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ビタミンAとカロテノイド
Vitamin A and Carotenoids

- 写真に掲載している食材の成分表一覧
[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等は米国人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご参照ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版最終アクセス確認日:2024年12月
ここではビタミンAおよびカロテノイドの概要を読者にわかりやすく解説しています。詳細については、「医療者向けファクトシート:ビタミンAおよびカロテノイド」をご覧ください。
ビタミンAおよびカロテノイドとは?その働きは?
ビタミンAは脂溶性ビタミンで、多くの食品に自然に含まれています。ビタミンAは、正常な視力、免疫系、生殖、成長・発達に重要です。また心臓、肺やその他の臓器が適切に機能するのを助けます。カロテノイドは、黄色、オレンジ色、赤色の野菜や果物の色の元となる色素です。体内で一部のカロテノイドをビタミンAに変換することができます。
ビタミンAには2種類の供給源があります。
ビタミンAの必要摂取量は?
ビタミンAの必要摂取量は、年齢や性別によって異なります。下表に既成ビタミンAおよびプロビタミンAカロテノイドの1日の平均摂取推奨量を、レチノール活性当量(retinol activity equivalents:RAE)のマイクログラム(μg)で示します。
ライフステージ | 推奨摂取量 |
---|---|
生後0〜6カ月 | 400 µg RAE |
7~12カ月の幼児 | 500 µg RAE |
1~3歳の小児 | 300 µg RAE |
4~8歳の小児 | 400 µg RAE |
9~13歳の小児 | 600 µg RAE |
14~18歳の男性 | 900 µg RAE |
14~18歳の女性 | 700 µg RAE |
成人の男性 | 900 µg RAE |
成人の女性 | 700 µg RAE |
10代の妊婦 | 750 µg RAE |
成人の妊婦 | 770 µg RAE |
10代の授乳婦 | 1,200 µg RAE |
成人の授乳婦 | 1,300 µg RAE |

ビタミンAはどんな食品から摂取できますか?
ビタミンAは多くの食品に自然に含まれており、牛乳やシリアルなどの食品に添加される場合もあります。以下のようなさまざまな食品を摂取することによって、ビタミンAの推奨量を摂取することができます:
- ニシンやサケなど、一部の魚の種類
- 牛レバーなどの臓器肉(ただしコレステロール含有量が高いので摂取量を制限すること)
- ほうれん草、さつまいも、にんじん、ブロッコリー、冬カボチャなど、緑葉野菜とその他の緑・オレンジ・黄色の野菜。
- カンタロープ(メロン)、マンゴー、アプリコット(アンズ)などの果物
- 牛乳やチーズなどの乳製品
- 強化された朝食用シリアル
- 卵
市販されているビタミンAのダイエタリーサプリメントには、どのようなものがありますか?
ビタミンAは、サプリメントから摂取することもできます。通常は、酢酸レチニルまたはレチニルパルミテート(既成ビタミンA)、β-カロテン(プロビタミンA)または既成ビタミンAとプロビタミンAの両方が含有されています。ほとんどのマルチビタミン・ミネラルサプリメント(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)はビタミンAを含んでいます。ビタミンAだけを含むダイエタリーサプリメントもあります。
ビタミンAは足りていますか?
ビタミンA欠乏症は、ほとんどの人が食事から十分なビタミンAを摂取しているため、米国ではまれです。しかし、ビタミンA欠乏症は、多くの開発途上国で、特に幼児に多く見られます。
さらに、下記の特定の集団に属する人々は、他と比べて十分にビタミンAを摂取できていない可能性があります:
- 早産児
- 発展途上国の乳児、幼児、妊娠中・授乳中の女性
- 嚢胞性線維症の人
- クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病の人
ビタミンAが不足するとどうなりますか?
最も一般的なビタミンA欠乏症の症状は、眼球乾燥症と呼ばれる眼の症状・疾患です。眼球乾燥症は、うす暗いところで物が見えなくなる疾患で、放置しておくと失明につながる可能性があります。
また、ビタミンAが長期的に欠乏すると、呼吸器系疾患(肺炎など)や感染症(麻疹や下痢など)のリスク(危険)が高くなる可能性があります。また、貧血(赤血球が十分な酸素を供給できない状態)の原因になる可能性もあります。重度の場合、ビタミンAが足りないと、死亡する可能性が高くなります。

ビタミンAが健康に及ぼす影響にはどのようなものがありますか?
ビタミンAが健康にどのような影響を与えるのかを解明するための研究が行われています。ここでは、研究で明らかになったいくつかの例をご紹介します。
がん
ビタミンAやβ-カロテンを含む食品を多く食べている人は、ある種のがんのリスクが低いかもしれません。しかし、ビタミンAやβ-カロテのサプリメントが、がんを予防したり、がんで死亡する確率を下げたりするのに役立つという研究結果は示されていません。実際、いくつかの研究では、喫煙者または喫煙していた人では、高用量のβ-カロテンのサプリメントを摂取すると、肺がんや死亡のリスクを高める可能性あることを発見した研究もあります。
加齢黄斑変性症(age-related macular degeneration:AMD)
AMDとは、加齢に伴い中心視力が低下することをいいます。高齢者の視力低下の原因として最も多いものです。研究では、ビタミンC、E、亜鉛、銅を含むサプリメントとβ-カロテンの併用または非併用で、進行性AMDの発症リスクが高いAMD患者の視力低下の速度を遅らせることができるという研究結果が示されています。同じサプリメントで、β-カロテンの代わりにルテインとゼアキサンチンを配合したものは、進行性AMDへの進行リスクをさらに低減し、β-カロテンの高用量摂取による肺がんリスクの上昇を解消しています。
麻疹
ビタミンA欠乏症が多い発展途上国では、麻疹にかかった子供は症状が重くなりやすく、麻疹で死亡するかもしれません。このような子供たちは、ビタミンAを高用量含むサプリメントを摂取することで、新たな麻疹の発症を予防し、麻疹で死亡するリスクを下げることができるかもしれません。
ビタミンAが害を及ぼす可能性はないのですか?
ある種のビタミンAを高用量摂取すると有害になります。
既成ビタミンA(通常サプリメントまたは薬剤由来)を過剰に摂取すると、重度の頭痛、かすみ目、悪心、めまい、筋肉痛、協調性の問題などを引き起こす可能性があります。重度の場合、既成ビタミンAを過剰に摂取すると、昏睡状態に陥り死に至る可能性さえあります。
妊娠中に既成ビタミンAを過剰に摂取すると、赤ちゃんの目、頭蓋骨、肺、心臓の異常など、先天異常の原因となる可能性があります。妊娠中または妊娠しているかもしれない女性、授乳中の女性は、既成ビタミンAの高用量サプリメントを摂取しないほうがよいでしょう。
β-カロテンを多く摂取しても、既成ビタミンAのような問題は生じません。β-カロテンを高用量に摂取すると、皮膚が黄橙色になることがありますが、この状態は無害で、食べる量を減らすと治まります。しかし、複数の研究により、喫煙者、元喫煙者、アスベストにさらされた人が高用量のβ-カロテンのサプリメントを摂取すると、肺がんや死亡のリスクが高くなることが示されています。
ビタミンAの1日の上限値は、食品、飲料、サプリメントなど、すべての供給源からの摂取量を含み、以下の通りです。この値は、医療上の理由で医師の指導下でビタミンAを摂取している人には該当しません。β-カロテンや他のプロビタミンAの形態には上限がありません。
年齢 | 上限値 |
---|---|
生後0〜12カ月 | 600 µg |
1~3歳の小児 | 600 µg |
4~8歳の小児 | 900 µg |
9~13歳の小児 | 1,700 µg |
14〜18歳の青年 | 2,800 µg |
19歳以上の成人 | 3,000 µg |
ビタミンAは、医薬品あるいは他のダイエタリーサプリメントと相互作用しますか?
ビタミンAサプリメントは、服用している薬と相互作用したり、その働きを阻害したりする可能性があります。以下に、いくつかの例を挙げます。
- 肥満治療薬のオルリスタット(Alli, Xenical)は、人によってはビタミンAの吸収を減少させる可能性があり、血中濃度が低下する可能性があります。
- 乾癬の治療に使用されるアシトレチン(Soriatane)およびT細胞リンパ腫の皮膚病変の治療に使用されるベキサロテン(Targretin)はビタミンAから作られています。これらの医薬品とビタミンAのサプリメントを一緒に服用すると、血中のビタミンAの濃度が危険なほど高くなる可能性があります。
あなたが使用しているすべてのダイエタリーサプリメントおよび医薬品について、今かかっている医療機関※、医師、薬剤師、その他の医療関係者に話してください。摂取しているダイエタリーサプリメントが、処方薬または市販薬と相互作用あるいは阻害を起こし得るのか、あるいはそれらの医薬品が、体内での栄養素の吸収、利用、分解の過程において阻害し得るのかについて教えてくれるでしょう。
ビタミンAと健康的な食生活
米国連邦政府の「米国の食事指針(Dietary Guidelines for Americans)」によると、人は栄養素の大部分を食べ物や飲み物から摂取することが望ましいとされています。食品には、健康によいとされるビタミン、ミネラル、食物繊維やその他の成分が含まれています。場合によって、栄養強化食品やダイエタリーサプリメントは、他の方法では1つまたは複数の栄養素の必要量を満たすことができない場合(例えば、妊娠などの特定のライフステージ)に有用です。健康的な食生活の構築についての詳細は、「米国の食事指針(Dietary Guidelines for Americans)」[英語サイト]と米国農務省の「私の食事(MyPlate)[英語サイト]」をご覧ください。
ビタミンAに関する詳しい情報を得たい時は?
- ビタミンAに関する一般的な情報:
- 医療者関係者向け:ビタミンA
- Vitamin A(ビタミンA)[英語サイト], MedlinePlus®
- ビタミンA含有食品についての詳細な情報:
- 米国農務省(The U.S. Department of Agriculture:USDA)のFoodData Central[英語サイト]
- Nutrient List for vitamin A (listed by food or by vitamin A content)(特定の食品のビタミンA含有量(食品別[英語サイト]/ビタミンA含有量順[英語サイト]))(USDA)
- Nutrient List for beta-carotene (listed by food or by beta-carotene content)(特定の食品のβ‐カロテン含有量(食品別[英語サイト]/β‐カロテン含有量順[英語サイト]))(USDA)
- ダイエタリーサプリメント選択に関するアドバイス:
- 健康的な食事パターンに関する情報:
(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)
更新日:2025年6月19日
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2020年12月30日
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