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海外の情報

葉酸・葉酸塩
Folate/Folate acid

写真に掲載している食材の成分表一覧
位置 食品 100gあたりの
含有量(μg)
A 豆類・ひよこ豆・全粒・乾(ささげ・全粒・乾) 350(300)
B 嗜好飲料類・抹茶 1200
C 豆類・だいず・全粒・国産・黄大豆・乾 260
D 藻類・あまのり・焼きのり 1900
E 魚介類・うに・生うに 360
F 藻類・あまのり・味付きのり 1600
G 肉類・ぶた・肝臓・生 810
H 野菜類・えだまめ・冷凍 310
I 果実類・ドライマンゴー 260
J 嗜好飲料・青汁・ケール 820

[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版最終アクセス確認日:2024年12月

ここでは葉酸・葉酸塩(Folate)の概要を読者にわかりやすく解説しています。詳細については、「医療者向けファクトシート:葉酸・葉酸塩」をご覧ください。

葉酸塩とは?その働きは?

葉酸塩は、多くの食品中に天然に存在するビタミンBです。葉酸塩は、DNAと他の遺伝学的物質を合成するために私達の体には必要不可欠です。また、葉酸塩は体内の細胞分裂のためにも必要です。葉酸塩は、葉酸と呼ばれており、強化食品や多くのダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け)に用いられています。

葉酸塩の必要摂取量は?

葉酸塩の必要摂取量は、年齢によって異なります。下表に1日の平均摂取推奨量を、葉酸の食事性葉酸塩当量(dietary folate equivalent:DFE)としてマイクログラム(μg)で示します。

葉酸塩の1日の平均摂取推奨量
ライフステージ 推奨摂取量
生後0〜6カ月 65 μg DFE
7~12カ月の幼児 80 μg DFE
1~3歳の小児 150 μg DFE
4~8歳の小児 200 μg DFE
9~13歳の小児 300 μg DFE
14〜18歳の青年 400 μg DFE
19歳以上の成人 400 μg DFE
妊婦(10代も含む) 600 μg DFE
授乳婦(10代も含む) 500 μg DFE

私達の身体が吸収する葉酸は、食品に天然に含まれる葉酸塩からよりも強化食品やダイエタリーサプリメントの葉酸からの方が多いため、摂取量の単位にはμg DFEが用いられています。推奨量を摂取するには、食品に天然に含まれる葉酸塩と比較した場合、葉酸は実際には少量でよいのです。例えば、葉酸240 μgと葉酸塩400 μgはいずれも400 μg DFEとなります。

妊娠の可能性がある10代の女子を含むすべての女性は、食品から天然の形で摂取する葉酸塩に加えて、サプリメントや栄養強化食品、あるいはそれらを併用して、毎日400μgの葉酸を摂取することが推奨されます。

葉酸塩はどんな食品から摂取できますか?

葉酸塩は多くの食品中に天然に存在し、葉酸は一部の食品に添加されています。以下のようなさまざまな種類の食品を食べることで、推奨量を摂取することができます。

葉酸塩は以下の食品に天然に存在します。

  • 牛レバー
  • 野菜(特にアスパラガス、芽キャベツ、そしてほうれん草や、からし菜などの濃い緑の葉物野菜)。
  • 果物と果汁(特にオレンジとオレンジジュース)。
  • ナッツ、インゲン豆、エンドウ豆(ピーナッツ、ササゲ、赤インゲン豆など)。

葉酸は以下の食品に添加されています。

  • 栄養強化のパン、小麦粉、コーンミール、パスタ、米
  • 強化された朝食用シリアル
  • 強化されたコーンマサ粉(コーントルティーヤやタマーレなどに使用される)

葉酸が食品に添加されているかは、その製品の栄養成分表示ラベルを確認してください。

市販されている葉酸塩のダイエタリーサプリメントには、どのようなものがありますか?

葉酸塩は、マルチビタミン剤や妊婦用ビタミン剤として市販されています。また、ビタミンB複合体ダイエタリーサプリメントや葉酸塩のみを含有するサプリメントとして市販されています。ダイエタリーサプリメントでは、葉酸塩は通常、葉酸の形態で含まれていますが、5-MTHF(メチルフォレート)も用いられています。MTHFR C677Tという遺伝子変異を持つ人の中には、葉酸よりも5-MTHFを含むダイエタリーサプリメントの方が体内で利用しやすいため、良いかもしれません。ただし、妊娠の可能性がある人は、 MTHFR C677T遺伝子変異があっても、5-MTHFではなく、葉酸を1日400μgを摂取する必要があります(後述の「神経管欠損症」をご覧ください)。

葉酸塩は足りていますか?

ほとんどの米国人は、食品から十分な葉酸塩を摂っています。しかし、特定の集団では他と比べて十分に葉酸塩を摂取できていない可能性があります:

  • 14~18歳の10代女子およびの19~30歳の女性。非ヒスパニック系黒人女性。
  • アルコール依存症の人。
  • 栄養吸収が低下する疾患(セリアック病や炎症性腸疾患)を有する人々。
  • MTHFR 遺伝子に変異がある人

葉酸塩が不足するとどうなりますか?

米国において葉酸塩欠乏症は稀ですが、一部の人々は充分な葉酸塩を摂取できていません。葉酸塩をほとんど摂取していないと巨大赤芽球性貧血を発症する可能性があり、虚弱、倦怠感、注意力散漫、過敏症、頭痛、動悸、息切れなどを引き起こすことがあります。葉酸塩欠乏症は、舌や口腔内の潰瘍のみならず、肌や髪や指爪の変色も引き起こす可能性があります。

充分な葉酸塩を摂取していない女性は、二分脊椎のような神経管欠損のある赤ちゃんを出産するリスク(危険)があります。また、葉酸塩欠乏症は、早産や低体重児出産の可能性も高めることがあります。

葉酸塩が健康に及ぼす影響にはどのようなものがありますか?

研究者らは、葉酸塩が健康にどのような影響を与えるのかを解明するための研究を行っています。ここでは、研究結果の例をいくつか紹介しています。

神経管欠損症

妊娠前や妊娠初期に葉酸を摂取することで生まれてくる赤ちゃんの 神経管欠損症を予防するのに役立ちます。神経管欠損症は、赤ちゃんの脳(無脳症)や脊椎(二分脊椎症)に起こる深刻な先天性異常です。しかし、妊娠全体の約半数は、計画外の妊娠です。そのため妊娠の可能性がある10代の女性を含むすべての女性は、食品から天然の形で摂取する葉酸塩に加えて、MTHFR C677T遺伝子変異があるとしても、サプリメントや栄養強化食品、あるいはそれらを組み合わせて、毎日400μgの葉酸を摂取することが推奨されています。

1998年以降、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)は食品会社に対して、米国で販売される栄養強化されたパン、小麦粉、コーンミール、パスタ、米およびその他の穀物製品に葉酸を加えるよう要請してきました。2016年には、FDAは食品製造会社に対して、トウモロコシ粉への葉酸の自主的な添加を許可しました。米国人の多くが、このような食品を摂取していることから、1998年以降から葉酸摂取量は増加し、神経管欠損症を持つ赤ちゃんの数が減少しています。

がん

食品に天然の形で含まれる葉酸塩は、種々の形態のがんの発生リスクを低下させるかもしれません。しかし、葉酸塩のサプリメントは、その摂取量と摂取のタイミングによって、効果が異なるかもしれません。がん発症前に推奨量の葉酸を摂取した場合、がんのリスクが低下するかもしれませんが、がん(特に 大腸がん)を発症した後に高容量の葉酸を摂取することは、がんの進行を早めるかもしれません。このため、特に結腸・直腸腺腫(時に、がんに変化することがある)の病歴のある人は、高用量(安全な上限値1000μgを超える用量)の葉酸のサプリメントを摂取する時は、充分に注意する必要があります。葉酸塩と葉酸のダイエタリーサプリメントが、がん発症リスクにどのような役割を果たすのかを解明するためには、さらなる研究が必要です。

うつ病

葉酸塩の血中濃度が低いと、うつ病の発症率が高くなるかもしれません。さらに、葉酸レベルが低い人は、抗うつ剤による治療効果が、葉酸塩のレベルが正常な人と同様には表れにくいかもしれません。

葉酸塩のサプリメント、特にメチル葉酸塩(5-MTHF)を含有するものは、抗うつ剤による治療効果を高めるかもしれません。しかし、葉酸のサプリメントの摂取は、葉酸塩のレベルが正常な人と葉酸塩欠乏症の人との両方に有用であるかどうかは、明らかではありません。うつ病における葉酸塩の役割について、そして葉酸塩のサプリメントを標準的な治療と併用した場合に役に立つかどうか知るために、さらなる研究が必要です。

心疾患と脳卒中

葉酸のサプリメントは、ホモシステインという心血管疾患のリスク上昇につながるアミノ酸の血中レベルを下げるといわれています。しかし、葉酸のサプリメントが、心疾患の発生リスクを直接低下させるわけではありません。一部の研究では、葉酸とその他のビタミンB群の併用が脳卒中の予防に有用であることが示されています。

認知症、認知機能、アルツハイマー病

葉酸のサプリメントにその他のビタミンB群摂取の有無にかかわらず、認知機能の改善、認知症やアルツハイマー病の予防には効果がないようです。しかし、このテーマについては、さらなる研究が必要です。

早産、先天性心疾患およびその他の出生異常

葉酸は、赤ちゃんの早産の発生リスクを低下させ、先天性心疾患のような出生異常を防ぐかもしれません。しかし、葉酸がこれら疾患の発生リスクにどのように影響するのかを解明するためには、さらなる研究が必要です。

自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder :ASD)

ASDは、コミュニケーションや行動に影響を及ぼし、通常は2歳までに始まります。ASDの人は、興味の対象が限定的で、反復的な行動を取り、他の人とのコミュニケーションや交流が困難です。

一部の研究では、妊娠前や妊娠早期に推奨量の葉酸を摂取することによって、子供がASDになるリスクを低減するかもしれないことが示されています。しかし、この研究結果は結論に至っておらず、ASDリスクの低下に葉酸がどのような役割を果たすのかを解明するために、さらなる研究が必要です。

葉酸塩が害を及ぼす可能性はないのですか?

食品や飲料に天然に存在する葉酸塩には害ありません。しかし、医療従事者の推奨する場合を除き、サプリメントや栄養強化食品・飲料で上限を超える量の葉酸を摂取しないほうがよいでしょう。

高用量の葉酸を摂取することによって、ビタミンB12(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け)欠乏症が見落とされるかもしれません。葉酸はビタミンB12欠乏が原因となる貧血を改善する可能性がありますが、ビタミンB12欠乏が引き起こす神経損傷を改善する見込みはありません。ビタミンB12の欠乏症は、脳、脊髄、神経に永久的な損傷を引き起こす可能性があります。高用量の葉酸塩のサプリメントもまた、ビタミンB12欠乏症の症状を悪化させるかもしれません。

高用量の葉酸を摂取することは、一部の人では結腸・直腸がんやその他のがんについてもリスクが高まるかもしれません。高用量摂取によって、身体が使うことのできる量よりも多い葉酸が体内に存在する可能性がありますが、このような葉酸の増加が有害であるかどうかは完全に解明されていません。

サプリメントや栄養強化された食品・飲料から摂取する葉酸の1日あたりの上限値を以下に示します。

葉酸塩の安全な上限値
年齢 上限値
生後0〜6カ月 設定数値なし
7~12カ月の幼児 設定数値なし
1~3歳の小児 300 μg
4~8歳の小児 400 μg
9~13歳の小児 600 μg
14〜18歳の青年 800 μg
19歳以上の成人 1,000 μg

葉酸塩は、医薬品あるいは他のダイエタリーサプリメントと相互作用しますか?

葉酸塩サプリメントは複数の医薬品と相互作用する可能性があります。ここでは、いくつかの例をご紹介します。

  • 葉酸塩サプリメントは、がん治療薬であるメトトレキサート(Rheumatrex, Trexall)と併用すると、メトトレキサートの効果を阻害する可能性があります。
  • 抗てんかん薬または抗発作薬であるフェニトイン(Dilantin)、カルバマゼピン(Carbatro®, Tegretol, Equetro, Epitol)とバルプロ酸(Depacon)を服用すると、葉酸塩の血中濃度が低下する可能性があります。更に、葉酸塩サプリメントを摂取することで、上記の抗てんかん・発作薬の血中濃度が低下する可能性があります。
  • 潰瘍性大腸炎の治療薬であるスルファサラジン(Azulfidine®)を服用すると、体内の葉酸塩を吸収する能力が低下し、葉酸塩欠乏症を生じさせる可能性があります。

あなたが摂取・服用しているすべてのサプリメントおよび医薬品について、今かかっている医療機関※の医師、薬剤師、その他の医療従事者に話してください。利用しているダイエタリーサプリメントが、処方薬または市販薬と相互作用あるいは阻害を起こし得るのか、あるいはそれらの医薬品が、体内での栄養素の吸収、利用、分解の過程において阻害し得るのかについて教えてくれるでしょう。

葉酸塩と健康的な食生活

米国連邦政府の「米国の食事指針(Dietary Guidelines for Americans) [英語サイト]」によれば、「栄養の多くを食品や飲料から摂取するべきである」と指摘されています。食品には、健康によいとされるビタミン、ミネラル、食物繊維やその他の成分が含まれています。場合によって、栄養強化食品やダイエタリーサプリメントは、他の方法では1つまたは複数の栄養素の必要量を満たすことができない場合(例えば、妊娠などの特定のライフステージ)に有用です。健康的な食生活の構築についての詳細は、「米国の食事指針(Dietary Guidelines for Americans)[英語サイト]」と米国農務省の「私の食事(MyPlate)」[英語サイト]をご覧ください。

葉酸塩に関する詳しい情報を得たい時は?

(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)

米国国立衛生研究所(National Institutes of Health :NIH)のダイエタリーサプリメント室(Office of Dietary Supplements :ODS)が作成したこのファクトシートは、情報を提供するものであり、医師のアドバイスの代わりになるものではありません。ダイエタリーサプリメントに関する興味・関心、疑問、利用法、何があなたの健康全般のために最善となり得るかについて尋ねたい場合は、今かかっている医療機関※(医師、管理栄養士、薬剤師などの医療従事者)に相談することをお勧めします。この文書内で特定の製品やサービス、または機関や専門家団体からの推奨について言及した場合でも、その製品、サービス、専門家のアドバイスに対しダイエタリーサプリメント室(ODS)が支持を表明するものではありません。
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更新日:2025年6月19日

監訳:大野智、的場千佳(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
当該事業では、最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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