2]。また、母親の葉酸塩摂取量の不足は、低出生体重児、早産、胎児発育遅延と関連している[1,33]。
葉酸塩不足のリスク群
明らかな葉酸塩欠乏は米国ではまれであるが、一部の人では葉酸塩摂取状態が適切ではない可能性がある。以下のグループは、葉酸塩が不十分である可能性が最も高いグループである。
アルコール依存症の人
アルコール使用障害のある人は、葉酸塩が十分に含まれていない質の悪い食事をしていることが多い。さらに、アルコールは葉酸塩の吸収と肝への取り込みを妨げ、葉酸塩の分解を促進し、腎排泄を増加させる[1,4,9]。食品に葉酸が添加されていないポルトガルでの評価では、慢性アルコール中毒患者の60%以上で葉酸塩の状態が低いことが判明した[34]。1日あたり赤ワイン240ml(8液量オンス)、または1日あたりウォッカ80ml(2.7液量オンス)を2週間摂取する適度なアルコール摂取でも、健康な男性では血清葉酸塩濃度が著しく低下するが、葉酸塩適正値のカットオフ値3ng/ml以下にはならない[35]。
出産可能年齢の女性
妊娠可能なすべての女性は、NTDsやその他の出生異常のリスクを減らすために、十分な量の葉酸塩を摂取する必要がある[2,36,37]。しかし、妊娠可能な年齢の女性の中には、ダイエタリーサプリメントを摂取しても葉酸塩の量が不足する人もいる[29]。妊娠可能な年齢の女性は、多様な食事から得られる葉酸塩に加えて、ダイエタリーサプリメントや強化食品から1日400μgの葉酸を摂取する必要がある[2]。
妊婦
妊娠中は、核酸合成に関与するため、葉酸塩の需要が増加する[33]。FNBは、この需要に対応するため、妊娠していない女性の葉酸塩の推奨栄養所要量が400 μg/日であるのに対して、妊婦に対する基準値を600 μg/日まで引き上げた[2]。この摂取基準は、一部の女性にとって食事のみでは達成が難しいかもしれない。米国産科・婦人科学会(American College of Obstetricians and Gynecologists)は、葉酸やその他の栄養素を十分に摂取できるように、ほとんどの妊婦に妊婦用ビタミンサプリメントを推奨している[38]。
吸収不良のある人
複数の病状・疾患が葉酸塩欠乏症のリスクを高めている。熱帯性スプルー、セリアック病、炎症性腸疾患などの吸収不良のある人は、これらの症状のない人に比べて葉酸塩の吸収が少ない可能性がある[4]。例えば、炎症性腸疾患患者の約20~60%は葉酸塩が欠乏している[39]。萎縮性胃炎や胃の手術などに伴う胃酸分泌の低下も、葉酸塩の吸収を低下させることがある[4]。
MTHFR多型を有する人
メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子に遺伝的多型(677C>T)を有する人は、葉酸をその活性型である5-MTHFに変換する能力が低下している。これは、この変換に必要なメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素の酵素活性が低いことが原因である[21]。ヒスパニックの約25%、白人とアジア人の約10%、アフリカ系アメリカ人の1%が677C>T MTHFR 多型のホモ接合体である[27]。この多型を有すると、生物学的に利用可能な5-MTHFが少ないためメチル化能の低下をきたし、それによってホモシステイン値が上昇しNTDのリスクが増大する[1,3,20,40]。この遺伝的多型を有する人に対する葉酸塩補給の有益性に関する研究は結論が出ていないが、これらの人の中には5-MTHFの補給が有益な場合もある[20,21]。しかし、米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は、MTHFR遺伝子に677C>T多型がある場合でも、妊娠の可能性がある人に対しては、5-MTHFではなく、1日あたり400μgの葉酸を摂取することを推奨している(下記「神経管欠損症」を参照)[41]。

葉酸塩と健康
ここでは、葉酸塩が関与していると思われる7つの疾患及び症状、すなわち、自閉症スペクトラム障害、がん、心血管疾患・脳卒中、認知症・認知機能・アルツハイマー病、うつ病、神経管閉鎖障害(NTD)、早産・先天性心疾患・他の先天性異常に焦点を当てている。
自閉症スペクトラム
自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)は、他者とのコミュニケーションや相互作用が困難で、限られた興味しか持たず、繰り返し行動することを特徴とする神経発達障害である。2013年にASDの分類と診断が変更され、それまで自閉性障害、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害として知られていた疾患が含められている[42]。ASDの原因は明らかではないが、遺伝的要因や環境要因(感染症を含む)、特定の薬物、汚染物質、殺虫剤への出生前の暴露が関与していると考えられている[43-46]。
新たなエビデンスによると、妊娠期間中の葉酸補給は、ASDのリスクを減少させ、あるいは特定の薬剤や有害化学物質への出生前の曝露によるASDのリスク上昇を軽減する可能性があることが示唆されている。このような潜在的有益性のメカニズムは解明されていないものの、葉酸がDNAメチル化に果たす役割に関連している可能性があり、それが神経発達に影響を及ぼす可能性がある[47-49]。
観察研究では、母親が妊娠前や妊娠中に葉酸やマルチビタミンのサプリメントを使用することと、その子のASDリスクが低いことの関連性が示されているものもあるが、すべてではない。例えば、3.3~10.2歳の85,176例の小児を対象とした前向きノルウェー母子コホート研究(Norwegian Mother and Child Cohort Study)によると、妊娠開始4週間前から8週間までのすべての期間に1日400μgまでの葉酸を摂取した母親の子は、摂取しなかった母親の子に比べて自閉症になる確率が39%低いことがわかった[50]。しかし、アスペルガー症候群や特定不能の広汎性発達障害とサプリメントとの間には、有意な関連は認められなかった。837例の小児を対象とした米国集団ベースの症例対照研究において、妊娠1カ月目にサプリメントや強化朝食シリアルから1日平均600μg以上の葉酸を摂取した母親から生まれた子は、1日600μg未満の母親から生まれた子に比べてASDのリスクが38%低かった[51]。この関連は、677C>T MTHFR多型を持つ母子で最も強い。同様に、45,300例のイスラエルの小児を対象とした2018年の症例対照コホート研究では、妊娠前および/または妊娠中に葉酸および/またはマルチビタミンのサプリメントを摂取した母親の子におけるASDのリスクが有意に低下することが示された[52]。逆に、デンマークの妊娠中の女性とその子35,059例を対象とした集団ベースの縦断的コホートでは、妊娠前後の葉酸やマルチビタミンの使用とASDの間に関連は見られなかった[53]。
妊娠前後の葉酸の使用は、子宮内で特定の薬物や神経毒にさらされた子のASDの潜在的なリスク上昇を軽減する可能性がある[44-46]。小児104,946例を対象としてノルウェーで実施された母子コホート研究のデータ解析から、子宮内で抗てんかん薬(in vivoで葉酸塩を減少させることが知られている)に曝露した小児は、母親が妊娠前後に葉酸を摂取しなかった場合には、摂取した場合と比較して、出生後18カ月および36カ月の時点で自閉症的特性がみられる頻度が5.9~7.9倍であることが示された[44]。さらに、自閉症形質の重症度は、母親の血漿葉酸塩濃度および葉酸投与量の両方と逆相関していた。同様に、小児712例を対象とした米国の研究では、母親が妊娠期に室内用殺虫剤へ曝露し、妊娠直後1カ月間に葉酸800 μg/日以上摂取した場合、室内用殺虫剤への曝露歴がなく同量の葉酸を摂取した場合と比較して、出生児にASDが認められる可能性は1.7倍であった[45]。ASDのリスクは、屋内の殺虫剤にさらされた女性で、1日の葉酸摂取量が800μg以下であればさらに高く(2.5倍)、葉酸が殺虫剤によるASDのリスク上昇を抑制している可能性が示唆された。
全体として、現在までのエビデンスは、母親の妊娠前後の葉酸摂取量とその子のASDリスクとの間に逆相関がある可能性を示唆している。しかし、現在利用可能なデータは、すべてではないにせよ、ほとんどが観察データであり、交絡は因果関係を推論する実証力を弱めてしまう。確固たる結論を出すには、さらなる研究と他の研究での検証が必要である。
がん
複数の疫学研究で、葉酸塩の摂取量および状態と、大腸がん、肺がん、膵臓がん、食道がん、胃がん、子宮頸がん、卵巣がん、乳がん、膀胱がん、その他のがんのリスクとの間に逆相関があることが示唆されている[1,9,54,55]。葉酸塩の発がんに対する影響の正確な性質は研究によって確立されていないが、科学者らは、葉酸塩が炭素の一次代謝に関与し、その結果DNAに影響を与えることによって、がんの発生に影響を与える可能性について仮説を立てている[55,56]。また、葉酸塩が、がんのイニシエーションとプログレッションにおいて二重の役割を担っている可能性があることを示すエビデンスもある[57]。つまり、葉酸塩は発がんの初期にはある種のがんを抑制する可能性があるが、前がん病変が確立した後に葉酸を大量に摂取すると、がんの発生と進行を促進する可能性がある。
葉酸の補給に関する臨床試験の結果は一致していない。さらに、ほとんどの臨床試験では、他のビタミンB類(1日当たりの推奨用量を優に超える用量である場合が多い)や時には他の栄養素も含まれており、他の栄養素の効果があると、葉酸の有用性のみを分離して示すことが困難である。例えば、フランスで行われた試験では、心血管疾患の既往歴のある2,501例が、560 μgの葉酸、3 mgのビタミンB6(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)、20 μgのビタミンB12のサプリメントを毎日5年間摂取しました[58]。研究者らは、ビタミンB群の補給とがんのアウトカムの間に関連は認められなかった。ノルウェー(この国では食品に葉酸を強化していない)で実施された2試験の併合解析では、虚血性心疾患患者3,411例に中央値39カ月間にわたり葉酸(800 μg/日)+ビタミンB12(400 μg/日)を補給した結果、補給しない場合と比較して、がんの発生率が21%、がんによる死亡率が38%増加した[59]。これらのノルウェーでの試験結果から、葉酸の補給が、がんのリスクを高める可能性について懸念されるようになった。
最も徹底的な研究は、大腸がんおよびその前駆体である腺腫の発生に対する葉酸塩の有用性に焦点を当てたものである[1,55,60]。複数の疫学研究で、食事由来葉酸の高摂取と大腸腺腫およびがんのリスクとの間に逆相関があることが判明している[61-64]。例えば、米国の50~71歳の525,000例以上を対象としたコホート研究である「NIH-AARP食事と健康研究(NIH-AARP Diet and Health Study)」では、総葉酸塩摂取量が900μg/日以上の人は、200μg/日未満の人に比べて大腸がんのリスクが30%低かった[62]。しかし、他の研究では、食事由来の葉酸塩摂取量[65,66]や血中葉酸塩濃度[67,68]と大腸がんリスクとの間に相関関係は認められなかった。
複数の臨床試験では、腺腫の既往歴の有無にかかわらず、葉酸補給(一部に他のビタミンB類との併用あり)が大腸腺腫のリスクを減少させる可能性を検証している。心血管疾患リスクの高い1,470例の高齢女性が参加した女性における抗酸化物質および葉酸と心血管疾患に関する研究(Women’s Antioxidant and Folic Acid Cardiovascular Study)では、1日あたり葉酸2500 μg、ビタミンB6 50mg、ビタミンB12 1,000μgを7.3年間摂取した結果、摂取期間およびその後の約2年間のフォローアップ期間を通して、大腸腺腫の発生率に対する影響はみられなかった[69]。3件の大規模臨床試験(1試験はカナダで、1試験は米国およびカナダで、1試験はイギリスおよびデンマークで実施)の統合解析により、腺腫の既往歴のある人に最大3.5年間にわたり葉酸補給を行った結果、腺腫の再発率は増加も減少もしないことが明らかになった[70]。しかし、解析に含まれる研究の一つでは、葉酸の補給(1,000μg/日)は、大腸がんリスクには影響を及ぼさなかったが、3つ以上の腺腫を持つリスクと非大腸がんのリスクを有意に増加させた[71]。
また、上記に引用した臨床試験3件の統合解析では、葉酸補給はあらゆるがん種を総合したがん全体の発症リスクにも影響を及ぼしていなかった。同様に、ランダム化試験13件のメタアナリシスでは、がん発生率全体や大腸がん、肺がん、乳がん、前立腺がんまたはこの他のがん種の発生率に関し、平均摂取期間5.2年にわたる葉酸補給(1日摂取量の中央値は2,000μg)が、統計学的に有意な効果を有するとは示されなかった。
複数の研究では、葉酸サプリメントとがんリスク増加との関連性が見出されている。血中ホモシステイン濃度が高い65歳超の高齢者2,919例を対象に骨粗鬆症関連骨折の発生率を検討したランダム化臨床試験において、2年にわたり葉酸400μg、ビタミンB12 500μg、ビタミンD3 600IUを併用摂取した人では、ビタミンD3 600IUを単独摂取した人と比較して、がん発生率、特に大腸がんや消化器がんの発生率が有意に高かった[73]。さらに、2018年の前向き研究では、筋層非浸潤性膀胱がん患者619例において、天然に存在する葉酸塩の摂取では有意な相関はみられなかった一方、強化食品やサプリメントによる葉酸摂取は、がん再発リスクと正の相関を有することが示されている。また、血漿葉酸塩濃度の高さは、BRCA1 または BRCA2 変異を有する女性における乳がんリスクの上昇と関連している[75]。Coleらによる研究[71]の二次解析では、葉酸補給は前立腺がんの発症リスクを有意に上昇させることが示された[76]。その後の研究では、前立腺がんの男性におけるがん細胞増殖の亢進と血清中葉酸塩濃度との相関が示されている[77]。男性25,738例を対象としたランダム化比較試験6研究のメタアナリシスでは、葉酸補給を行った男性では、プラセボ摂取の男性と比較して前立腺がんの発症リスクが24%高かった[78]。
臨床試験から得られた矛盾する結果は、葉酸塩濃度の高値が腫瘍増殖を促進することを示す試験室研究や動物実験のエビデンスと併せて考察すると、葉酸塩が、摂取量および摂取の時期によってがん発症リスクに異なる2つの役割を果たしている可能性を示唆している。前がん病変の形成前に少量の葉酸を摂取すると正常組織におけるがん発生を抑制する可能性がある一方、前がん病変の形成後に高用量の葉酸を摂取した場合にはがんの発生と進行を促進する可能性がある[9,60,79-82]。この仮説は、葉酸摂取量と大腸がんリスクとの間に、腺腫前早期段階でのみ逆相関を見出した2011年の前向き研究によって支持されている[83]。
2015年に米国国家毒性プログラム(National Toxicology Program:NTP)および米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)のダイエタリーサプリメント室(Office of Dietary Supplements:ODS)が招集した専門委員会は、ベースラインの葉酸塩状態が適切な人において葉酸補給はがん発症リスクを低減しないと結論を出した。また、同委員会は、葉酸の補給が、がんの増殖に悪影響を及ぼすという一貫した人を対象とした研究結果が得られたことから、葉酸補給のがんリスクへの影響に関する追加研究が正当化されると判断した[84]。このような影響に関し、腫瘍促進効果をもたらす可能性のある葉酸補給の用量および時期やこの効果は人工的に合成された葉酸や他の葉酸塩類に特異的なのかどうかなど重要な疑問がいくつか残されている。[57]
全体として、現在までのエビデンスから、食事由来葉酸塩の適切量の摂取は、一部のがん種の発症リスクを低下させる可能性を有することが示されている。しかし、葉酸補給が、がん発症リスクに及ぼす影響は不明であり、特に大腸腺腫や他のがん種の罹患歴を有する人における影響は未知である。食品由来の葉酸塩および葉酸補給が、がん発症リスクに及ぼす影響や曝露の時期の違いによる影響の相違を十分に解明するため、さらに研究を重ねる必要がある。
心血管疾患と脳卒中
ホモシステイン値の上昇は、心血管疾患のリスク上昇と関連している[1,2]。葉酸塩およびその他のビタミンB群はホモシステインの代謝に関与しており、研究者らは、これらの微量栄養素がホモシステイン値を下げることによって心血管疾患リスクを低減するという仮説を立てている[1,85]。
葉酸(およびビタミンB12)サプリメントは、ホモシステイン値を下げる。これらのサプリメントを摂取することで脳卒中の予防効果は期待できるかもしれないが、心血管疾患のリスクは実際には低下しないことが研究により示唆されている[85-94]。例えば、心血管疾患リスクが高い42歳以上の米国人女性4,442例では、葉酸2,500μg、ビタミンB12 1mg、およびビタミンB6 50mgを含むサプリメントを7.3年間毎日摂取した結果、重度の心血管イベントのリスクは減少しなかった[89]。300例の部分集団を対象に調査した結果、サプリメント摂取による血管炎症のバイオマーカーに対する有用性は有意ではなかった[91]が、ホモシステイン値は平均18.5%低下した[89]。別の臨床試験では、葉酸添加プログラムを採用している国(アメリカ、カナダを含む)および採用していない国において、55歳以上の血管疾患または糖尿病の患者5,522例を対象とした。葉酸2,500μgとビタミンB6 50mg、ビタミンB12 1mg、またはプラセボが平均5年間投与された。プラセボと比較して、ビタミンB群の投与はホモシステイン値を有意に低下させたが、心血管系の原因による死亡や心筋梗塞のリスクは低下させなかった。しかし、サプリメントの摂取は脳卒中のリスクを25%有意に減少させた。
中国の葉酸が強化されていない地域で、脳卒中や心筋梗塞の既往歴がない高血圧の成人20,702例を対象とした大規模な試験では、800μgの葉酸とエナラプリル10mg(高血圧の治療に用いられる)を中央値4.5年間補給することにより、エナラプリル単独と比較して脳卒中のリスクが21%有意に減少した[92]。この有用性は、ベースラインの血漿葉酸塩濃度が最も低い参加者でより顕著にみられた。本試験参加者10,789例の解析から、血小板数が低値でホモシステイン濃度が高値(脳卒中リスクを上昇させる)の人では、葉酸補給によって脳卒中リスクが73%と大幅に減少するものの、血小板数が高値でホモシステイン濃度が低値の人では有意な効果はみられないことが示された[95]。これらの知見は、葉酸の補給は主に葉酸レベルが不十分な人に有効であることを示唆しており、米国などの葉酸強化国ではあまり一般的ではない[96]。
2012年に報告されたランダム化比較対照試験19件(参加者数47,921例)のメタアナリシスの著者らは、ビタミンB補給は脳卒中のリスクを12%低下させるものの、心血管疾患や心筋梗塞、冠動脈性心疾患、心血管疾患による死亡のリスクには全く影響しないと結論付けた[86]。同様に、ホモシステイン濃度低下のための介入による心血管イベントに及ぼす影響に関するコクランレビュー改訂第3版の著者らは、葉酸単剤補給またはビタミンB6とビタミンB12との併用補給は心筋梗塞および全死因死亡のリスクに影響を及ぼさないが、脳卒中リスクを低下させるとの結論に達した[97]。このほか、メタアナリシス3件からも、葉酸は脳卒中予防に有用であり、特に葉酸添加食品を未利用または一部利用する集団において有用性がみられることが示されている[94,98,99]。
全体として、利用可能なエビデンスは、葉酸単独または他のビタミンB群との併用による補給が特に葉酸の状態が低い集団において、脳卒中のリスクを減少させるが、他の心血管系のエンドポイントには影響を与えないことを示唆している。
認知症、認知機能、アルツハイマー病
現在までに実施されたほとんどの観察研究では、ホモシステイン値の上昇とアルツハイマー病および認知症の発生率との間に正の相関があることが示されている[32,79,100-104]。研究者らは、ホモシステイン値が高値であると、神経細胞死をきたす脳血管虚血や濃縮体の蓄積を引き起こすタウキナーゼの活性化、メチル化反応の抑制などの多くの機序を通じて脳に悪影響する可能性があるという仮説を主張している[103]。また、すべてではないが、いくつかの観察研究では、血清葉塩酸濃度の低さと認知機能の低下、認知症やアルツハイマー病のリスクの高さとの間に相関があることが判明している[79,100,101,103,105]。
ここのようなエビデンスがあるにもかかわらず、ほとんどの臨床試験研究では、葉酸の補給がホモシステイン値を下げるにもかかわらず、認知機能または認知症やアルツハイマー病の発症に影響を与えることは示されていない。オランダで行われたあるランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、認知機能障害が認められないか軽度である70歳以上の参加者195例が、葉酸(400 μg)+ビタミンB12(1 mg)、ビタミンB12 (1 mg)、またはプラセボの3種類のうちいずれかを24週間摂取した[106]。葉酸とビタミンB12の投与は、ホモシステイン濃度を36%低下させたが、認知機能の改善はみられなかった。ホモシステイン値が高い高齢者(平均年齢74.1歳)を対象とした別の臨床試験では、400μgの葉酸と500μgのビタミンB12および600IUのビタミンD3を2年間補給すると、600IUのビタミンD3単独と比較してホモシステイン値が低下したが認知能力には影響がなかった[107]。
「女性における抗酸化物質および葉酸と心疾患に関する研究(Women’s Antioxidant and Folic Acid Cardiovascular Study)」の一部として、心血管疾患のリスクが高い65歳以上の米国人女性2,009例を、葉酸(2500 μg)+ビタミンB12(1 mg)+ビタミンB6(50mg)を含むサプリメント、あるいはプラセボを毎日摂取する群に無作為に割り付けた[108]。平均1.2年後、ビタミンB群の補給は、プラセボと比較して、ベースラインからの平均認知力変化に影響を与えなかった。しかし、食事由来のビタミンB群の摂取量が少ない女性の一部では、サプリメントの摂取により認知機能の低下速度が有意に遅くなった。米国で軽度から中等度のアルツハイマー病の患者340例を対象とした試験では、5,000 μgの葉酸と1 mgのビタミンB12および25 mgのビタミンB6を毎日18カ月間補給しても、プラセボと比較して認知機能の低下を遅らせなかった[109]。
オーストラリアで行われた研究(研究当時は葉酸の強化が義務付けられていなかった)の二次解析によると、うつ症状を持つ60~74歳の成人900例を対象に、400μgの葉酸と100μgのビタミンB12を毎日2年間補給したところ、認知機能のいくつかの指標、特に記憶力が改善したことがわかった[110]。別のメタアナリシスでは、20,000例以上の高齢者(平均年齢60~82歳)を対象とした11件のランダム化比較試験が含まれ、葉酸400~2,500μgとビタミンB12 20~1,000μg(10件)とビタミンB6 3~50mg(8件)が0.3~7.1年間投与された。このサプリメントはホモシステイン値を有意に低下させたが、認知老化、グローバルな認知機能、特定の認知領域(記憶、スピード、実行機能など)には影響を与えなかった[111]。
複数の大規模レビューで、認知機能に対するビタミンB群の有用性が評価されている。ほとんどの著らは、葉酸単独またはビタミンB12やB6との併用による補給は、認知障害の有無にかかわらず、認知機能を改善しないようだと結論づけている[112-115]。しかし、一部の研究者らは、ベースラインのホモシステイン値およびビタミンB摂取状況を考慮した場合、認知機能低下のハイリスク群においてビタミンB補給は認知機能低下を遅らせたと指摘している[103,104]。例えば、オランダで行われた1試験では、ホモシステイン値が高値(13 μmol/L以上)でビタミンB12濃度が基準値にある50~70歳の818例を対象に、葉酸800 μgまたはプラセボのいずれかを3年間投与した[116]。葉酸の補給はホモシステイン値を26%低下させ、プラセボと比較して全体的な認知機能、記憶、情報処理速度を有意に改善したが、感覚運動速度、複合速度、言葉の流暢さには影響を与えなかった。
認知機能および認知機能の低下に対する葉酸補給の有用性をより良く理解するために、さらなる臨床試験が必要である。
うつ病
葉酸塩の低値は、一部の研究ではうつ病や抗うつ薬への反応不良と関連していることが示されているが、すべての研究でそうであるわけではない。考えられるメカニズムは不明だが、葉酸塩が脳内のメチル化反応、神経伝達物質合成、ホモシステイン代謝に関与しているかもしれない[117,118]。しかし、不健康な食事パターンやアルコール使用障害など、うつ病に関連する二次的な要因も、葉酸塩摂取量の低下とうつ病との間に観察される関連に寄与している可能性がある[119]。
米国の15~39歳の2,948人例を対象とした民族的に多様な集団研究において、血清および赤血球葉酸塩濃度は、うつ病を発症したことのない人に比べて、大うつ病患者で有意に低かった[119]。2005~2006年のNHANESデータの解析では、20歳以上の成人2,791例において、葉酸塩の血清濃度が高いほど、うつ病の有病率が低いことが明らかになった[117]。この関連は、女性では統計的に有意であったが、男性では有意ではなかった。しかし、別の解析では、67~84歳の健康なカナダ人1,368例を対象に、食品とダイエタリーサプリメントの両方からの葉酸塩摂取量とうつ病との間に関連は見られなかった[118]。大うつ病性障害を有する男女52例を対象とした研究の結果、抗うつ剤による治療が奏効したのは、血清葉酸塩値が正常な患者では38例中17例であったのに対し、血清葉酸塩値が低値の患者では14例中1例のみであったことが示された[120]。
いくつかの研究では、葉酸塩摂取状況が妊娠期間中または分娩後のうつ病発症リスクに影響を及ぼすのか否かについて検討している。これらの研究のシステマティックレビューでは、さまざまな結果が得られてい[121]。シンガポールの女性709例を対象としたレビューに含まれる1件の研究では、妊娠26~28週の血漿葉酸塩濃度(平均40.4nmol/L [17.8ng/mL])が高い女性と比較して、血漿葉酸塩濃度(平均27.3nmol/L [12.0ng/mL])の低い女性は妊娠中のうつ病リスクが著しく高かったが産後ではなかった[122]。英国の女性2,856例を対象とした別の研究では、妊娠前または妊娠中の赤血球葉酸値や食品・ダイエタリーサプリメントからの葉酸塩摂取量と産後の抑うつ症状との間に有意な関連は見られなかった[123]。より最近では、中国人女性1,592例を対象に実施されたコホート研究により、妊娠期間中に6カ月以上葉酸サプリメントを摂取した女性では、摂取期間が6カ月未満であった女性と比較して分娩後のうつ病罹患率が低いことがわかった[124]。
葉酸の補給が、従来の抗うつ薬と併用した場合に、うつ病の補助療法として有用かどうかについては、研究によってさまざまな結果が得られている。英国で行われた臨床試験では、127例の大うつ病患者が、フルオキセチン1日20mgに加え、500μgの葉酸またはプラセボを10週間投与する群に無作為に割り付けられた[125]。男性における有用性は統計的に有意ではなかったが、女性ではフルオキセチンと葉酸を併用した場合、フルオキセチンとプラセボを併用した場合よりも有意に抑うつ症状の改善がみられた。英国で行われた別の臨床試験では、抗うつ薬を服用している中等度から重度のうつ病の成人475例が、抗うつ薬に加えて、毎日5,000 μgの葉酸またはプラセボに12週間無作為に割り付けられた[126]。葉酸を摂取した参加者では、プラセボを摂取した参加者と比較して、うつ病の指標に改善は見られなかった。大うつ病性障害患者において、フルオキセチンまたは他の抗うつ薬と葉酸(2試験で5,000μg/日未満、2試験で=5,000μg/日)を併用した4試験のシステマティックレビューおよびメタアナリシスの著者らは、セロトニン再取り込み阻害薬(serotonin reuptake inhibitor:SSRI)療法への補助として5,000μg/日未満の葉酸は有用かもしれないと結論付けた[127]。しかし著者らは、この結論は質の低いエビデンスに基づくものであると指摘している。4件の臨床試験の別のメタアナリシスでは、補助的治療として1日500~10,000μgの葉酸を6~12週間投与しても、プラセボと比較してうつ病の指標に有意な影響を及ぼさないことがわかった[128]。
他の研究では、抗うつ剤の補助療法として5-MTHF補給の有用性を検討した結果、葉酸よりも有望であるかもしれないことが示唆されている[127-130]。大うつ病性障害の成人148例を対象とした臨床試験において、5-MTHF 7,500μg/日を30日間、その後15,000 μg/日をさらに30日間、いずれもSSRI治療と併用して補給しても、SSRI治療とプラセボの併用と比較してうつ状態の指標を改善しなかった[131]。しかし、同じ研究デザインで75例の成人を対象にしたその後の試験では、15,000μg/日の5-MTHFの補給とSSRI治療を60日間続けたところ、SSRI治療とプラセボに比べ、うつ状態が有意に改善した[131]。
フルオキセチンまたは他の抗うつ剤と併用投与した5-MTHFに関する3件の試験(1試験で15,000 μg/日未満、2試験で5,000 μg/日を投与)のメタアナリシスおよびシステマティックレビューの著者らは、大うつ病性障害患者において、5-MTHF 15,000 μg/日はSSRI療法の補助として有用であるかもしれないと結論付けた。ただし、この結論は質の低いエビデンスを根拠としていると著者らは指摘している[127]。さらに、英国精神薬理学会(British Association for Psychopharmacology)[129]およびカナダのCanadian Network for Mood and Anxiety Treatments[130]のエビデンスに基づくガイドラインには、5-MTHFは抑うつ障害に対するSSRI療法の補助として有用であるかもしれないと記載している。
体内の葉酸塩状態とうつ病の関連性を完全に理解するためには、さらなる研究が必要である。葉酸塩の特定の形態と用量の補給が抑うつ障害の補助療法として有用である可能性を示唆する限定的なエビデンスがあるが、これらの知見を確認するためにはより多くの研究が必要である。さらに、うつ病の研究で使用された葉酸塩の多くはULを超える用量であり、医師の監督下でのみ摂取する必要がある。
神経管欠損症(Neural Tube Defect:NTD)
NTDでは、脊椎の奇形(二分脊椎)、頭骨の奇形および脳の奇形(無脳症)が認められる。これらの疾患は、最もよくみられる中枢神経系の重度の先天性奇形であり、受胎後21日目〜28日目に神経管の上端または下端のいずれかで閉鎖不全が生じることが原因である [132,133]。米国における二分脊椎と無脳症(NTDのうち最も一般的な2種類)の発生率は、出生児1万例に対して5.5~6.5例である[134]。
葉酸塩は、DNAやその他の重要な細胞成分の合成に関与するため、細胞が急速に増殖する時期に特に重要である[135]。そのメカニズムは完全には確立されていないが、臨床試験のエビデンスから、女性が受胎前後に葉酸を十分に摂取することで、かなりの割合のNTDが予防できることが示されている[3,81,132,133,136,137]。
米国で葉酸強化の義務化が始まった1998年以降、NTDの発生率は28%減少した[134]。しかし、人種や民族による大きな格差は依然として残っている。NTDの有病率は、ヒスパニック系女性で最も高く、非ヒスパニック系黒人女性で最も低くなっている。このような格差の要因としては、食事やサプリメントの摂取方法の違いなどが考えられ[138]、母親の糖尿病、肥満、他の栄養素(例えば、ビタミンB12)の摂取など、葉酸の状態以外の要因もNTDのリスクに影響すると考えられている[132,137,139-141]。さらに、677C>T MTHFR 多型を持つ女性は、白人、アジア人、アフリカ系米国人に比べてヒスパニック系に多く、NTDのリスクが高くなるかもしれない[1,3,27,40]。もう一つの考慮点は、NTD有病率に関するデータが、FDAがトウモロコシのマサ粉への葉酸の任意添加を承認した2016年以前に収集されたものであり[15]、ヒスパニック系住民がよく食べる食材である。この政策変更が、ヒスパニック系女性と他の集団との間のNTD発生率の格差に影響を与えたかどうかは、まだわかっていない。
米国における妊娠の約50%は予定外の妊娠であるため、妊娠を自覚する前の受胎前後の時期に十分な葉酸塩を摂取することが特に重要である。FNBは、妊娠可能な女性に対し、「多様な食事から食品由来の葉酸塩を摂取することに加え、サプリメント、強化食品、またはその両方から毎日400μgの葉酸を摂取する」ことを勧めている[2]。米国公衆衛生局(U.S. Public Health Service)および CDC も同様の推奨事項を発表している [36]。1日あたり400 μgの葉酸を摂取することで、MTHFR遺伝子多型677C>Tを有する人でも、NTDsの予防に役立つ [41]。
2017年のシステマティックレビューの著者らは、米国で葉酸の食品強化が始まる前に行われた研究において、葉酸の補給が利用者をNTDリスクを予防すると結論付けている[142]。それ以降に実施された研究では、(おそらく、食品強化の効果、研究デザインの欠陥、または不十分なサンプルサイズのために)明確な予防的関連性は示されていないが[142]、米国予防医療作業部会(U.S. Preventive Services Task Force )は、妊娠を計画している、または妊娠する可能性のあるすべての女性に対し、妊娠の少なくとも1カ月前から妊娠の最初の2~3カ月間、400~800μgの葉酸を含むサプリメントを毎日摂取することを推奨している[37]。
FNBは、NTDを有する子を出産し、再び妊娠する予定の女性に対する推奨量は設定していない。しかし、他の専門家は、これらの女性が、妊娠の少なくとも1~3カ月前から、妊娠後2カ月半から3カ月間、毎日4,000~5,000μgの葉酸のサプリメントを摂取することを推奨している[132,143]。これらの用量はULを超えるため、医師の監督下でのみ摂取する必要がある[143]。
早産、先天性心疾患、その他の先天異常
観察研究によると、葉酸の補給は平均妊娠期間を延長し、早産リスクを低下させるかもしれない[1,144]。さらに、マルチビタミンのサプリメントと組み合わせて葉酸を摂取すると、先天性心疾患のリスクを最小限に抑えることができる。これは、おそらく心組織の発達が、大量の葉酸塩を必要とする細胞に依存しているためである[1,2,132]。
1990~2011年のカナダで出生総数の約98%を対象とした大規模な集団ベースのコホート研究の著者らは、食品の葉酸強化が非染色体先天性心疾患の発生率が11%低下したと結論付けている[145]。アトランタで行われた3,987例の乳児を対象とした集団ベースの症例対照研究では、先天性心疾患は、妊娠周辺期に葉酸を含むマルチビタミン(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)を摂取した女性の乳児では、そうでない女性の乳児に比べて24%少なかった[146]。カリフォルニア州で行われた866例の乳児を対象とした症例対照研究でも、同様の結果が得られている[147]。しかし、これらの研究で得られた知見が、葉酸以外のマルチビタミンの成分に起因するかどうかは判断できない。
また、マルチビタミンサプリメントと組み合わせた葉酸の使用と、尿路異常、口腔顔面裂、四肢欠損、水頭症の出生時発生の減少との関連性が研究されているが、これらの研究結果は一貫していない[2,132]。
母親の葉酸摂取がこれらの出生時の有害アウトカムのリスクにどの程度影響するかを十分に理解するためには、さらなる研究が必要である。しかし、NTDやおそらくその他の先天性異常の予防に葉酸が果たす役割は確立されており、妊娠期間中の葉酸の重要性が再認識された。
葉酸塩の過剰摂取による健康へのリスク
葉酸を大量に摂取すると、ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血は改善されるが、神経障害は改善されない。そのため、葉酸塩サプリメントを大量に摂取すると、ビタミンB12の乏が神経学的に不可逆的になるまで隠されるのではないかと懸念する専門家もいる。この可能性についての疑問はまだ残っているが、懸念の焦点は、大量の葉酸がビタミンB12欠乏に伴う貧血や認知症状を誘発したり悪化させたりする可能性に移っている[2,85,148-153]。
また、葉酸の高用量摂取によって、前がん病変の進行が加速し、特定の人では大腸がんリスクや他のがんの発症リスクが上昇するのではないかとの懸念が提起されている[1,3,60,80,81]。さらに、妊娠期間中にサプリメントから1日1,000μg以上の葉酸を摂取すると、400μgから999μgを摂取した母親の子よりも、4~5歳の子の認知発達に関するいくつかのテストのスコアが低くなることが分かっている[154]。
体内でTHFに還元する能力を超える葉酸の摂取は、体内で未代謝の葉酸となり、ナチュラルキラー細胞の数や活性の低下につながり、免疫システムに影響を与える可能性が示唆されている[5,155]。さらに、代謝されない葉酸が高齢者の認知障害に関連している可能性があるという仮説を立てた研究者らもいる[156]。これらの潜在的な健康への悪影響は十分に理解されておらず、さらなる研究が必要である[1,9]。
研究では、小児、青年、成人の血液[1,5,157,158]、母乳[159]、新生児の臍帯血で未代謝の葉酸が検出されている[160,161]。少数の研究では、葉酸300 μgまたは400 μg(葉酸含有サプリメントや朝食用シリアルなどの強化食品では一般的な用量)を単回投与すると、血清中に代謝されない葉酸が検出されたが、100 μgまたは200 μgの用量では検出されなかったと示唆されている[162,163]。さらに、総摂取量を同一とした場合、1回摂取量を増やし摂取回数を少なくしたときと比較して、少量の葉酸を高頻度に摂取したときのほうが未代謝葉酸の血中濃度が高くなり、摂取回数の交互作用が生じると考えられる[164]。
葉酸塩とビタミンB12の代謝的相互作用に基づき、FNBは、ダイエタリーサプリメントや強化食品に含まれる合成型の葉酸塩のULを設定した(表3)[2]。FNBは、食品由来の葉酸塩の高摂取が悪影響を及ぼすという報告がないことから、食品由来の葉酸塩のULを設定しなかった[2]。したがって、RDAとは異なり、ULはmcg単位であり、μg DFEではない。葉酸については、0.6μg葉酸=1μgDFEなので、1,000μgは1,667μDFEに相当する[11,164]。ULは、医師の監督下で高用量の葉酸補給を受けている人には適用されない[2]。
年齢 | 男性 | 女性 | 妊娠 | 乳婦 |
---|---|---|---|---|
生後0~6カ月 | 設定不可* | 設定不可* | ||
生後7~12カ月 | 設定不可* | 設定不可* | ||
1~3歳 | 300 µg | 300 µg | ||
4~8歳 | 400 µg | 400 µg | ||
9~13 歳 | 600 µg | 600 µg | ||
14~18歳 | 800 µg | 800 µg | 800 µg | 800 µg |
19歳以上 | 1,000 µg | 1,000 µg | 1,000 µg | 1,000 µg |
※乳幼児の葉酸塩供給源は母乳、粉ミルク、食事のみとしている。
医薬品との相互作用
葉酸塩サプリメントは医薬品と相互作用を起こす可能性がある。以下に例を記載する。定期的にこれらの医薬品を服用している人は、葉酸塩摂取について今かかっている医療機関※と話し合う必要がある。
メトトレキサート
がんや自己免疫疾患の治療に用いられるメトトレキサート(Rheumatrex、Trexall)は、葉酸拮抗薬である。がん治療でメトトレキサートが投与されている患者は、葉酸塩サプリメントがメトトレキサートの抗がん作用を妨害する可能性があるため、葉酸塩サプリメントを摂取する前に腫瘍医に相談する必要がある[166]。しかし、葉酸塩サプリメントは、関節リウマチや乾癬の治療で服用する低用量メトトレキサートの消化器系への副作用を軽減する可能性がある[167,168]。
抗てんかん薬
フェニトイン(Dilantin)、カルバマゼピン(Carbatrol、Tegretol、Equetr、Epitol)およびバルプロ酸塩(Depacon)のような抗てんかん薬は、てんかん、精神疾患および他の疾患の治療に用いられる。これらの医薬品は血清葉酸塩値を低下させる可能性がある[169]。さらに、葉酸塩サプリメントはこれらの薬の血清レベルを低下させるかもしれないため、抗てんかん薬を服用している患者は、葉酸塩サプリメントを摂取する前に今かかっている医療機関※に確認する必要がある[166]。
スルファサラジン
スルファサラジン(アズルフィジン)は、主に潰瘍性大腸炎の治療に使用される。葉酸塩の腸管吸収を阻害し、葉酸の欠乏を引き起こす可能性がある[170]。スルファサラジンを服用している患者は、食事由来の葉酸塩摂取量を増やすべきか、葉酸塩サプリメントを摂取すべきか、あるいはその両方を行うべきか、今かかっている医療機関※に確認する必要がある[166]。
葉酸塩と健康的な食生活
連邦政府の「2020–2025 Dietary Guidelines for Americans(2020-2025年版 米国の食事指針)」では、「食品は健康に役立つさまざまな栄養素やその他の成分を提供するため、栄養ニーズは主に食品を通して満たす必要がある。…場合によって、強化食品やダイエタリーサプリメントは、他の方法では1つまたは複数の栄養素の必要量を満たすことができない場合(例えば、妊娠などの特定のライフステージ)に有用である。」と記されている。健康的な食生活の構築についての詳細は、「Dietary Guidelines for Americans(米国の食事指針)」[英語サイト]と米国農務省の「MyPlate(私の食事)」[英語サイト]をご覧ください。
「Dietary Guidelines for Americans(米国の食事指針)」では、健康的な食生活を以下のように説明している。
- さまざまな野菜、果物、穀物(少なくとも半分が全粒粉)、無脂肪および低脂肪の牛乳、ヨーグルト、チーズ、油脂を含む。
- さまざまな果物と野菜はすぐれた葉酸塩供給源である。アメリカではパン、シリアル、小麦粉、コーンミール、パスタ、米、および他の穀物製品に葉酸が強化されている。
- 赤肉、鶏肉、卵、海産物、インゲン豆・エンドウ豆・レンズ豆、ナッツ・種子、大豆製品など、さまざまなタンパク質食品を含む。
- 牛レバーには多量の葉酸塩が含まれている。エンドウ豆、インゲン豆、ナッツ類および卵にも葉酸塩が含まれている。
- 糖分、飽和脂肪、ナトリウムを多く含む食品や飲料を制限する。
- アルコール飲料を制限する。
- 1日に必要なカロリーの範囲内に収まっている。
(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)
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更新日:2025年6月19日
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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