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インフォグラフィックでわかる統合医療

海外の情報

亜鉛
Zinc

写真に掲載している食材の成分表一覧
位置 食品 100gあたりの
含有量(mg)
A 肉類・うし・ビーフジャーキー 8.8
B 肉類・うし・輸入牛肉・肩ロース・赤肉・生 6.4
C 魚介類・ほたてがい・貝柱・煮干し 6.1
D 嗜好飲料・緑茶類・抹茶 6.3
E 嗜好飲料・ココア・ピュアココア 7
F 魚介類・かに類・たらばがに・水煮缶詰 6.3
G 肉類・ぶた・肝臓・生 6.9
H チーズ類・パルメザン 7.3
I 肉類・ぶた・スモークレバー 8.7
J 魚介類・かき・燻製油缶詰 25.4

[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)

本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。

最新版(英語版オリジナルページ)はこちら
英語版最終アクセス確認日:2024年12月

ここでは亜鉛の概要を読者にわかりやすく解説しています。詳細については、「医療関係者向けファクトシート:亜鉛」をご覧ください。

亜鉛とCOVID-19については「 Dietary Supplements in the Time of COVID-19(COVID-19 に対するダイエタリーサプリメント)」[英語サイト]をご覧ください。

亜鉛とは?その働きは?

亜鉛とは、人が健康を維持するために必要な栄養素です。亜鉛は全身の細胞に存在します。亜鉛は、侵入してきた細菌やウイルスを撃退する免疫系を助けます。また、体内でDNA(細胞内の遺伝物質)やタンパク質を作る際にも亜鉛が使われます。妊娠中、乳幼児期、小児期、思春期には、体が適切に成長し発育するために亜鉛が必要です。また、亜鉛は傷の治癒を助け、味覚を正しく認識するためにも重要です。

亜鉛の必要摂取量は?

亜鉛の必要摂取量は、年齢によって異なります。下表に年齢別の1日の平均推奨摂取量を、ミリグラム(mg)で示します:

亜鉛の1日の平均摂取推奨量
ライフステージ 推奨摂取量
生後0〜6カ月 2 mg
7~12カ月の幼児 3 mg
1~3歳の小児 3 mg
4~8歳の小児 5 mg
9~13歳の小児 8 mg
14~18歳の男性 11 mg
14~18歳の女性 9 mg
成人の男性 11 mg
成人の女性 8 mg
10代の妊婦 12 mg
成人の妊婦 11 mg
10代の授乳婦 13 mg
成人の授乳婦 12 mg

亜鉛はどんな食品から摂取できますか?

多くの食品に亜鉛が含まれています。以下のような、さまざまな種類の食品を食べることで、推奨される量の亜鉛を摂取することができます:

  • 牡蠣は、亜鉛が非常に多く含まれています。
  • 食肉(哺乳動物の肉)、魚、鶏肉、カニやロブスターなどの海産物、強化された朝食用シリアルも亜鉛の優れた供給源です。
  • 豆類、ナッツ類、全粒穀物、卵、乳製品からある程度の亜鉛が摂取できます。

市販されている亜鉛のダイエタリーサプリメントには、どのようなものがありますか?

ほとんどのマルチビタミン/ミネラル(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け)のダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)に亜鉛が含まれています。また、亜鉛は単独で、あるいはカルシウム、マグネシウム、その他の成分との組み合わせでダイエタリーサプリメント(eJIMサイト内:一般向け医療関係者向け)として販売されています。

ダイエタリーサプリメントには、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛など、いくつかの異なる形態の亜鉛が含まれ ています。ある一つの形態が他の形態より優れているかどうかは不明です。

亜鉛は、義歯用接着クリームや、風邪のホメオパシー薬と表示された市販薬などにも含まれています。

亜鉛は足りていますか?

ほとんどの米国人は、普段の食事から十分な亜鉛を摂っています。しかし、特定の集団では、亜鉛を十分に摂取することが困難であるかもしれません。

  • 減量手術などの消化管手術を受けた人、または潰瘍性大腸炎、クローン病などの消化器疾患を有する人。これらの症状・疾患がある場合、体が吸収する亜鉛の量が減少し、尿中に排泄される量が増加します。
  • 亜鉛の供給源である肉を食べないため、ベジタリアンやビーガン(完全菜食主義者:動物性食品を一切摂取しない人)食を実践している人。また、豆類や穀物には、体内への亜鉛の吸収を低下させるフィチン酸塩が含まれています。ベジタリアンとビーガンの人は、亜鉛のサプリメントを摂取するとよいかもしれません。
  • 妊娠中や授乳中の人。成長する胎児のために、また母乳を作るためにより多くの亜鉛を必要とします。
  • 母乳で育てられている月齢の高い乳児。母乳には、生後6カ月以降の乳児に必要十分な量の亜鉛が含まれていません。月齢の高い乳児には、ピューレにした食肉(哺乳動物の肉)など亜鉛を含む食品を与える必要があります。
  • 鎌状赤血球症の子供。おそらく薬の服用によって亜鉛の濃度が低くなる可能性があります。このような子供には、亜鉛のサプリメントの摂取が有用かもしれません。
  • アルコール使用障害のある人。アルコールは亜鉛の体内吸収量を減らし、尿中に失われる量を増加させます。また、アルコール使用障害の人は、亜鉛を含む栄養素の摂取量が少ない傾向にあります。

亜鉛が不足するとどうなりますか?

亜鉛欠乏症は、乳幼児や子供の下痢、成長の遅れ、食欲不振などを引き起こします。亜鉛欠乏症の乳幼児や子供は、大人になったときに生殖機能に問題が生じるかもしれません。年長児では、亜鉛欠乏症は脱毛や頻繁な感染症を引き起こします。

年齢に関係なく亜鉛欠乏症を発症すると、味覚や嗅覚が失われる可能性があります。高齢者の場合、亜鉛欠乏症は傷の治りが遅くなり、思考力、推理力、記憶力に問題が生じる可能性があります。

低所得国では、妊娠中の亜鉛欠乏症は早産やその他の合併症を引き起こす可能性があります。赤ちゃんは出生時の体重が少なく、死亡のリスク(危険)が高くなるかもしれません。

これらの症状の多くは、亜鉛欠乏症以外の問題の徴候である可能性もあります。これらの徴候がある場合、亜鉛欠乏症の可能性について、今かかっている医療機関※に判断してもらいましょう。

亜鉛が健康に及ぼす影響にはどのようなものがありますか?

亜鉛が健康にどのような影響を与えるのかを解明するための研究が行われています。ここでは、亜鉛を対象とした研究結果の例をいくつか紹介しています。

風邪

亜鉛トローチや亜鉛シロップは、風邪の引き始めに摂取すると、風邪の治りが早くなることを示唆する研究もあります。しかし、これらの製品は、風邪の症状の重症度には影響しないようです。風邪に最適な亜鉛の量や形態、摂取する頻度や時間については、さらに研究が必要です。

子供の肺炎

低所得国を対象としたいくつかの研究では、亜鉛のサプリメントが幼児の肺炎のリスク(危険)を下げることが示されています。亜鉛は回復を早めたり、肺炎による死亡者数を減らしたりすることはないようです。

子供および大人のHIV

HIV患者の多くは、亜鉛のレベルが低いようです。これは、食品から亜鉛を吸収するのが困難であるために起こります。また、下痢をすることが多いため、それによって亜鉛が体内から失われます。亜鉛の補充が下痢やHIVの合併症を減少させるといういくつかの研究もありますが、他の研究ではそのようなことは示されませんでした。亜鉛のサプリメントは、HIV感染者の死亡リスク(危険)を低減させないようです。亜鉛のサプリメントがHIV感染者に有用であるかどうかについては、さらなる研究が必要です。

子供の下痢症

発展途上国の子供は、しばしば下痢で命を落とします。研究から、亜鉛のサプリメントが、亜鉛の欠乏や栄養失調に陥っている子供の下痢の期間を短縮するのに役立つことが示されています。世界保健機関(World Health Organization:WHO)や国際連合国際児童緊急基金(United Nations International Children's Emergency Fund:UNICEF)では、下痢の子供に10~14日間、亜鉛を摂取することを推奨しています(20mg/日、6カ月未満の乳児は10mg/日)。米国のほとんどの子供のように、亜鉛を十分に摂取している子供の下痢に、亜鉛のサプリメントが役立つのかどうかは明らかではありません。

加齢黄斑変性症(age-related macular degeneration:AMD)

AMDは、徐々に視力が失われていく目の疾患です。進行性AMDの発症リスク(危険)が高い高齢者を対象とした大規模な研究では、亜鉛などの成分を含むダイエタリーサプリメントを5年間摂取した人は、摂取しなかった人に比べて進行性AMDの発症リスク(危険)が低いことがわかりました。サプリメントに含まれていた成分は亜鉛80mgとビタミンE、ビタミンC、銅、β-カロテンまたはルテインとゼアキサンチンです。AMDを発症した人や症状が進行中の人は、AREDSやAREDS2というダイエタリーサプリメントの摂取について今かかっている医療機関※に相談することを勧めます。

2型糖尿病

2型糖尿病の人は、亜鉛のレベルが低いことがよくあります。亜鉛のサプリメントは、血糖値やコレステロール値を下げるのに役立つかもしれないということを示した研究結果もあります。しかし、2型糖尿病患者に亜鉛が推奨されうるかどうかを知るには、さらなる研究が必要です。

亜鉛が害を及ぼす可能性はないのですか?

亜鉛は摂り過ぎると害になります。亜鉛を過剰に摂取すると、嘔気、めまい、頭痛、胃のむかつき、嘔吐、食欲不振などの症状があります。長期にわたり亜鉛を過剰摂取すると、免疫力の低下、HDL(善玉)コレステロールレベルの低下、銅レベルの低下などの問題が生じる可能性があります。亜鉛の過剰摂取は、マグネシウムの体内吸収を低下させる可能性があります。

亜鉛を含む義歯クリームを、ラベルに記載されている推奨量を大幅に超えて大量に使用すると、亜鉛の過剰摂取と銅欠乏症につながる可能性があります。これは、腕・脚・足の協調運動障害、しびれ、脱力などの神経学的な問題を引き起こす可能性があります。

亜鉛の1日の上限値は、食品、飲料、サプリメント、医薬品など、すべての供給源からの摂取量を含みます。下の表は、年齢層別の摂取量を示したものです。これらの上限値は、医療上の理由で医師の指導下で亜鉛を摂取している人には該当しません。

亜鉛の安全な上限値
年齢 上限値
生後0〜6カ月 4 mg
7~12カ月の幼児 5 mg
1~3歳の小児 7 mg
4~8歳の小児 12 mg
9~13歳の小児 23 mg
14〜18歳の青年 34 mg
成人 40 mg

亜鉛は、医薬品あるいは他のダイエタリーサプリメントと相互作用しますか?

亜鉛のダイエタリーサプリメントは、服用している薬と相互作用したり、その働きを阻害したりする可能性があります。場合によっては、薬が体内の亜鉛濃度を低下させる可能性があります。以下に、いくつかの例を挙げます。

  • キノロン系抗菌薬質(シプロなど)とテトラサイクリン系抗菌薬(アクロマイシンやスマイシンなど)は、体内で吸収する亜鉛と抗菌薬を減少させる可能性があります。この相互作用を避けるために、亜鉛のサプリメントを摂取する2時間前または4~6時間後に抗菌薬を服用してください。
  • ペニシラミンは、関節リウマチやウィルソン病の治療に使用される薬です。亜鉛のサプリメントは、ペニシラミンが体内に吸収される量を減らす可能性があります。この相互作用を避けるために、亜鉛のサプリメントとペニシラミンとは少なくとも1時間以上間隔を空けて飲んでください。
  • クロルタリドン(商品名Hygroton)やヒドロクロロチアジド(商品名EsidrixとHydroDIURIL)などのチアジド系利尿薬は、尿中に失われる亜鉛の量を増加させます。チアジド系利尿剤を長期間服用すると、体内の亜鉛の量が減少するかもしれません。

あなたが使用しているすべてのダイエタリーサプリメント、処方薬、市販薬について、今かかっている医療機関※の医師、薬剤師およびその他の医療従事者に伝えてください。使用しているダイエタリーサプリメントが、あなたの薬と相互作用し得るかどうかについて教えてくれるでしょう。また、あなたが服用している薬が、体内での他の栄養素の吸収や利用に影響し得るかどうかについても説明してくれるでしょう。

亜鉛と健康的な食生活

米国連邦政府の「米国の食事指針(Dietary Guidelines for Americans)」によると、人は栄養素の大部分を食べ物や飲み物から摂取することが望ましいとされています。食品には、健康によいとされるビタミン、ミネラル、食物繊維やその他の成分が含まれています。場合によって、栄養強化食品やダイエタリーサプリメントは、他の方法では1つまたは複数の栄養素の必要量を満たすことができない場合(例えば、妊娠などの特定のライフステージ)に有用です。健康的な食生活の構築についての詳細は、「米国の食事指針(Dietary Guidelines for Americans)」[英語サイト]と米国農務省の「私の食事(MyPlate)」[英語サイト]をご覧ください。

亜鉛に関する詳しい情報を得たい時は?

(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)

米国国立衛生研究所(National Institutes of Health :NIH)のダイエタリーサプリメント室(Office of Dietary Supplements :ODS)が作成したこのファクトシートは、情報を提供するものであり、医師のアドバイスの代わりになるものではありません。ダイエタリーサプリメントに関する興味・関心、疑問、利用法、何があなたの健康全般のために最善となり得るかについて知りたい場合は、今かかっている医療機関※(医師、管理栄養士、薬剤師などの医療従事者)に相談することをお勧めします。この文書内で特定の製品やサービス、または機関や専門家団体からの推奨について言及した場合でも、その製品、サービス、専門家のアドバイスに対しダイエタリーサプリメント室(ODS)が支持を表明するものではありません。
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更新日:2025年6月19日

監訳:大野智、的場千佳(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日

ご注意:この日本語訳は、専門家などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、当ホームページの「ご意見・ご感想」でご連絡ください。なお、国立衛生研究所[米国]、国立補完統合衛生センター[米国]、国立がん研究所[米国]のオリジナルサイトでは、不定期に改訂がおこなわれています。
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